第23話 索敵
その日の午後。
ユーリ達は補給の為に、ストライカーのある場所まで移動を試みていた。
今はバギーを停車させ、ユーリがドローンを操作し、周囲の索敵を行っている所だった。
ユーリは手元のモニターを見ながら、ドローンを移動させていく。
するとモニターの端に、移動する馬車の姿を捉えた。
「コリン班長、馬車が一台、こちらに向かっています」
「なんだと……」
コリンがユーリの横に来てモニターを覗き込む。
「これです……馬は二頭……街でよく見た乗合馬車と同じタイプですね」
「何が乗っているか知りたいな……ドローンを近づけるか、ズームするかできるか?」
「はい。もう少し近づけて見ます」
ユーリが手元の十字スティックを操作すると、画面の中の映像が背後に流れて行く。
「どの位の距離だ?」
「此処から約二キロといった感じです……GPSが無いので感覚ですが」
「構わん……二キロか……十分から十五分……馬車だからもう少し早いか」
「あ、荷台から誰かが顔を出しました……女性ですね……あれ、こっちを見てる」
「なにっ?」
「馬車が停止しました……荷台から魔道師っぽい女性が二人降りてきます……さっきの女性がこっちを指さしています……気づかれてますっ!!」
「ギリギリまで情報を取得したい……ユーリ、ヤバい状況になったらすぐに回収だ」
「イエス、マム」
ユーリとコリンは無言でモニターを見つめる。
モニターの中では、魔導士の女性が杖を掲げて、何かを唱えている姿が映っている。
と、掲げた杖の先端が発光し、オレンジ色の火の玉が迫ってくるのが見えた。
「火球かっ!? ユーリ、ドローンを下げろっ!!」
「イエス、マム」
モニター内に映る馬車の姿が見る見るうちに小さくなる。
「……あれが魔法か……厄介だな……」
「概算ですけど、ドローンと馬車の距離が約百メートル……火球を撃ってきたという事は、その位の距離は射程範囲という事ですかね?」
「……あまりやりたくないが……相手の戦力を推し量る必要があるな……」
コリンが呟くと、ヴァスケスが不敵な笑みを浮かべる。
「一当てしてみりゃ、わかんだろ? あいつらの実力が」
「火球を撃ってくるのも厄介だが、最初にドローンに気付いた女も厄介だ……相当に耳と目が良いんだろう」
話をしていると、ドローンが近づいてくる。
ユーリが回収作業を始める。
「ドローンの飛行方向を把握されたと考えるべきだ……此処から移動する。急げ」
「「イエス、マム」」
ヴァスケスとアグネスが素早くバギーの方向へ走り出す。
「前回の奴らとは違うな……」
コリンが小さく呟いた。
◆
少しだけ時間が戻る。
草原の中を進む馬車の中には『魔道の頂』とエリカが乗車していた。
エリカは御者の後ろに隠れるようにして周囲を警戒していた。
その時、不意に耳障りな音に気付く。
「(何の音だろう……こんな音、聞いた事が無い……しいて似た音を挙げれば、羽虫が飛んでいるような音かな)」
エリカの警戒心がギュッと上がる。
神経を集中して音のする方向を見つける。
「(……地面じゃない? 空中……何かが飛んでいるのかな?)」
エリカは空を見つめる。
すると空に小さな黒い点が浮かんでいるのに気付く。
「(あれが音の発生源……確証はないけど……)」
エリカは振り返り、クリスに報告する。
「クリスさん、前方の上空に魔道具らしきものが浮かんでいますっ!!」
「すぐに馬車を止めなさいっ!!」
エリカは御者に馬車を止めるように伝える。
馬車が停車すると同時に、クリスともう一人の魔導士が馬車から飛び降りる。
「エリカ、どこっ!?」
「あれです……あの小さな黒い点のようなものです」
エリカは見つけた魔道具らしきものを指さす。
「空中にいるから距離感が分からないけど……アデレード、あれを狙える?」
「はい。やってみます」
アデレードは杖を取り出すと、それを掲げる。
口の中でファイヤーボールの短縮詠唱を唱える。
杖の先端に小さな光る魔方陣が現れる。
「ファイヤーボールッ!!」
アデレードが魔法を放つと、火球が一直線に浮遊する魔道具に向けて飛んでいく。
「的が小さい……少し逸れた」
次の瞬間、浮遊する魔道具は高速で後退していくのが見えた。
「逃げた……やはり、意志を感じるわね」
クリスは魔道具が後退していく方向を見定める。
「あの魔道具を追うわよ……その先に彼女たちが居る筈……気を抜かないで、戦闘は始まっているのよ」
「「はい」」
クリス達は魔道具が飛んでいった方向をじっと見つめるのだった。




