閑話 双子
「ねえ、セリカ。いつまで此処にいるのよ?」
砂色の服に白と黒の斑点が点在する、奇妙な服を着た女性が、同じ格好をしている女性に話しかける。
「カレン、別に此処に居たい訳じゃないわよ……でも、何処に行けばいいのよ? 通信も通じないのに」
カレンと呼ばれた女性が両手を広げる。
「やっぱり、バッテリーを使い切ったのがまずかったな……こんなにも長い間、本隊と連絡がつかないなんて思わなかったし」
「そうね……幸い、食料はあの子達が調達してくれるから助かってるけど……アレ以外は」
「やめろ……思い出すじゃねえか……うぷっ」
カレンは思わず口を押える。
「あの子達って、本当に野生児よね……こんな状況でも嬉々としてるし」
セリカはそう言って天を仰ぐ。
周囲には四十メートルはあろうかという大木が無数に生えている。
その森の中にぽっかりと円形に空いた空間に、彼女たちはいる。
上空を塞ぐ木の枝も無いため、此処には陽光が差し込み、空間の中央にある湧き水の池の水面がキラキラと光っている。
「水場を見つけられたのは幸いだったが……この後はどうするよ?」
「まずはこの森から脱出したいけど……どっちの方向に行けばいいか……」
「せめてドローンでもありゃあな……あたし達にあるのはバギー一台だけだものな」
カレンはそう言いながら、細かな枯れ葉や枯れ枝を集める。
其処へファイヤースティックで火花を散らす。
細かな枯れ葉に無数のオレンジ色の発光が現れ、白い煙と炎が出現する。
「ふー、ふー」
その炎を消さないように息を吹きかけ、炎を大きくしていく。
「よーし、うまくいったぜ」
カレンは炎に細い枝をくべながら、焚火を始める。
「手慣れたもんね……まあ、三週間もこんな事してれば上手になるわよね」
セリカはアルミ製の大きなカップに水を注ぐ。
焚火の上には金属製の三脚がセットされていて、その上にカップをのせる。
「そろそろコーヒーが恋しいわ」
「残念……出がらしのティーバッグしかない」
二人は目を合わせて苦笑する。
するとそこに、同じ顔をした二人の少女が現れる。
「お茶だ」
「お茶だ、飲む」
彼女たちも、セリカたちと同じ服を着ているが、服が大きいのか、服に着られている感が否めない。
「リューイ、ルーイ。戻ったのね」
「うん」
「うん。ウサギ取れた」
そう言ってリューイが背中に背負っていたリュックから、角の生えたウサギを取り出す。
「内臓抜く」
「抜く」
そう言って二人は腰に下げているサバイバルナイフを引き抜く。
「おいおい、ここでするなよ。向こうでやれ。穴を掘ってからだぞ?」
「わかった」
「わかった」
リューイとルーイはバタバタと森の方へ走って行く。
「じゃあ、あたしも手伝ってくる……あいつ等だけだとモツ料理になりそうだからな」
「ありがと。こっちは炊事の支度をしておくわ」
セリカはそう言ってカレンを送り出す。
焚火がパチパチと音を立てている。
セリカは追加の薪を放り込むと、鍋代わりにしている大きなアルミカップを引っ張り出す。
「今日もウサギ肉の煮込みかな……」
そう言ってセリカは傍に積み上げられたイモを見る。
このイモも双子が掘り出してきたものだ。
セリカは小さくため息を吐くと、腰に下げたナイフを取り出し、イモの皮むきを始める。
「……早く、本隊に合流したいな……」
セリカのささやかな願いは、まだ叶わない。




