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第17話 新たな敵

 次の日。


 この日は朝からユーリとアグネスはバギーに乗ってトラバスタ辺境伯領の街の周囲を偵察していた。


 ユーリはドローンを飛ばし、アグネスは通信機にかじりついている。



「ねえアグネス……なんか街の雰囲気がおかしい気がする……」


「そんなあやふやに言われても……具体的に言ってくれないと」



 アグネスは返事をしながら、通信機のダイヤルを回して周波数を変える。



「うーん……うまく言えないけど……ギスギスしている感じ? いや、違うな……」



 ユーリの要領を得ない答えにアグネスが苦笑する。



「なら、もう少し街に近づいてみるか? ユーリの知り合いに会えるかもしれないだろ」


「そうなんだけど……嫌な予感もするっていうか……」


「何だよ、はっきりしないな……じゃあ、逃げ出すのを前提で、ギリギリまで行ってみようぜ」


「……そうだね……そうしようか」



 ユーリとアグネスはバギーに乗り込む。


 エンジンをかけて、城壁がはっきりと見える位置まで移動する。


 時々、道を歩いていた冒険者がユーリ達を見つけると、慌てた様に城壁の方へ駆けだしていくことが何度かあった。



「やっぱり、少しおかしいよ……こんな反応、初めてだよ?」



 ユーリが首を捻る。


 アグネスも口に拳を当てて考え込む。


 二人が考え込んでいると、城壁の方からいつもバギーを見張ってくれる子供たちが、ワラワラとこちらに向かって走ってくるのが見えた。



「あれ? ギルドの近くにいるチビ達だ……どうしたのかな?」



 ユーリの言葉にアグネスも視線を向ける。


 やがてチビ達の声が聞こえる距離になった。



『ユーリッ、ユーリッ、大変だよっ!!』



 一番年上の子がユーリたちの元に駆け込んできた。



『どうしたの、そんなに慌てて』


『空飛ぶ魔道具が見えたから、ユーリが傍に来ていると思ったんだ……見つかって良かった』


『それは……凄いけど……何があったの?』



『そ、そうだ……これだよ、ユーリ』



 そう言ってチビ達の一人が一枚の紙を差し出した。



『うん……えっ……何これっ!?』



 ユーリが思わず大きな声を上げる。



『今朝からギルドに貼りだされてたんだ……これってユーリ達だよね?』



 その紙にはユーリ達と思われる、四人の似顔絵が描いてあった。



「酷い似顔絵だな……全然似てないじゃん」



 アグネスが覗き込んできて文句を言う。



『これが今朝から?』


『うん。それで一部の冒険者たちが騒ぎ始めてる』



 ユーリはアグネスの方に振り向くとチビ達との会話を簡潔に話す。



「ギルドに指名手配された……一人につき金貨二十枚だって……しかも生死を問わないって……」


「マジか……」


「マジ」



 そう答えて、チビ達が心配そうに自分を見ている事に気付く。



『ユーリ、何か悪いことしたの?』


『してないよ……でも、アンタ達もあたしと一緒にいる所を見られるとまずいわね』



 ユーリはポケットから硬貨の入ったきんちゃく袋を取り出す。


 そして無造作に硬貨を掴むと、一番年上の子にそれを手渡す。



『これは御礼……教えてくれてありがとうね……でも、すぐに戻りなさい』


『う、うん。でもユーリ達は大丈夫なの?』


『大丈夫……ほら、早く戻って……何か聞かれたら森の方に行ったって言いなさい』


『……わかった……ユーリも気を付けてね』



 チビ達はそう言って、城壁の方へ駆けだして行った。


 その後姿を見送ってからユーリがアグネスに話しかける。



「アグネス、戻ろう……コリン班長に報告しないと」


「オッケー」



 二人はバギーに飛び乗ると、その場で方向転換をして宿営地の方向へ走り出すのだった。


 ◆


「なんだよこれ。ユーリなんてそっくりじゃねえか」


「ひどっ、全然似てませんよぉ。それを言うなら先輩の方がそっくりですよ、この目つきの悪さなんてよく特徴をとらえてますよっ!!」


「何だとっ!!」



「やめろっ、馬鹿どもっ!!」



 ユーリ達が持ち帰った手配書の似顔絵でユーリとヴァスケスが言い合っていると、コリンの雷が落ちた。



「「イエス、マム」」



 二人が黙るのを見てから、コリンがユーリに尋ねる。



「これが今朝から出回っていると?」


「はい。住人の子供たちが教えてくれました。ギルドの中には既に行動を起こそうとしている者もいそうです」


「状況が悪化しているな……冒険者ギルドも敵に回ったか」



「敵に回ったというか……領主の要請を黙認したって感じですかね?」


「同じ事だろ。ギルドの連中にとったら。オレ達は魔獣や盗賊と変わらねえって事だ」


「……そうは思いたくないんですけど……」



「ふん、お前がお人好し過ぎるんだよ……やっぱり人命尊重なんて言わずにぶっ飛ばしてやれば良かったんだ」


「ヴァスケス……言葉を控えろ」



 コリンがそう言ってヴァスケスを諫める。



「しかし、騎士団以外に冒険者たちにも警戒しなければならないとはな……」


「「……」」



 ユーリとヴァスケスは黙り込んでコリンを見つめる。


 その時、見張りをしていたアグネスが声を上げた。



「冒険者とみられる集団が近づいてきます……距離一キロ」



 その声にコリンが反応する。



「一キロ……約五分か……時間が無いな」



 コリンは二人の顔を順に見てから、命令を下す。



「冒険者たちの目的は分からんが、手配書が出ている以上、我々が目標だろう……ゆえに、冒険者たちを敵と認識し、これの排除を行う」



 その言葉にヴァスケスは嗤い、ユーリは表情を歪める。



「捕虜にとる必要は無いが、情報が欲しいのも事実だ……しかし、我々の生存を最優先事項とする。以上だ」



「「「イエス、マム」」」



 ユーリ達は、傍らに置いてあった銃を持つ。



「ヴァスケスとユーリは右翼から、わたしとアグネスは左翼から接近するぞ」



「「「イエス、マム」」」



 そして全員が駆け出すのに数秒もかからなかった。



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