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第二十二話 冒険者登録

「……ちゃん……イオリちゃん! 起きて下さい!」


 レムに起こされるイオリ。

 寝ぼけ眼を擦りながら、祖父の形見の丸眼鏡を掛けたレムの顔をボ~として見つめる。


「へ!? 何でレムが……。 ああ、そうか! おいら、昨日からヴェデルでお世話になってるんす!」


「朝ご飯出来ましたよ。 一階の居間に降りて来て下さい」


「わかったす!」


 イオリは服を着替えて、一階に降りた。

 すると、香ばしい焼きたてのパンの匂いと作りたてのスープの匂いが鼻孔をくすぐる。


「うわ~、美味しそうな匂いっす!」


「イオリちゃん、席に付いたら一緒に食べましょう」


「わかったっす」


 イオリはレムと対面に座り、朝食を摂る。

 レムの作ってくれた食事はシャーランの作ってくれたものとはまた違った美味しさがあった。


「イオリちゃん、今日はどうするんですか?」


 イオリの今日一日の予定を聞いてくるレム。


「今日は職人ギルドに行って、職登録済ませてから冒険者登録しに冒険者ギルドに行くっす。 でないと自分で調達したい素材を取りに行けないっすから」


 職登録とはその街で職人として働く為の登録で、しかも毎月銀貨一枚の税を収めなければならない。

 その代わり、職人に必要な素材などが割引で安く手に入る。


 ちなみに貨幣価値は、


   一銭貨    ⇒ 1円

   一大銭貨   ⇒ 10円

   一銅貨    ⇒ 100円

   一大銅貨   ⇒ 1000(千)円

   一銀貨    ⇒ 10000(1万)円

   一大銀貨   ⇒ 100000(10万)円

   一金貨    ⇒ 1000000(100万)円

   一大金貨   ⇒ 10000000(1千万)円


 である。 尚、此れ以上のお金は役所が白金版(縦十cm,横五cm、暑さ1mm)の手形を発行する。


「じゃあ、私も付いて行っていいですか?」


「かまわないっすよ。 ギルドの場所がわからないんで案内してもらえると助かるっす」


「任せて下さい!」


 レムはイオリに向かって胸を張る。

 服の上からでもくっきりわかる大きな胸が強調される。


「……//」


 イオリは少し前屈(まえかが)みになる。 レムの胸を見ていて生理現象が起きてしまったのだ。

 イオリと言えどやはり男の子。 その(さが)からは逃れられないのだった。




――ケサラパサラの街 職人ギルド支部――



 子供の頃から来ていた街とはいえ、実際の活動範囲はそう広くない。

 その為、殆ど街の地理には詳しくない。

 なので街の案内も兼ねてレムに職人ギルド支部まで案内して貰う。


「うわ~……大きい建物っすね~」


 職人ギルドは五階建ての白い漆喰が塗られた大きな建物だ。

 この街で働く以上、誰もが必ず何らかの形でお世話になる組織だ。


 レムが建物の中を案内してくれる。


「入り口にあるあそこが受付で職人やお店のオーナーと言った人達の要件を受け付ける部署なんです。 其処から目的にあった部署に振り分けられて要件を済ませるんですよ」


「ふーん」


「取り敢えず受付に行って要件を伝えておきましょう」


 二人は受付の職員に自分達の要件を伝える。


「職登録ですか? それならこの木札の番号を持って、二階の職人・職登録窓口にお並び下さい」


 木札の番号は七十一番。

 二人は言われた通り二階に(おもむ)きフロアに設置されている窓口前の長椅子に腰掛けて順番を待つ。


「七十一番の方! お越しください!」


 窓口で自分達の番号が呼ばれる。

 直ぐに長椅子から立ち上がり、呼ばれた窓口に向かう。


「今日はどんな御用でしょうか?」


「職登録をお願いするっす」


「ではこの用紙に必要事項を記入して下さい。 代筆は必要ですか?」


「いや、自分で書けるっす」


 イオリはわからない箇所は職員に質問して記入していく。

 必要事項の記入が終わり、記入用紙を職員に渡す。


「内容を確認させていただきます。 ……!? こっ、これは!?」


 職員は目を皿のようにしてイオリが記入した用紙の内容を確認する。


「……申し訳ありませんが、タグを確認させて頂いても宜しいでしょうか?」


「? いいっすよ」


 イオリは首に掛けてある金色のタグを手渡す。


「しょ、少々、お待ちください!」


 職員は慌ててイオリが書いた記入用紙とイオリのタグを持って、奥に引っ込んだ。

 そしてしばらくして、職員が戻って来て、


「申し訳ありませんが、ギルド支部長室に起こし願えませんか?」


 イオリは首を傾げる。

 記入した用紙の内容に間違えは無かったはずだと、


「何か問題でもあたんですか?」


 レムが職員に尋ねる。


「いいえ、ございません。 ただ、ギルド支部長が直接お会いしてお話ししたいと申しております。 なにせイオリ様はわが街で唯一の上級鍛冶師、魔導機工師マジック・マシン・クリエイターですから」


 イオリは少し思案して、


「ん~、偉い人の顔を立てて、一応会っておいた方がいいっすね。 連れも同伴で構わないっすか?」


「構わないと思います。 では、ギルド支部長室までご案内致します」


 イオリトレムは最上階五階にあるギルド支部長室まで職員に案内された。

 職員が扉をノックし要件を伝える。


「ハボア支部長、イオリ様とお連れの方をお連れしました」


「通せ」


 職員は中にいる支部長の許可を得て、扉を開けてイオリとレムの二人を支部長室の中に通す。

 支部長室には年若いドワーフの青年が金の刺繍が施されたローブを纏い、イオリ達を待ち受けていた。


「私はこのケサラパサラの街の職人ギルド支部長のハボアだ。 よろしく、イオリ君」


「イオリっす。 よろしくっす、ハボアさん」


 ハボアはレムネアに向き直り、挨拶を交わす。


「久しぶりだな、レムネリア君。 シュルツさんの葬儀以来か?」


「ええ、そうですね。 お久しぶりです、ハボア様」


「昨日の話しは私の耳にも入っている。 危なかったな。 其処のイオリ君に助けられたんだって? イオリ君は武術の腕も立つそうだね?」


「おいら自身はどの程度の強さかわからないっすけど……師匠のシャーランさんに『自分と互角以上に遣り合える』って言われたっす」


「あのお転婆鬼姫にか!? そりゃあ、すごい!」


「お転婆鬼姫? シャーランさんがっすか?」


「ああ、昔からやたら腕が立つ奴だったが……奉公に出て其処の主の手ほどきを受けたら更に腕を上げたんだ。 今ではこの街の強者ランクトップスリーに入るぞ」


 ちなみに一番はシャーランの祖父ホッポ、二番がシャーラン、三番がイオリ達の眼の前に居るハボアだ。


「ほえー! 知らなかったっす!?」


「処でイオリ君はレムネリア君のヴェデル店で職人として働くそうだが――将来的にはこの街を離れる予定はあるかい?」


「いや、無いっすよ。 この街を拠点に活動するつもりっすから。 ただ、冒険者登録もして素材集めをするから偶に留守にするっすけど……それがなにか?」


「そうか。 いや、シュルツさんが亡くなられて腕の良い職人がこの街から居なくなったんで困ってた処なんだ。 君のような魔導機工師に居着いてもらえたらこの街の職人ギルドとしても助かる」


「そうなんすか? そんな風には見えないっすけど……」


 ハボアは苦い顔をしてイオリに語る。


「確かに、一見そういう感じは伺えないだろうが、此処は色んな素材が豊富でその上格安で手に入る。 その為に色々な物を大量に作る事で職人達の腕もまた上がり易い。 そうして腕が上がった職人達は街から出て行き、領主が直接治める領都や皇国の首都に行ってしまうんだ。 しかも、此処数年その傾向が顕著に現れている」


「何処も裏の事情というやつは苦しいもんなんすねぇ」


「そういう訳だ。 もし、困った事があったら私が相談にのろう。 出来うる限り力になるよ」


 イオリは微苦笑してハボアに告げる。


「実は冒険者ギルドのホッポさんからもそう言われてるんす」


「ホッポ様からも?」


「でも、ホントに困ったら頼らせてもらうっす。 その時はお願いするっす!」


「ああ、任せてくれ」


 三人は雑談を交わした後、イオリ達はハボアの居る支部長室からお暇した。


 その後、支部長室で一人佇むハボア。


「ホッポ様もイオリ君の事を狙っているのか……だとしたら冒険者の適性も高いと言える。 ならば、こちらも何らかの手を打っておく必要があるな……」


 ハボアは一人思いを巡らすのだった。




――ケサラパサラの街 冒険者ギルド支部――



 職人ギルドを出た後、レムに街の中央近くにある赤レンガの三階建ての建物にイオリを案内する。

 レムに受付まで連れて来られたイオリ。

 イオリははエルフ族の受付の女性に冒険者登録をしに来た旨を伝える。


「わかりました。 手数料として銀貨一枚掛かりますがよろしいでしょうか?」


 イオリは言われた通り銀貨を支払う。


「では、簡単な適性試験を受けてもらった後、講習を拝聴して頂きます。 それが終われば冒険者として登録が完了し冒険者の身分証であるタグをお渡しします」


 イオリは受付に冒険者登録の窓口に並ぶよう指示された。

 そこで適性試験の内容が説明されるらしい。


 レムは受付近くの待合室で待つとイオリに伝えて其処に向かう。


 受付に指示された窓口に並ぶイオリ。 窓口には長蛇の列が出来ていた。

 一体どれ位まで待たされるのかウンザリしながら列の前方を眺める。

 一時間近くだろうか。 やっとイオリの処にまで順番が回って来た。


「次の人! 記入用紙に必要事項を記入して! 代筆必要? 要らないならちゃっちゃと書いちゃって!」


 何ともおざなりな窓口職員である。

 イオリが必要事項を記入して職員に記入用紙を手渡す。

 職員は軽く目を通して、目を見開き、もう一度記入用紙を確認する。


「あなた、ホッポギルド支部長の孫のシャーラン様の教え子で間違いないわね?」


 職員は顔をイオリに近づけぎょろりとした目でイオリの顔を睨む。


「そ、そうっすけど……何か……?」


 職員の迫力に気圧(けお)されるイオリ。


「あなたは一般の登録者とは別に適性試験を受けてもらうわ! 列から外れて待ってて頂戴!」


「何か問題でもあるんすか?」


「いいえ、無いわ。 ただ、ホッポ支部長の指示であなただけ別枠で適性試験をするそうよ。 わかった? わかってくれたなら、私の言った通りにして頂戴!」


 またしても、特別待遇。 自分は普通なのに……と愚痴をこぼすイオリ。

 窓口職員に強引に列から弾かれる。

 イオリは仕方なしに一人ぽつんと佇む。


 そうして、しばらく待っていると、


「コレット君、例の少年は何処かな?」


 一人の身なりの良い、しかし歴戦の冒険者を思わせる風体の人族の初老の男性が上階から降りてきた。

 窓口職員――コレットは自分の名を呼んだ初老の男性を見てイオリを呼ぶ。


「あ! 副支部長! その子です!」


 コレットからイオリの事を聞いた初老の男性は一つ頷く。


「なるほど……君がイオリ君だね? では、こちらに来なさい。 時間も丁度空いたし、私が君の試験を担当しよう。 私の名はバロス・エンデ。 よろしく」


「おいらはイオリ。 適性試験て、何するんですか? イキナリ別口で試験とか言われてもあんまり難しいのはちょっと……」


「何、簡単な身体能力テストと幾つかの質疑応答をするだけだ。 難しいことじゃない」


「良かったっす……」


 安堵するイオリ。 

 イオリとバロスはギルドの建物の外、裏にある訓練場に来ていた。


「身体能力試験の内容は持久力、瞬発力、反射神経、耐久力、筋力、魔力、属性の冒険者に必要な七つの基礎能力を調べる。 では、私の指示に従って行動してくれたまえ」


「はいっす!」


 持久力では持久走、 瞬発力では跳躍力、 反射神経では飛んでくるボールの回避や掴んだり、 耐久力では体に直接拳などの打撃を受け、筋力では体の各部位、腕力、脚力、腹筋、背筋を測定器具を使用し測定する。

 基礎の身体能力は軽く平均値を上回り、上級冒険者の仲間入りをしている。


(シャーラン嬢と対等以上に遣り合えるとホッポ様からお聞きしていたが、まさかシャーラン嬢と同程度の身体能力とは……)

 

 属性と魔力も専用の魔道具で測定する。 ちなみに、この測定器で自分の属性も調べる事が出来る。

 ただ、人族は大抵、無属性の一つが大半である。 ギルド職員のバロスも無属性一つである。


 では、この測定器の二つの丸印の処に片方ずつ手を置いてくれたまえ。


「はいっす!」


 イオリはバロスに言われた通り、魔道具の測定器の丸印の中に手を置く。

 すると、イオリの魔力の量を示すカラー・ゲージの色が変化する。

 その色は虹色。 最高クラスの更に上に位置する色である。


 バロスは目を見開き驚愕する。 自分が今まで出会った事の無い魔力量なのだから。

 しかし、流石は上に立つ者。 深呼吸して心を落ち着け冷静になる。


 属性を示す文字版には無属性の他にもう一つ、闇属性が表示されていた。


「ほお! これは!!」


「どうしたっすか? エンデさん」


「いいや、 何でも無いよ。 イオリ君」


 そう言いつつも子供のイオリにもハッキリと分かるくらい興奮していたバロス。


 実は闇属性を持つものは、もう三年近く出現していなかった。 貴重な光属性を持つ者ですら一年に二、三人位は見つかっているのに。

 闇属性の因子を持つはずのダーク・エルフですら闇属性を持つ者は中々生まれてこない。


 一説によると、月と闇の女神セレネデイアが三百年前、夫である太陽と光の神ペルセオンと仲違いして行方しれずになってから闇の加護を受けられなくなり、闇属性を持つ者が生まれにくくなったと言われている。


 何とか落ち着きを取り戻したバロスはギルド二階の会議室にイオリを案内し用意した椅子を向かい合わせにしてイオリを座らせ、自らも椅子に座る。


「……今度は質疑応答だ。 冒険者に必要な野営の知識、動植物や魔物の知識についてこちらが質問するから、君はそれに答えてくれたまえ」


「はいっす!」


 バロスは矢継ぎ早にイオリに質問を投げ掛ける。 イオリはそれに淀みなく答えていく。 イオリのこういった基本的な知識は黒モヤやシャーランに教えられていたので質問でわからない内容のものはなかった。


 そして、最後の質問をイオリに問い掛ける。


「最後の質問だ。 君は冒険者になって何がしたい? 何を目指す?」


「おいらは魔導機工師マジック・マシン・クリエイターだから自分で鍛冶に必要な素材集めが出来るようになりたいっす! 目標は、色んな素材を集めて自分の作りたい物を作るっす!」


「き、君は魔導機工師なのか!?」


「はい、そうっすけど……。 それが何か?」


 バロスはイオリに職人の証のタグを見せてくれるように頼む。

 イオリは首に掛けてある金色のタグをバロスに見せる。


「まさか魔導機工師が冒険者に成ろうとするとは……確かに自分で魔物を狩ったり採掘や採取をすれば安上がりだろうけど、君くらいのレベルに成れば普通スポンサーが付いてお金や素材にも困らないだろうに……」


「う~ん……そうなんでしょうけど、おいらは今の時点でも十分お金には困ってないっすよ? 素材の方がまだ全然、種類や量が少ない位で……。 ただ、おいら孤児なんで少しでも有名になれば両親の手掛かりが見つかるんじゃないかぐらいしか思わないっすね」


 バロスはイオリのその返答に微苦笑する。


「君は欲が余り無いんだね」


「そんな事はないっす! 作りたい物を作る事はおいらの持つ最大の欲の一つっす!」


「アハハハハ、そうかそうか! 頑張り給えイオリ君! この後講習を聞いて、タグを受け取ればその時点で君は冒険者だ」


 イオリは目を丸くして驚く。


「そ、それじゃあ、おいら冒険者になれるんすね!」


 興奮するイオリをバロスは宥める。


「さっきも言ったように後講習を聞いて、タグを受け取れば――だ」


「わかったっす! で、講習はいつ、何処でやるんすか?」


「もうすぐ、この部屋でだよ。 では、私は他に仕事があるからこれで失礼させて貰うよ」


「ありがとうございましたっす!」


 バロスはイオリに別れを告げて部屋を出て行った。


 イオリが暫く待っているとやがてガヤガヤと人の話し声が近づいて来て、扉を開けて色んな人種の者達ががぞろぞろ入ってくる。

 大半が、イオリと同年代位の少年少女だが中には中年に差し掛かった者もいる。

 そういった者達は兵士の仕事を止めたり、止むに止まれぬ事情で冒険者に成る者達だ。


 最後に講師が入って来て講習が始まる。

 主に冒険者の種類についての説明だ。


 冒険者の仕事の種類は狩猟・採取・採掘・討伐、探索、護衛、賞金稼ぎ、治安維持の五つに別れている。


 |狩猟/採取/採掘/討伐ハンターは魔物や魔族を狩猟、討伐したり、薬草や自然にしか実らない食料の採取、稀少金属や宝石の採掘などが主な仕事の冒険者である。


 探索(サーチャー)は遺跡や洞窟などのダンジョンを探索し、其処に眠る財宝や特定の環境下でしか存在しない魔物や魔族を狩り、素材を収集する冒険者である。


 護衛(ガード)は商人や貴族が道中の安全を確保する冒険者。 


 賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)は魔物や魔族だけではなく犯罪者掛けられた賞金が目的で捕縛か討伐を(こな)す冒険者である。


 治安維持(セキュリティ)はギルドのある街の中やその周辺の魔物や魔族、犯罪者から街を守る冒険者である。


 イオリにとっては素材集集の為、主に上二つが関係している。 その為、特に注意して聞く。

 残りの三つは興味が薄いので適当に聞き流した。


 ちなみに、ランクと言う制度はこの世界の冒険者ギルドには存在しない。

 その代わり強さを現す魔物や魔族の狩猟、討伐記録、犯罪者の捕縛や討伐記録、仕事の成否の回数の記録、賞罰内容と回数が記録され、それが冒険者の格付けに繋がる。


 五種類の中で一番安全性が高く、安定した収入を得られるのが治安維持だが、人数制限があり、狩猟/採取/採掘/討伐、護衛、賞金稼ぎの三種類の仕事を最低一回以上熟し、尚且(なおか)つ仕事の成功経験が合計で三十回以上ある者でないと採用されない仕組みだ。


 講習も終わり、いよいよタグの受け渡しの時。 イオリが心待ちにしていた瞬間が遣って来た。

 タグを受け取れる。 漸く冒険差として活動できる。 歓喜がイオリの心を支配した。


 と、其処で少女の絹を裂くような悲鳴が聞こえた。 何事かと振り返って見てみれば、


「や、やめて下さい! 離して!!」


「いいじゃねえか! な、なあ! これからオレっちと一緒にいい事しようぜ!!」


 野卑な冒険者の猪獣人の男がエルフの少女――レムに言い寄り腰を押し付け、卑猥な動きをしていた。


 それを見たイオリは頭に血が昇り、男に向かって走りだすと飛び蹴りを食らわした。

 男は綺麗に吹き飛び、壁に頭をめり込ませる。


「レムに手ぇ出してんじゃねえっす! この豚野郎!!」


 勝利のガッツポーズを取るイオリ。 イオリの行為に拍手喝采を浴びせる見物人の冒険者達。


 其処へ、ギルド職員が遣って来て、


「ギルド内での暴力沙汰により一ヶ月の冒険者資格の停止とします!!」


 まさに晴天の霹靂に遭ったイオリであった。


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