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第二十話 魔導機工師

 今年最後の更新です。

 次回の更新は来年となります。

魔導機工師マジック・マシン・クリエイター?」


 イオリは聞いた事もない職業に首を傾げる。


「なんすかそれ? 美味しいんすか?」


 平常運転のイオリ。 いや、もしかしたらイオリの頭の中は鍛冶師になれずパニックを引き起こしているのかもしれない。

 その証拠にイオリの視線が何処にも定まっていない。 


「魔導機工師ってのは、下級の鍛冶師や中級の魔導鍛冶師の更に上、上級の鍛冶師の事だよ。 イオリ、アンタ鍛冶師修行の合間にヴェデルの奥義書にも載ってない色々と凄いもん作ってたろ? それが職人達の責任者や里長の親父殿の目に止まって、『下級の鍛冶師じゃ勿体無い! 上級の魔導機工師にするべきだっ!!』って推薦の声で決まったんだよ。 アタシも魔導機工師に成れたけど、どちらかと言うとアンタのオマケみたいなもんさ!」


 と、自嘲気味に微苦笑しながら答えるクレオ。


「えーと……つまり、すんごい鍛冶師の事なんすか?」


 イマイチよくわからないが、取り敢えず優れた鍛冶師の認識で合っているのかクレオに尋ねてみる。


「そう言う事。 ちなみに最上級の鍛冶師は『鍛冶の神』な」


「鍛冶の神って職業だったんすか!?」

 

 どうやら自分の認識で間違いないようだが、まさか鍛冶の神が職業だとは思わなかったイオリ。


「鍛冶の技を極めればなれるらしい……。 まっ! アタシ等には関係ないさ!」


「そうっすね……」


 流石に鍛冶の技を極めるには至らないだろう。

 もしそうなら鍛冶の神が死んだ後、歴史上何人か鍛冶の神に成っている人物が居るに違いないからだ。

 イオリも流石に其処までは望まない。


「ああ、そうそう。 一人前の職人は二つ名を持つ事になるんだ。 ちなみにアタシは赤鉄(あかがね)さ。 アンタも考えときなよ! 一応、アタシ等巨人族も少数の取引とは言え商売の都合上、職人ギルドに登録されるんだ。 アンタもこの里を通して職人ギルドに登録されるからね」


「師匠にお似合いの二つ名っすねえ。 二つ名っすか? う~ん……イキナリそんな事言われても思いつかないっすよ……」


 二つ名は必ず付ける必要はないのだが、巨人族は何故か全員二つ名を付けたがる習性のようなものがあるのだ。 だから弟子のイオリにも付けるのが当然だと思い込んでいるクレオ。


 しかしこの二つ名、自分で考えて付けるのが大変難しい。 例えば、二つ名が凄くて実力は大した事が無かったり、若い頃に粋がって付けたのが、年をとって落ち着いた性格になった時、悶絶する程恥しくて死ぬ程後悔する者が大半を占めている。 

 要するに本名をそのまま使い、二つ名登録しないのが一番無難だという事だ。


 ちなみに、二つ名登録は増やす事は可能だが削除する事は出来ない。

 しかも、人から呼ばれるようになった二つ名も勝手に職人ギルドで登録される。


 これは、もし商品に重大な欠陥があったり、職人が犯罪に手を貸したり、作った道具が犯罪に利用された時、その職人を特定しやすくする為の予防措置であるからだ。


「だったら『イデア』てのはどうだい? 伝説の巨人で鍛冶の神ヴェデルの一番弟子だったんだ。 鍛冶の神に最も近づいた人だったんだけど……混沌の女神ファリスとの戦いでヴェデルと一緒に命を落としたんだ」


「……後半の(くだり)が不吉なんすけど――でもまあ、それぐらい優れた人なら(あやか)りたいっすね! いいっす! それに決めたっす!」


 流石に自分は志半ばで死にたくない。 イオリが思う理想の死に方は人生を全うしての老衰死だ。

 しかし、それ程優秀な人の名前が二つ名なら悪くは無いと思ったイオリ。


「じゃあ、この名前で登録しとくよ。 これでアタシも漸く肩の荷が下りた。 新婚生活を満喫出来るさねえ!」


「ちょ、ちょっと待つっす! 結婚って! 師匠いつの間にしたんすか!? 相手は誰っすか!?」


 クレオ、今明かされる衝撃の事実! 流石にイオリも度肝を抜かれた。


「相手はラテルだよ。 式はアンタが家に帰ってる時に挙げた。 いやー残念だったよ! アンタにも祝って欲しかったんだけどねえ~」


「……師匠、もしかして態とおいらを除け者にしたんじゃあないっすか?」


 本当にイオリの参加を望むなら日にちをずらせば済むことだ。 つまりはそういう結論になる。


「バレたかい。 相手がラテルでタダでさえ周りからからかわれてんのに、流石に弟子のアンタにまでからかわれたかないからね!」


 半目でイオリを睨むクレオ。


「水臭いっすよ、師匠~! おいら、からかったりしないのに~。 それで此処一年、お屋敷のお手伝いさんが家事全般熟してたんすね」


 自分はクレオの一番弟子なのにと半ば不貞腐れるイオリ。


 だが、クレオの言う通りイオリは自分では気づかずに人をからかう癖があった。


 そして、クレオが此処一年、屋敷で会わなかったのは、てっきり仕事が忙しかったからだと思い込んでいた。


「そう言う事。 でもイオリ、アンタも成人したら独り立ちするんだろ? どうすんだい?」


「おいらはケサラパサラの街を拠点に活動するつもりっす! ギガントの砦にも近い街だし、辺境で色んな魔物の素材も手に入りやすいし、近くに港街もあって流通も整ってるから便利な場所なんすよ!」


「そうかい。 頑張りな!」


「はい! 師匠もラテルさんとの子作り頑張って下さいっす!!」


 などと、さり気なく碌でもない発言をするイオリ。


「アンタはそうやってナチュラルに人をからかうから! だからアンタを結婚式に呼ばなかったんだよ!!」


 イオリ本人は自覚も悪気もないのだが、その分達タチが悪かった。




――月の湖の浮遊城 クレセント・ティア――



「と、言う訳でおいら鍛冶師修行が終わったす!」


 クレセント・ティアに戻ってきたイオリは突拍子もなく興奮した様子で黒モヤとシャーランに鍛冶師修行の終了報告をする。


「???」


 意味がわからず困惑する黒モヤ。


「……イオリ様、主語が抜けています。 報告は端的に、そして正確にして下さい」


 シャーランに指摘され一から説明し直すイオリ。


「そ、そうですか。 修行は無事に終了しましたか。 しかし、魔導機工師マジック・マシン・クリエイターに成るとは……私も想像していませんでした。 でも、太古の砦後――今はギガントスの砦でしたか? あそこに行く度に様相(ようそう)が変化していくのは驚かされましたが、まさかイオリが関わっていたとは思いませんでしたよ」


 黒モヤは苦笑いして答える。


「後はシャーランさんの武術訓練だけっす! シャーランさんに認められるまで頑張るっすよ!」


 張り切るイオリ。 しかし、シャーランから以外な話が聞かされる。


「イオリ様、武術は既に及第点をお取りしています。 よって、武術訓練も終了とさせて頂きます」


「一体いつのまに!?」


「私を初めて下した頃からです。 ただ、それでイオリ様が増長するのは大変危険でしたのでそのまま黙って武術訓練を続けさせて頂きました」


「そうっすか……何だか寂しいっすね……」


 しんみりするイオリ。 と、其処でシャーランが、


「なんならこのまま、武術訓練を続けても構いませんよ? その代わり、その場合は私のお婿さんに成って頂きますが」


 本気とも冗談とも取れるシャーランのその言葉を聞いたイオリは全力で頭を左右に振って否定の意志を示す。


「……そうですか。 残念です」


 本気で残念そうに見えないシャーラン。 やはり、ただ単にイオリをからかっただけである。


「シャーラン、イオリは私の可愛い愛子(いとしご)! 手を出す事は許しませんよ!!」


 しかし、それに対して過剰反応する黒モヤ。


「何故お許し下さらないのですか? もしかして……」


「なあ! べ、別に私がイオリのぉょ……」


「既にイオリ様のお相手を見付けて居られるのですか?」


 シャーランがニヤリと笑い黒モヤに突っ込む。


「い、いいえ! まだ見付けていません! しかし、イオリに相応しい相手は私が必ず見付けてみせます!!」


「……おいらの意志は無視っすか?」


 イオリは一人、蚊帳(かや)の外に置かれ、ただ苦笑いするしかなかった。




――それから二ヶ月後 六月 六日――



 イオリはこの日、十五歳の成人を迎えて独り立ちする。


 黒モヤは此処に住んでも良いと言っているが、自分の好きな道を歩めるよう、此処まで育ててくれた黒モヤにこれ以上甘える事は出来なかった。


「いつでも帰ってきて良いのですよ! 此処はイオリの家でもあるのですから!」


 名残惜しそうにイオリを見送る黒モヤ。 本当は付いて行きたいのを必死で我慢している。


「黒モヤ様、何も永遠の別れではないのですから。 イオリ様は近くのケサラパサラの街に住むのですからいつでも会いに行けますよ」


 主を宥めるシャーラン。 実はイオリの住まいは祖父のホッポの(つて)を使い、シャーランが手配してくれたのだ。


「それじゃあ、行って来るっす!」


 イオリは全長四・八mの発掘した旧式フェリアールに乗り込み、コクピット・ハッチを閉める。

 フライト・ユニット取り付けたフェリアールのエンジンをスタートして上空に浮上するとフェリアールは一路、ケサラパサラの街に向かって飛び立って行った。


 これにて第一章は終了し、次回からは第二章の開始です。

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