第十九話 太古の砦改装、そして六年の時が過ぎて……
この話で一気に六年の歳月が過ぎます。
――山岳地帯ギガントス 太古の砦跡 壊れた工作設備室――
前回の続き。
イオリは嵩張る魔導機械やフェリアールの置き場所を確保する為に太古の砦跡の設備機能をイオリの鍛冶師修行の合間に修理復元する事になった。
「イオリ、奥義書の閲覧許可が出んのは一人前の職人とアンタだけだ。 だからアンタが奥義書を閲覧してきて設備の設計図や仕組みを調べてきてくれ」
「了解っす!」
二人は太古の砦跡の壊れた工作設備作業室の機能を取り戻す事に専念する。
クレオが工作設備作業室の図面を資料室から引っ張り出し、イオリがその図面から設備の設計図を奥義書から閲覧して刻印珠紋に記録し、それを元に少しずつ復元していく。
工作設備作業室の修理復元にはイオリの魔導工作機械が大活躍だ。
これがなければ修理復元には何十年と掛かった事だろう。
「イオリ! 配線の修復頼むよ! それと配線接続する時は電源切ってから接続しなよ! 感電死しちまうからね! 後、接続する端子間違えんなよ!!」
「わかってるっす師匠!」
工作室の設備機能が復元される度に他の職人達が遣って来て設備の使用許可を求めてくる。
「なあ、クレオ! この設備機械使わせてくれよ!」
「いいよ! マニュアル読んで勝手に使いな! ただし、壊すんじゃないよ!!」
「クレオ、こっちは?」
「ああ、そっちはまだ駄目だ! 動力不足で使えないんだよ!!」
「じゃあ、俺達が予備動力作ってくるよ!」
いつの間にか他の職人達も加わり、設備の復元作業は急ピッチで進み、あれよあれよいう間に工作設備作業室は一年の年月を経て完全に復元が完了した。
六月の初め、季節は春、イオリが丁度十歳になった頃であった。
「やっと復元作業が完了したっすね師匠!!」
「ああ! 此処まで長い道程だったけど遂にやり遂げたよ、弟子よ!!」
二人は手に手をを取って喜んだ。
「さあ! これで異次元倉庫を作るっすよ!!」
イオリは喜び勇んで作業に取り掛かろうとした時、
「何を言っておるお前達! これは始まりに過ぎぬ! そう、太古の砦――ギガンテスの砦復活の序章にな!!」
「「へっ?」」
いつの間にか巨人族の里長ストレマテス――マテスが興奮を隠そうともせずに宣言する。
「これより巨人族総出でギガンテスの砦の修復復元作業に取り掛かる! クレオ、イオリもそれに参加してもらうぞ! もちろんイオリの鍛冶師修行に差し支えないよう考慮はする!!」
イオリとクレオ二人共、目が点になり事態に付いて行けずにいた。
「お、親父殿、一体どういう事だ!?」
「どうもこうもない! お前達がこの工作設備作業室の魔導機械を修理復元してくれたおかげでこの里の生産技術が太古の時代のものに戻ったのだ! その為、この砦の修復が可能になった! 今こそギガンテスの砦復活の時! いや、太古の時代のものよりもっと発展させた砦にするぞ! 皆の者、巨人族の技術の粋を極めた砦を作るぞーーー!!」
「「「おおおぉぉぉーーーーーーっ!!」」」
「親父殿! それは不味いぞ! それではスレイオン皇家が黙っていない!!」
「そのスレイオン皇家が最近、我等巨人族の里に口出してきておるのだ! やれ、此処は国の土地だの、皇家に忠誠を誓い従えだの、税を払えだの! 此処は神々にも認められておる我等巨人族の土地! 混沌の女神ファリスの件以外で従う道理は無い!!」
どうやらマテスも里とスレイオン皇家との間でフラストレーションが溜まっていたようだ。
ストレスを発散する捌け口が欲しかったのかもしれない。
それが今の騒動を引き起こしてしまったみたいだ。
こうなっては最早職人魂に火が付いた巨人達を止める術はなかった。
「いいんすか? 師匠……」
「こうなっちゃあ、誰も止められないよ……もう成るように成れだ! とことんやったろうじゃないか!!」
遂に最後の頼みの綱であったクレオもヤケクソになってしまった。
イオリはそんな彼等に付き合う他無かった……。
――山岳地帯ギガントス ギガントスの砦 改装作業一年目――
ギガントスの古い城壁の外の岩盤を掘削し、外壁を拡張していく作業。
その際、偶に地中巣食う魔物と出くわし、魔物の対処に駆り出されるイオリ。
おかげで地中型の魔物対処法や素材の剥ぎ取り方法を覚えた。
掘削作業に伴い新規の有望な鉱山を数カ所発見。 その中にはミスリル、オリハルコンなどの稀少魔導金属の鉱脈も含まれる。
ゴブリンの巣に当たることもあったが、奥義書を盗まれた恨みを晴らす為、巨人族総出で一匹残らず殲滅する。
この時、イオリはゆっくり休憩出来るのでラテルの食堂でのんびり過ごしたり、異次元倉庫の作製に勤しむ。
――山岳地帯ギガントス ギガントスの砦 改装作業二年目――
ギガントスの外壁建造。
三交代制で昼夜問わず外壁装甲板の製作、設置作業。
この時、イオリは未着工の外壁部分外周りの見回り担当。
侵入者、特にゴブリン係の魔族に注意を払う。
それ以外の空いた時間でイオリは今まで作製してきた魔導工作機械の集大成、万能小型ツール『創造の手』を作製。
――山岳地帯ギガントス ギガントスの砦 改装作業三年目――
ギガントス外壁完成。
以前の砦に比べ頑強で侵入者や敵性勢力に対しての防衛設備、工作設備作業室の拡張や設備の充実を図る。
新規食料プラントの建造。
内装工事やその他の設備の修理の実施。
この時、イオリはフェリアールの改良、新型の設計を行う。
――山岳地帯ギガントス ギガントスの砦 改装作業四年目――
砦の心臓部である動力炉の建造。
正、副、予備の三系統でそれぞれ独立した動力炉を建造。
この時、イオリが魔導永久機関『ジャイロ・モーター』を設計し、作製、実用化に成功。 その為、動力炉の設計に関与。
――山岳地帯ギガントス ギガントスの砦 改装作業五年目――
四月の初春。 イオリ十五歳の成人の年。 遂にギガントスの砦改装完了。
里長マテスが巨人族の皆の前で演説を行う。
「遂に我等の悲願! 新しきギガントスの砦が完成した! 皆、ご苦労であった! 今日は砦の完成を祝して宴会を催す事にした! 皆、大いに楽しんでくれ!!」
「「「おおおぉぉぉーーー!!」」」
そう言えばと、イオリはふと大事な事を思い出し、クレオに尋ねる。
「師匠! 師匠!」
「なんだい、弟子よ?」
「おいら、いつになったら一人前になれるんすか?」
「……忘れてた。 イオリ、お前……もうとっくの昔に一人前なってんだよ」
「一体いつから!?」
目を剥き驚愕するイオリ。 それもそうだ。 自分の知らない間に自分は一人前になっていたのだから。
「去年から。 だからアタシも一人前の職人に認められて工作設備作業室の責任者になったんだ」
しれっと大事な事を告白するクレオ。 イオリが尋ねなければ未だイオリはその事を知らずに修行の日々をこれからも続けていただろう。
「そう言う大事な事はちゃんとその時に言って欲しいっすよ!」
「あ、ああ……悪かった、済まない。 ただ、言いにくいんだけどイオリ……アンタ鍛冶師として認められたんじゃあ無いんだわ」
クレオはイオリの視線から顔を背けて後頭部を掻きながら実に言いにくそうに答える。
「へっ!? じゃあ、何に認められたんすか!?」
クレオに詰め寄るイオリ。
「魔導機工師さ」
肩を竦めイオリに聞き覚えのない職業の名を口にするクレオだった。
主人公イオリ、まさかの想定外の職業!




