フィロリアル仮面
「おそらくメルロマルクの各地で起こっている問題だろう。近隣の町村からも情報が来て居る」
ワニ男がそう説明しましたぞ。
「錬はこの事件が起こる事を予期した訳ではないのかな?」
「どうだろうな」
「現場に行きましょう」
「うん、ラフミちゃんが出てくるかもしれないけど、急いで鎮圧に行こうか」
と、俺たちは急いで馬車から降りて現場へと向かいますぞ。
するとそこに居たのはガラの悪そうな冒険者なのか野盗なのか、盗賊なのかわからないですが略奪者が襲撃に来ているようでしたぞ。
「ブヒィイイイ!?」
「ははは! 女子供はさらって男は殺せ! 今日は楽しめそうだぜぇええええ!」
「良い時代になったもんだ! ハッハー!」
「「「おおー!」」」
おお、完全に国内は荒れている状況ですぞ。
「わー直球の山賊か。しかしまあ思うけど……噂に聞くタクトも似たような罪状だったよね」
そうですな。タクトは完全に山賊のそれですぞ。
転生殺人鬼ですな。
相応しい末路を与え続けてやりますぞ。
「ここは人間の村だが立ち寄った事もある」
「三勇教の扇動に乗った愚かな人達でしたが見捨てるのもどうかと思いますね」
そう、ワニ男とウサギ男が助けに入ろうとした時ですぞ。
「待てい!」
「ああ? なんだぁ?」
声がして現れたのは……女王ですな。
扇で顔を隠してますがわかりますぞ。
「あ、女王様が来てるのか。なら大丈夫なのかな? 国の兵士も護衛に――」
お義父さん達が助太刀に入ろうとしたのですが、周囲には……フレオンちゃんが居ました。
おや? 新衣装ですかな? ブレザーを着てますぞ。
「あなた達の悪事はしっかりと見ていましたよ! 村を襲撃し、善良な民たちを捕らえて苦しめるその悪の所業、このブレザーフレオンがしかと見ていましたよ! 断じて認める訳にはいきません」
「あ?」
お義父さんが眉を寄せながらフレオンちゃんの名乗り口上に耳を傾けております。
「例え勇者が許そうとも、精霊たちが許しはしません。この国で私の目が光っている内は民の為に邪悪からすべてを守りましょう。それが民の願いの体現者たる私の務め!」
そう、フレオンちゃんに続いたのは女王ですぞ。
何をしているのでしょうかな?
「民あっての国、その民たちの希望が今……ここに!」
バッと扇を天高く投げたかと思うと女王は手にしたコンパクトを掲げて叫びますぞ。
「メルロマルク・グロウアァアアアアップ!」
パァアアア! っと何やらコンパクトから閃光は放たれ……ライバルが作ったフィーロたん達の衣装変化のエフェクトが発生するコンパクトと同じ演出が女王を包み込んで服装が変わっていきますぞ。
「うわ!? 眩しい!?」
そして現れたのは……婚約者の髪型に変化してブレザーっぽい衣装の20代くらいの、よく見ると女王が決めポーズと共に姿を見せたのですぞ。
「ブレザーミリィ、ここに降臨。勇者に変わってお仕置きの時間よ!」
キラキラキラーン! っといった効果音が響き渡りましたぞ。
「最後の忠告です。早く投降したら罪状を軽くしてあげましょう」
「は! 何がお仕置きだ! 珍妙な奴だがこれだけの人を相手に勝てると思ってんのかよ!」
「伝説の勇者様って奴ならともかく、こんな訳の分からねえ奴に負ける訳ねえ! おい!」
「よくわからねえけど顔はまあ上物っぽいじゃねえか。へへ、今日は楽しめそうだな」
ぞろぞろと山賊どもがブレザーミリィと名乗る女王とフレオンちゃんに向かって集まって行きますぞ。
「痛い目みたくなきゃ大人しくやられろコラァアアア!」
山賊がそう女王に襲い掛かろうとした所で女王は飛び掛かってきた山賊に蹴りを見事に決めましたな。
「ミリィ! キック! からの……ティアラストライク!」
頭に乗っかっていたティアラを魔法で高速回転させて離れていた山賊の腹に投げつけてましたぞ。
「うぐはぁ!?」
「くそ! 思ったより動きが良いぞこいつ。おい!何時まで転がってんだ?」
「い、いてぇ……は、腹に、なんだこれ! 食い込んでいてえええええ!」
女王の高速回転したティアラが食い込んで当たった山賊がもがき続けてますぞ。
「私を忘れて貰っては困りますよー! フレオン、キーック」
ぐるぐるぐる! っと飛び上がったフレオンちゃんは空中の何処かを足場にしたとばかりに落下と評する速度で落ちて行きますぞ。
「うお!」
「あっと外れてしまいました」
ドォオオオ! っとフレオンちゃんの蹴りに衝撃波が発生して後方の木々が大きく薙ぎ払われてしまいました。
「ぁあ!?」
その衝撃に上手く避けれた山賊が青い顔をしてますぞ。
「まあ過剰戦力なのかな……フレオンちゃん。女王も結構やれそうだけど……」
と、遥か遠くで俺たちは様子を見てますぞ。
「……助けに入るべきなのだろうか?」
「雰囲気的にはそうなんだけど……」
どうにも入りづらい雰囲気があるようですな。
「おい! 何ビビってんだ! 何か仕掛けがあるに決まってんだろ! さっさと取り囲んで捕まえろ!」
山賊の親玉らしき奴が状況を理解できずに部下共に命じていますぞ。
まあ腰が抜けた連中も居ますが数が多いですから行けると踏んでいるみたいですな。
それくらいの人員が居る山賊団のようですぞ。
「中々腕が立つようだが、こっちも切り札ってのはあるってもんよ!」
そのまま女王とフレオンちゃんが取り囲まれましたな。
そんな山賊の中で何やら腕に覚えがあるとばかりに自信ありげな奴が一歩踏み出して女王とフレオンちゃんに相対しますぞ。
「先生! やっちゃってください」
「おうよ! ま、捕まえたら俺が一番いい所を頂くがな」
「もちろんだぜ!」
何やら舌なめずりをしながら強者を筆頭に数で抑えようとしている光景のようでしたが……。
スタン!
っと女王とフレオンちゃんを後ろから攻撃しようとしていた奴の間に……フレオンちゃんの羽が投げ込まれて阻まれましたぞ。
「なんだ? 他にまだ何かが居やがるぞ! 出てきやがれ!」
「フ」
そこに建物の影から現れたのはフィロリアル様の仮面をつけた燕尾服の人物ですぞ。
何者ですかな?
「一致団結して事を成す、時にそれは統率者からするととても心地よい仕事にもなる。だがそれで人々が嘆き悲しむ悪行を成しているのでは話は異なる。世界の危機である時こそ悪の芽は花となるのもこれもまた宿命なのかもしれない。だが、その花はどれだけ魅力があろうとも、所詮は道端の草、真なるキラメキには遠く及ばず」
何を言っているのですか?
よくわからないポエムみたいな口上ですな。
周囲も首を傾げますぞ。
「フィロリアル仮面様!」
女王がそう、助太刀した人物に向けて笑みを浮かべました。
「どれだけ人が集まろうとも統率者の能力が低い、程度の低い奇襲しか考えになく、全体を見渡せていない。人、それを烏合の衆と言う。このように他に見ているものが居れば容易い」
「う――」
と、奇襲しようとした者が倒れましたな。足元の影から魔法で射抜かれて倒されたようですぞ。
「今だブレザーミリィ!」
「はい!」
サッと……女王が腰からいつの間にか派手なロッドを取り出して構えたかと思うと……ロッドの先端が光り始めますぞ。
「おい! 魔法を辞めさせるぞ! はぁあああ!」
「ふん」
で、フィロリアル仮面とやらも……サッと指揮棒のような杖を出して周囲の速度を落とす……いえ、これは樹が使うダウンの魔法ですぞ!
「アル・リベレイション・ダウン!」
周囲の連中、山賊全ての能力低下が施されました。
「な――、こいつら――はやい」
お前らが遅くなっているのですな。
で、女王が派手に光るロッドを山賊の用心棒と頭らしき奴に向けて叫びましたぞ。
「ライズアップメルロマルクぅうううイルミネイショーン!!!」
ドドドっと紫色に輝く氷の塊が出て来て思いっきり山賊どもを吹っ飛ばしました。
「ギャアアアアア!?」
更に追い打ちとより派手な攻撃の中にクズの得意な光線の乱反射魔法が氷の塊を通して他の山賊共を撃ち抜いて行きました。
「ガハ――」
「うう……」
「な、なんだこいつ等……」
全くですな。




