家出
「ヴォフウウウウ!?」
チャキっとツメを装備してヴォルフとルフの勝負が始まったのですぞ。
「ルフルフルフ!」
小さい体から弾丸のようにヴォルフの懐に飛びこんで重たい一撃を放っていたようですぞ。
「わー……なんかデジャブ」
「一応、本人ではないなの」
「うーん……何ともグレーっぽいんだけどなー」
「わーなんかヴォルフさんが戦ってる」
「ルフくんだ!」
「あ、剣の勇者様も来てるーキールくんは来てないのかな?」
「何かの試合かな?」
「演目じゃない? サーカスの」
と、まあお姉さんの村の者たちが集まってその戦いの鑑賞を始めたのですぞ。
「おい。どんどん奴が脅威になって行くぞ! ラフミ! いい加減にしろ!」
「いいでは無いか。これも世界平和のための戦いだぞ? きっとこのループで末永く世界を見守る役目を担うぞ。ラフ種のように」
お義父さんのお気に入りのラフちゃんの将来ですかな?
「山奥で延々と修行をし続けるんじゃないかと思うなの」
「どうだかな」
「それに、このガエリオンも一応、この世界を見守る予定なの……」
ライバルが世界支配を企んでますぞ。
その邪魔をして欲しいですな。
大きなフィロリアル様、どうかライバルの野望を阻止してほしいですな。
「とりあえずあえて言わないけどラフミちゃん達が色々と台無しにするような子を投入したなー……」
なんて遠い目をお義父さんはしたのですぞ。
そんな訳で遠い地方で暗黒料理人ケルススをしていた錬が時々メルロマルクで公務をするようになったのですぞ。
更に数日後ですぞ。
婚約者が……フィーロたんと一緒にエクレアの領地へとやってきました。
突然やってきましたな。
とはいえ来ることは多いのですぞ。
ただ、錬がイヌルト姿で且つ困った様子で来たのですな。
婚約者は難しい顔をして口を噤みながらフィーロたんの背中に乗っております。
「あれ? メルティちゃんだ。お城の方に居るんじゃ?」
「……」
「あれかな? 女王様辺りに俺たちの所の視察を頼まれたとかかな? 何だかんだメルロマルクの治安がまだ戻ってないから忙しいんだろうし」
そう村に顔を出した婚約者にお義父さんが察して声を掛けましたが婚約者は顔を反らしたままなのですぞ。
「えっとねーメルちゃん、しばらくお城に帰りたくないんだってーなんか女王様に会いたくないって言ってるよ」
「ん?」
「家出だってー」
おお、フィーロたんがお義父さんに説明してますぞ。
「ううむ……何やら事情があるようでな」
婚約者と一緒にエクレアが来ましたぞ。
ゾウに仕事を取られて暇なのでワニ男と一緒に修行の稽古を最近はしてますぞ。
「女王も心配するだろうと報告はしておいたのだが……」
「ああそうなんだ?」
ふと、婚約者が家出したいと言っていたループがあったのが思い出されますな。
明確に家出ですかな?
「アトラちゃん達は?」
「んー? フォウルくんとアトラちゃんはお城に居るよー」
「うーん……あの王様の様子や国内の情勢からちょっと不安なんだけどな……メルティちゃん。話をしてくれないかな?」
「……ごめんなさい。今はちょっと話したくないわ」
婚約者は不機嫌とも異なる複雑な顔で口を噤んでますぞ。
「フィーロたーん」
「やー! 槍の人がいるー!」
「ユキちゃーん。元康くんを抑えといてー」
「やりますわ!」
ユキちゃんが何やら手慣れたように俺の腰を掴んで押さえますぞ。
ぐぬぬ……振り払う訳にはいかないですぞ。
「ユキちゃん、離して欲しいのですぞ」
イケメンスマイルでユキちゃんにお願いですな。
「元康様の為に手を放すわけにはいかないのですわ……」
くう……ユキちゃんが俺のイケメンスマイルを堪えていますぞ。
もう一押しをしますぞ。
「なんか元康くんが酷い事をしようとしてる気がするので先手を打ってフェアリーモーフ」
「うわ!? ですぞー!」
お義父さんに魔法でウサウニーにされてしまったのですぞ。
「ユキちゃん。手を離さない様にね。元康くんもしばらくその姿で居てね?」
「わかりましたわー!」
「ぬおおおおおお! ユキちゃん、離して欲しいのですぞー!」
お義父さんにお願いされてしまったのでウサウニー姿を解除はしばらくできませんぞ。
「それでメルティちゃん?」
「……ごめんなさい」
「錬、ケルススは理由わかる?」
「……ああ。まあ……そうだな」
何やら歯切れの悪い返事を錬はしてますぞ。
「知ってるなら教えて欲しいんだけど?」
「これもまあ、ラフミやフィロリアル共の所為なんじゃないか? いや、樹も原因の一つかもしれない」
「フィロリアル様は悪くないのですぞー!」
「いや……アレは、おそらくフィロリアルの所為だろ」
「教えて欲しいんだけど? こういう話をしてたら最近はラフミちゃんやガエリオンちゃんが顔を出す所だけど……」
お義父さんがキョロキョロとしてますぞ。
出てくる様子は無いですな。
「呼んだなの?」
ライバルが姿を現しましたぞ。
「メルティちゃんが家出してきちゃって理由が分からないのだけど知ってる?」
「ガエリオン知らないなの」
「知らない振りですな!」
「消去法でまたラフミなの」
「もはや混乱の原因になってる……暴れすぎだよ。もう」
お義父さんがあきれ果ててますぞ。
「俺もアレはな……関わりたくない。知りたいなら……、確か今日のルートはこの辺りだから、見た方が説明するより早いはずだから行ってこい。そうすればわかる。あいつらが出てこないのもリアクションを期待しているんだろ、間違いない」
そう、錬は国内の地図を出してお義父さんに行くように命じましたぞ。
「よくわからないけど、じゃあ見に行くのが良いのかな。ヴォルフはルフくんと追いかけっこしてたから後で良いか。テオはいたっけ?」
「呼びましたか?」
ウサギ男がお義父さんの声を聞きつけてやってきましたぞ。
「ちょっと調査に行くけど来る?」
「行きます」
「エクレールさん。シオンは?」
「……建築資材の運搬の手伝いをしている」
ゾウの指示で復興の手伝いをしているのでしょうな。
「来るかどうか聞いて置いて」
「わかった。私はメルティ王女を屋敷に案内しておく、どうもしばらくは滞在したいようだ」
「じゃあ、元康くん。行こうね」
「ぬおおお。フィーロたーん」
「やー!」
ユキちゃんが俺を抱きかかえて離さないのですぞー!
そうしてエクレアが婚約者を屋敷に連れて行くと交代にワニ男がやって来たのですぞ。
そんなこんなでユキちゃんに馬車を引かせて一路、錬の指示した地域、村へと行ったのですな。
「ここら辺で何か起こるのかな?」
「思わせぶりな話が嫌だな」
「そうですね。八百長でもあるのでしょうか」
ワニ男とウサギ男がライバルを見てますぞ。
「だからガエリオンも知らねえなの。けどー……なんか似たような雰囲気を知ってる気がするなの」
「心当たりはあるのかな?」
「メルティ王女が家出なんてする場合、家族関連って推測位できるなの」
「まあそうだね。だけどあの両親でしょ? 父親はともかく女王は割と常識人な方だと思うけど?」
「一応、タガが外れるスイッチがあるなの。で、フィロリアル。しかも最近フレオンが見当たらない。となれば――」
と、ライバルが心当たりを述べている所で何やら豚の鳴き声が響きましたぞ。
「なんか悲鳴が聞こえた!」
「治安が悪いのはわかってましたけど……」
「兵士少ないし、治安低下が露骨なの」
「そうだな。復興中の町でも時々野盗が襲撃に来る。幸い自分たちの所は返り討ちにしているがな」
「まあ……中々人員は戻らないよね。三勇教徒を減らしすぎたよ。うん……錬というかラフミちゃんも頑張ってはいるんだよね」
「これが罰なの」
うん。と、お義父さんは頷いてましたぞ。
ラフミは色々とやらかしてますが、そのツケとしてメルロマルクの治安維持を錬の影武者をして行っているのですな。
「ただ、錬は随分と事件が起こるのわかってるみたいな感じだけど……」




