第九十話 「秘密の扉の先」
フランはついに最後の項目まで来た。
「よくここまで行けましたね、最後はパーセプです」
「私たちの主であるメリア様の、些細な動作や言葉、目配せで、私たちがこの後どのように行動すればいいかを見ます」
「たとえばメリア様が[お腹空いた]と言えば、私たちは早急にご飯のお支度をします」
「はい」
「では最初はこれです」
パルセロは指を眉間に当て、次にフランに向かって指を刺した。
「これはメリア様がフラン、あなたに何を伝えたくてしているでしょうか」
これはたしか…。
「私の代わりに行きなさい、ですね」
「正解です、それでは次の問題です」
パルセロは手を組み、腕を上に伸ばすストレッチの形をとった。
「これは何を伝えたくてしていますか」
伸びのストレッチをするってことは。
「肩を揉んでほしい、ですね」
「正解です、ではお次は」
3つ目、今度は瞬時に瞬きを三回した。
「これは何を伝えようとしていますか」
うーんと、なんだっけこれ…。
パルセロはフランが悩んでいると察すると、もう一度同じ動きを行った。
フランが一向に思いつかなそうなので、パルセロは何回も同じ動作を行った。
そして8回目の動作をした後、パルセロは。
「早く回答をしてください、目が疲れてきました」
「——あ、すみません!」
えぇと…瞬きを三回…たしか。
「——トイレに行きたい…?」
「正解です」
「おぉ…! やった!」
「次が最後です、正直これに間違えても合格にはなりますが、どうせなら全問正解を目指してください」
「はい!」
パルセロは、逆立ちをした。
「ん!?」
さ、逆立ち? こんなの見たことない…。
「な、なるべく早く回答をお願いします」
さすがに逆立ちはキツいのであろう、これまでの問題で全て澄ました真顔で動作していたが、逆立ちはパルセロ自身もキツいのだろう。
「——回答は…」
「回答は?」
少し悩んでフランが導き出した答えは。
「——一緒に逆立ちをしよう? ですか…?」
フランの回答を聞いた瞬間、少し顔が緩んだパルセロ。
逆立ちを止め、身なりを整えて正誤判定を行った。
「——えぇ?」
結果は不正解、正解はまったく予想のつかないものだった。
無事に階級上げ試験に合格し、3階級のうちの真ん中の階級に上がれたフラン。
だが、最後の問題の正解は、記憶に深く刻まれるほどの強烈な答えだった。
「ふぅ…少し腕がプルプルしますね」
「フランさん、試験合格おめでとうございます、これで一つ階級が上がりましたね」
「あ、ありがとうございます」
「このバッジを今あるバッジと取り替えてください」
「は、はい」
胸元に取り付けている階級バッジ、白色から水色に変わった、少しだけバッジの装飾も豪華になった。
「明日から仕事内容が少しずつ変わっていきますのでご注意ください、それとフランさんの階級が上がって行う仕事が変わったため、これまでとは違った場所で仕事をしてもらう場合もあります」
「明日の朝、フランさんのお部屋の前に仕事内容が全て書かれた書類を置いておきますので、受け取って目を通しておいてください」
「——はい!」
「それでは私はこれで、フランさんは明日から仕事が変わりますので今のうちに体を休めておいてください」
「わかりました」
パルセロは急ぎ足で屋敷に戻っていった。
パルセロさん、忙しいのに私のためにわざわざ試験をする時間を作ってくれたんだ…。
パラセロさんもためにも、なれたかな?
「——はっ!!」
とにかく部屋へ戻ろう! パラセロさんに休めって言われんだからとことん休まないと!
フランもパラセロ同様、急ぎ足で屋敷に戻っていった。
「ねぇあの子」
「えぇ、フランさんよね」
「あの子新人よね? 入ったばっかりなのにもう真ん中の階級に上がるなんて…」
「才能ね…」
庭園に残された4人のメイド達は、フランに驚嘆し、それと同時に自分がいつ追い抜かされるのかという不安感にもかられた。
* * *
その頃、リヒト、リーブチームは。
怪しげな扉を見つけ、その謎を解き明かそうとしていた。
「リーブ、あの扉だよ」
「あれですか…たしかに何か扉の奥にありそうですね」
「でしょ? 重厚感のある鉄扉、少し錆びている、扉に傷もある」
「これは何か危ない何かが部屋の奥にあるに違いないよ!」
「危ない何かがあるのでしたら行かない方が…」
「まぁそうだけど、もしかしたらあの扉の奥には断片があるのかもしれないよ?」
「うぅーん…」
悩みに悩み、二人は同時に扉へ向かって動き出した。
「ふぅ、開けるよ、リーブ」
「はい、お願いします」
ゆっくりと、扉を開けようとすると。
「君たち、何をしているんだい?」
「「ひっ!?」」
後ろから声がした。
振り向くと、ボサボサの髪、オーバーサイズな白衣、目にクマができている細身の男性がいた。
「君たち、ここに何か用かい?」
「え!? あ、いやー」
「もしかして、入部希望者かな?」
「「——えっ?」」
「この先はオカルト研究部の部室だよ、入部希望者ってことでいいのかな?」
「い、いえ! 違います!」
「そうなのかい? じゃあ何をしにここへ」
「リヒト様…ここただの部室じゃないですかぁー」
「だってここだけ室名札がなかったんだもんー、それに何か雰囲気もあったしぃ…」
「何をコソコソと話してるんだ…用がないなら帰りな、僕は入りたいんだ、そこを退いてくれないか」
「あっすみません!」
リヒトとリーブは廊下へ出た。
男性はゆっくりと扉を開けて室内に入っていった。
「——ん…?」
扉が閉まる瞬間、一瞬だがリヒトの目に欠けた石板の断片が置かれているのを見つけた。
バタン。
「リヒト様、教室に戻りましょう」
「——リヒト様…?」
「リーブ…」
「——はい?」
あれは…石板…。
もしかして…。
「見つけたのかもしれない…手がかりを」




