第八十九話 「階級上げ試験」
きょ、今日は私のメイドの階級が上がるかもしれない大事な日…。
「絶対受かるっ!」
働き始めてからもう半月が経った…。
今日でもし階級を上げれれば、一気に行動範囲が広がる! 絶対に受かって階級を上げて見せる!
—1時間後—
支度を終えたフランはいつものように部屋を出て、廊下を歩く。
だが今日のフランは、試験のことで頭がいっぱいだった。
えぇと、試験の内容は6種類の実技項目を全て合格する必要があって、その中には私の苦手な植木の手入れを項目に入ってる…。
ふぅ…とりあえず不安要素は植木の手入れだけ!
フランは両頬を叩き、気合を入れた。
「まずは試験の場所…あ、外か」
試験場は外にあった、フランはてっきり一項目毎に試験場の場所が違うと思っていたらしく、実際は外の庭園にて全て同じ場所で試験を行うらしい。
「この庭園かな」
「すみませーん、階級上げ試験をしに来ました、フラン・フィスティアです」
「来ましたね、では始めていきましょう」
「パルセロさん!」
「試験官は、メイド長である私が合否を判断します」
「すみませんが私も時間がないので、急足で説明をいたします」
パルセロは人差し指を出す。
「試験内容を簡単に説明します」
「項目数は全6種類、すべての項目はそれぞれ1回だけミスが許されます」
「2回以上ミスをすればその時点で試験は終了となります」
「項目は1から順番に、ハウス、ガーデン、ケアレス、パーラー、ポスチャー、パーセプに6種類となります」
「大まかに説明するなら、ハウスは家事、ガーデンは植木の手入れ、ケアレスはマナー、パーラーはお茶の入れ方、ポスチャーは姿勢、ポーセプは観察です」
「説明は以上です、何か質問は? なければすぐに試験を始めます」
「——ないです」
「では、始めましょう、最初はハウスです」
パルセロは指を鳴らし、木の背後から4人のメイドが現れた。
4人のメイドのうち、それぞれ手押しでミニキッチンを、食材を、汚れた服を、埃まみれの本を持っている。
「キッチンはここに、食材はそこに、服と本はそちらにおいてください」
一気に3つもやるのっ…?
「準備が整いました、今からフランさんにやってもらうことは、まず料理を、このバケットにある食材を使って好きな料理を作ってください」
「作る料理はなんでも構いません、調味料はミニキッチンの方にあります」
「では、始めてください、なお制限時間は10分です」
え! 制限時間あるのっ!?
「え、えぇと〜」
急がなくちゃ、食材は…市場に置いてある普通の食材だけ。
調味料の数は少なめ。
でも! 私はこの手の食材なら作れる料理がある!
「よっ、ほっ、はぁっ!」
うおぉぉぉぉ!!
「フランさん、すごい気迫ですね」
「作る料理は大方予想はつきますけどね」
—8分後—
ふぅ、なんとかできた〜。
「できました!」
「これは——」
「炒め物です!」
予想通り…見た目は問題なし、あとは匂いと味…。
「ではそこのお二人も一緒に実食しましょうか」
「え、わ、私もですか?」
「私も…?」
「えぇ、複数人いた方がより正確な判断ができます」
「それでは実食」
パルセロ達3人はフランの作った炒め物料理を一口食べた。
見た目、匂い、味、全て悪くなかった。
ん、特別美味しいと思うほどではないけれど、普通に美味しい部類ね。
「ん、とりあえず料理は合格よ」
「本当ですか!? よかった〜」
「ではお次に洗濯と掃除をやってもらいましょう、これで判断することは”正しいやり方”です」
「それではこれを」
パルセロはフランに石鹸のような塊とタオル2枚、を渡した。
「それでは始めてください、制限時間は同じく10分です」
よーし! 洗濯や掃除は得意です!
何回リヒト様のお部屋を綺麗にしたか。
この服の汚れ…これを綺麗にする方法は〜っと。
フランは手慣れた手付きでタオルで服を擦っていく。
たった4分で服の汚れはほとんど目立たなくなった。
「す、すごい…」
お手伝いに来ていたメイドのうちの一人が小さく呟いた。
「洗濯は文句なしの合格です、まさかたったの4分でここまで汚れを落とすとは」
「えへへ…ありがとうございます」
「ではもう一つの、この本を綺麗にしてください」
「あ、はい」
本は見事に埃をたくさん被っており、タオルで擦るだけでは落ちなさそうではあるが。
「ふっ、ふっ、ふっ!」
—5分後—
「ふぅ…終わりましたぁ」
本は表紙の文字がはっきりと見えるほどまで綺麗になった。
これにはお手伝いメイド達は4人揃って驚いた。
本もここまで綺麗に…。
「ハウス、合格です」
「やったー!」
「ではお次、ガーデンの項目です」
4人のうち二人はフランの背丈ほどある植木を運んできた。
もう二人はハサミなどの道具を。
「私が指定したようにこの植木を切ってください」
「は、はい」
「それでは始めます、最初は下の方にある枝を」
パルセロは一枚の紙を取り出してフランに見せた。
「こちらになるように切ってください」
うーん…。
「——ん…?」
紙を見る、植木を見るを交互に繰り返し、少しずつ切っていった。
その後、植木の項目は1ミスでギリギリ合格した。
あとのケアレス、パーラー、ポスチャーは危なげなく合格、そして試験は最後のパーセブに。




