第九十一話 「不吉な予言」
場所は変わって魔防軍本部、本部研究施設に移る。
本部に帰ったグラナトとフユウは、インフェルノドラゴンの体内から見つけて持ち帰った真紅の指輪を、専門の研究部隊に明け渡して結果を待っていた。
「さてフユウ、この後暇かな?」
「ん〜? まぁ暇かな」
「暇ならちょっと付き合ってくれ! いいとこがあるんだ」
「ん〜? どんないいとこ?」
「まぁまぁ、とりあえずついてきてついてきて」
「はいよ〜」
フユウはグラナトの後ろを追い、ついて行った。
研究施設の数ある裏口の一つから外へ出て、どんどんと研究施設(本部)から離れて行った。
やがて森の中へと入って行った。
「どこに向かってるのさ」
「最近見つけたんだが、すごく綺麗な場所でな、フユウにも見せたかったんだ」
「旧友であるフユウ、お前にな」
「綺麗な場所ね〜」
旧友か、懐かしいな。
しばらく森の中を進んでいくと、急に開けた場所に出た。
開けた場所の中央には小さな滝壺があり、上から水が結構な水量で流れていた。
「意外といい場所だね」
「そうだろう?」
「ここで少し休憩しないか? インフェルノドラゴンとの戦闘で疲弊しているだろうと、シェイン様から俺たちは1日の休みを貰っただろうう?」
「そうだね」
「今はその休みなんだから、少しの間魔防軍を離れても大丈夫だろう」
「それに、そんなすぐにあんなインフェルノドラゴンのような天災級のモンスターが現れることもないから二部隊の隊長が抜けても大丈夫だろう!」
「はっはっはー!」
「それもそっか〜」
フユウは地面に腰掛け、一息つく。
「懐かしいな〜」
「懐かしい?」
「うん、ずっと前にも、こんな感じで二人で森の中で話してたな〜って」
「グラナト、あの約束って覚えてる?」
「あの約束?」
「ほら、18の頃に約束したじゃん」
「あぁー、あっ! あれかっ!」
* * *
「「二人で世界を平和にしような!」」
「グラナト、俺らは絶対に世界を平和にできる力がある!」
「あぁ、俺らなら出来る! 絶対に!」
お互いの拳を握り合う。
「仕事先がお互い違くて離れ離れになるけど、絶対」
「あぁ、俺らの絆は絶対」
「「引き裂かれないっ!!」」
ハイタッチをする。
* * *
「あの時の約束、平和にすることはまだ叶えれてないけど、お互い平和に出来る仕事には就いたね〜」
「あぁ、そうだな」
「約束したあの時、我は20歳で、お前は18歳だったな」
「それが今や、グラナトは62歳、僕は60歳、もうすぐ定年じゃない〜?」
「お前ももう60なのか、60でそのキャラは少しキツくないか?」
「——気にしないで」
「何か事情があるのか?」
「——気にしないで」
「い、いや、だが気になるものは気にな——」
「気にしないで!!」
「お、おう…」
フユウのいきなりの気迫に一瞬たじろいでしまったグラナト。
「——もう少し、ここでゆっくりしてようよ」
「あぁ、そうだな」
「お互い久々にこんなに話したよね〜」
「そうだな、積もる話もあるんじゃないか?」
「そうだね〜」
魔防軍本部から少し離れた森の中、二人しか知らない秘密の場所で、二人は40年の月日で積もりに積もった話を、お互いに夕暮れまで話し合ったのだった。
* * *
—翌日—
「ジャスミン、この書類ってミグルド王国の周辺山間部の環境についての書類だよな?」
「はい、合っています」
「それと、ミグルド王国は現在、国の離れの方で謎の苔が大量繁殖しているようです」
「苔が?」
「はい、現在苔の繁殖時期は終わっています」
「なので季節外れの繁殖です」
「ん〜なるほど〜、モンスターの影響も考えられるか、一応5名ほど戦闘員を連れて行かせろ」
「分かりました、伝えておきます」
「それと、こちらの資料なのですが」
「ほう、これはぁ……ファバサーグ王国の砂漠の緑地化に関係する資料か」
「はい、現在は[徐々に緑地化ができている]とのことですが、砂漠に生息しているモンスターが緑地化に激怒し、群れを成して砂漠の周辺にある都市で暴れ回っているようです」
「現在ファバサーグ王国の兵士達がなんとか食い止めてるようですが、緑地化プロジェクトに協力している私たちも兵を出して協力しろという要請も来ています」
「なるほどぉ〜、じゃあ30名ほどファバサーグへ遠征させよう」
「分かりました、それで次はこちらなんですけど…——」
ドンッ!
「ちょっと待てぇい!」
机を叩くグラナト。
「はい?」
「我の仕事が、全然進まないじゃないかぁぁぁ!!」
「そんなこと言われましても、これまでグラナト隊長に話した案件は全て、グラナト隊長が私に投げた案件ですよ」
「グラナト隊長が、私に! 面倒だから投げた案件ですよ!」
「あ、あぁ…」
「——すみませんでした…」
「面倒だからと言って、案件を私に投げるのはやめて欲しいんですけどね、私にもやるべき仕事はたくさんありますので」
「あれもこれも、全てグラナト隊長が有無を言わずに案件を引き受けてしまうからで、グラナト隊長はど——」
「——すみませんでした…」
ジャスミンの説教は、20分も続いた。
説教される直前にグラナトがやっていた期限が間近に迫っていた案件は、遅れて出すことになった。
—翌日—
とある日の昼下がり、いつも通りグラナトは書類に目を通し、ハンコを押したり書類を整理したりと、立派に仕事をしていた。
ところが。
「グラナト隊長! 緊急です!緊急招集がかかりました!」
「誰だ君は!!」
「第六部隊、司令塔補佐のアカツキです! 」
「あぁ、君か、それで要件が緊急招集と?」
「はい、招集内容は[やばい予言をしてしまった]とのことです」
「急にグラナト様に伝えるようにと言われまして、私も伝えることは今言ったことしか…」
「おそらくは、それだけ急いでいるんじゃないでしょうかっ…!」
予言、ということは。
七賢法<未視の賢法>のラナエル・エーテル様の予言かっ!?
「わかった、すぐ行こう」
「ジャスミン、この仕事の続きを頼んだ」
「分かりました」
グラナトは大急ぎで走って指定された招集場所へ向かった。
七賢法、ラナエル・エーテルの予言は99%当たると言われている。
現に自然災害や強力なモンスター、流行りまでも的中させている。




