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第八十七話 「真紅の指輪」


 そして、インフェルノドラゴンの解体作業をしていた二人は。


「傷口から切っていったから結構形が歪だな」

「まぁ、大丈夫よ、回収隊が来るまで待とっか〜」

「そうだな」


 ん、なんだあの光は。


「何か光ってるぞ」

「ん〜どこ〜?」

「ほら、あそこ」

「ん〜?」


 うわ、ほんとだ。


「一旦光ってる場所だけ氷溶かすね〜」

「あぁ、頼む」


 フユウは器用に光のある凍った部分だけを溶かしていった。


「なにがあるんだ? 一体」


 溶けた所を覗いてみると。


「これは…指輪?」


 見たことない、真紅色の宝石がついてる指輪だな。


「おぉ、なんだこれ」


 突然指輪の宝石部分から光の線が放射された。

 光の線は、ある一方の方向を常に指していた。


「ん〜? なに、その光〜」

「分からない、なんだこの光は、どうやって消せるんだ」


 指輪を弄ってみると。


「あ、消えた」


 裏側に小さな突起があったな、どうやらこれで光のONOFFができるようだな。


「あとはこの光のことだが…」

「多分その光、辿っていったら何かがある感じじゃない〜?」

「なるほど、その説はあり得るかもな」

「うんうん、それじゃあその指輪」


「本部に持ち帰って、研究機関に解析してもらおっか〜」

「——そうだな」


「やれやれ、しかしまさかインフェルノドラゴンが出るとはね〜」

「あぁ、そうだな」

「グラナト、ずいぶん深傷を負ってるね、大丈夫?」

「今言うことか、大丈夫だ、ちゃんと帰れるさ」

「ならいいけど〜」


 その後、インフェルノドラゴンの肉や鱗、その他諸々を回収するための回収隊が到着した。


 フユウは[2時間も待ったよ〜? 遅くないー?]と少し隊員に当たっていた。

 隊員は[すみません。 山を迂回していたもので]などを言って、弁解していた。




 * * *




 一方、魔防軍チームが危機を乗り越えていた最中、こちらでも危機が今まさに起ころうとしていた。


「うぅ…」



 フランは、 今絶賛やらかし中だった。


「す、すみません! パルセロさん!」

「まったく、どうしてあなたはこの仕事だけ上手くこなせないんですか」


「——私にも分かりません…」

「分からない!? それじゃあ改善のしようもないじゃない!」

「何か、ほら、ないの? 体調がすぐれないとか、メイドになる前のトラウマとかで上手くできないとか」

「うーん…」


 フランは、植木の手入れをしていた。

 フランは試験対策時の勉強やレッスンでも、アークストン家で働いていている時も、一回も植木関連の、ましてや植木の手入れ仕事をやったことがなかった。


 そのため、フランにとっては一寸の狂いも許されない超細かく葉を切ったり枝を切ったり、草や葉の形を綺麗な形に整えたりすることは、フランにとってはまったく理解ができない難儀な事だった。


 だがフランは。


 うぅー、言えない…ここで植木の仕事をやったことないって言ったら出世の道が遠くなっちゃう…!


 フランは出世して上の階級に行き、少しでも屋敷内をうろうろできるようにならなくてはいけなかったため、こうして嘘をついたりとマイナス部分を出さないようにしていた。


「あぁ、えぇっと、その」

「うん、何かあるのっ?」


「え、えぇと…」


 あ、蝶だ。


「——あっ! 虫! 虫が怖くて!」

「虫?」

「は、はい! 虫がいつ飛び出してくるか分からないので怖くて手元が震えたり、植木に近づき難いんです」

「虫…虫が怖い?」


 うぅ、お願い! 納得してぇー!


「——なるほど、そう言う理由があったのね」


 ほっ、良かったー。


 フランは虫が苦手ではない。

 そしてメイド長であるパルセロは何にでも信じてしまう性格なため、あまり疑うことをしないのだ。

 そして常に無表情ゆえ、パルセロに慣れていない人からは少し怖い人、と噂されていたりも。


「虫が苦手だったのね、なら防護服を——」

「あ、いえ! 防護服を着ていても、虫が出て来たら足が竦んじゃって…」



 嘘である。虫が急に飛び込んできても、フランは動じずに手で振り払っているのだ。



「そうなのね、じゃあ他の方法を——」

「あ、できれば植木のお仕事はふらないでくれませんか…?」

「うーん、出世を考えてないのだったら今後この仕事はふらないようにできますが…」


 うぐっ…そ、そんな。


「——ます」

「え? もう一度言ってくれませんか? よく聞こえなかったので」


「——やります、やります! やらせてください!」

「おぉ、急にやる気になりましたね」

「でも、虫は——」

「大丈夫です! もう克服しました!」

「そ、そうなの? なら明日も頑張ってくれる?」

「はい! 頑張ります!」


 リヒト様のため、手がかりを見つけるため!

 なんとしてでも植木の仕事も完璧にこなしてみせるっ!!


 この日、フランのやる気がいつも以上に上がった。


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