第八十五話 「伝説の手がかりを」
「我は出血のしすぎで貧血だ、少し息を整える時間をくれないか」
「分かりました! 時間稼ぎ任せてください!」
「そういえば、バルザ君は…」
「バルザは移動に体力使って、しばらく出てこないです」
「そういえば、第一声の時、カッコつけてた? あと、隊長は付けなさい」
うぐっ…。
「は、はい…」
「そうか、わかった!」
あぁ! い、行っちゃった。
悪い印象持たせちゃったかなぁ…バルザって普段あんな感じじゃなかったっけな?
って、違う違う! グラナト隊長、あの時俺だって分かってたじゃん!
じゃあわざわざバルザのまねする必要なかったじゃん…あぁ恥ずかしい。
「グオォォォォォ!!」
「——ふぅ…」
気を取り直して。
「さてと、インフェルノドラゴンと戦うのは初めてだけど、頑張るか!」
まずは様子見で。
「ウォーターアロー!」
遠距離で攻める!
「えい!」
ジュゥゥゥ…。
「ダメかぁ、水属性なら少しは効くかなって思ったんだけど」
「グルルルル」
攻撃してきそうだな、一旦離れよう。
「グオォォォォォ!!」
「はぁ?!」
「グルルルル」
くそ、なんだよ今の、広範囲攻撃とか無しだろっ!
盾で防御はできたけど、それでもこの負傷…やばいな、天災級って。
さっきの場所から結構離れた森に落ちたか、インフェルノドラゴンはあの場所から動いてない。
奇襲を仕掛けたいが、俺の手持ちであれに傷を負わせれるのか?
くそぅ、木に背中ぶつけたからくそ痛ぇ。
こうなりゃヤケだ! 遠くから一気に大量のレベル5の魔法を撃つ!
それしかねぇ!!
「ボルケニクブラスト! ストームロイド! ライトルツ! ブリザードエッジ! テンペスタール!」
5種類基本の全属性のレベル5の魔法だ! これであの胴体に、風穴を開けてやる!
魔力がかなり減るが、しかたない!
「おらぁ! いけっ!!」
ドドドドド…。
「グルルルル、グオォォォォォ!!」
背後からの強力な魔法攻撃、不意打ちの大技。
「グオォォォォォ!!」
炎のブレスを吐き、対抗したがあっけなく敗れた。
「グオォォォ!!」
巨大な爆発と共に、インフェルノドラゴンの咆哮が聞こえた。
あたり一体は土煙に覆われ、視界が遮られる。
ど、どうだ、やったのか?
「か、風が来た…」
てことは…つまりは…。
「グルルルル…」
そういうことですよねぇぇぇ!!
インフェルノドラゴンの胴体の鱗が少し剥がれ、血が出ていた。
間違いなくダメージは負わせれた、だがしかし。
「グオォォォォォ!!」
翼を広げた、やる気になっちまったかっ!
「——おい」
「グオォォォォォ!!」
どうするか、またあれを撃ったら魔力は半分以下になる…。
いや、余計なことは考えるな! 今はただ、グラナト隊長が来るまでの時間稼ぎを!
「——おい!」
ん?
「——おい、もう体力は回復した、変われ」
「バルザ? もういいのか?」
「回復したって言っただろ、さっさと変われ」
「わ、分かった!」
「グルルルル」
「ふぅ、さてとやるか」
「まずは一発、ありったけの魔力を注いだラヴァシスだ」
「グルァ!?」
あれ、倒れたな、意外とシラトリのやつダメージ与えてたのか。
「グルルルル、グオォォォォォ!!」
魔防軍第四隊長のシラトリ。 彼は二重人格者だ。
だが彼の二重人格は同一人物ではあるが正確、言動、名前までもが違う存在なのである。
表の顔であるシラトリは社交的、穏やか、頼りになるなど言われている。
裏の顔であるバルザは強い、やばい、上の人間などと言われている。
武力や支配はバルザが、交友や外交や日常生活ではシラトリが役割を担っている。
普段魔防軍にいる時はバルザなため、あまり関わりが薄い人たちはバルザが二重人格者であることすら知らない。
そんなバルザは。
「おらおらぁ!」
常に全力戦闘、最初からレベル5の魔法しか使わず、段々と力のギアを上げていく人達とは違う。
そのため、強敵と戦った後は、必ず魔力がガス欠になるのが表のシラトリの悩みの種でもある。
「おらぁ! 次はこれだっ!」
「グルァァァ!」
くそ、さすがに強い。
このままだと魔力切れするな、魔力切れすると毎回シラトリに叱られるからな、もうあの長い説教は勘弁だ。
聞こええてるぞバルザ。
「——っち」
おいシラトリ、グラナト隊長の気配が近づいて来てる、グラナト隊長が戻って来たら俺らでアレをするぞ。
アレをすればパワーアップする、短期決戦用だがやるしかねぇ!
え、アレ? わ、分かった。
「グオォォォォォ!!」
「待たせた、なんとか止血できた」
「待ってましたよグラナト隊長」
「その声はバルザ君か、心強い」
「——って、なんだその姿は?」
「シラトリと一時的に合体してるんです、急いで倒しましょう!」
「待て、我ら二人で戦う必要はない」
はぁ? どういう。
「増援が来たぞ」
「待たせた! 第五隊長、リフォン・ルシフェスが助太刀に来ました!」
「同じく助けに来た、第二隊長のフユウで〜す」
増援! 第五隊長のリフォン隊長、フユウ隊長も!
「これで戦力は十分だろう!絶対に倒すぞ!」
「「おう!」」
「それじゃあグラナト、時止めやっちゃって〜」
「すまないフユウ、インフェルノドラゴンには時止めが効かなかった」
「ん〜そっか〜、確かに時止めが効いてたら、そんなに傷は負わないよね〜」
「面目ない」
「いいよいいよ〜、それじゃあ、僕が足止めするから、3人でどデカい攻撃しちゃってね〜」
「それ、よいしょ〜!」
「グルル——」
こ、凍った…。
え! 凍った!? あのインフェルノドラゴンが!?




