第八十三話 「想定外」
「はぁはぁはぁ!」
「お、リヒトとリーブか、遅かったな〜あと少しで授業始まるぞ〜」
「「ま、間に合った〜」」
* * *
はぁはぁはぁ、はぁはぁはぁ!
「なんとか上に来れた! あとは来た道を戻るだけだ!」
追っては来ていないな。
「はぁはぁはぁ、、ふぅ…」
はぁ疲れた、全力で走る方がさっきの先頭よりもよっぽど疲れたわ。
「歩いて戻ろう…」
それにしても、まさかインフェルノドラゴンがいたなんて…。
実際に見たことも、戦ったこともなかったが、いざ対面して分かった。
ドラゴンの最上位種は隊長でも苦戦すると言われていた理由が分かった。
いや、今回戦ってみて痛感した、あれは隊長でも歯が立たないほどだ。
第一隊長や第二隊長ならいけるか…? 第三隊長からは無理だ、歯が立たなくなる,現に我でも歯が立っていなかった。
あの鱗が硬すぎる、あれの強度を超える火力を持っていないと傷すらつけられない。
本当に化け物だ…数が少ないのが救いだな、あんな化け物モンスターがたくさんいたら、世界は終わっていた。
「はぁ、はぁ、本部に帰ったら作戦を立てなければ…!」
* * *
「さて、魔法学において重要なのは——」
この説明、エリスから聞いたな…今やってる内容も全部知ってるし。
知ってることを50分も延々と聞かされるって、結構辛いな。
学生の頃、1クラスに必ず一人はいた授業中に寝ていた奴らって、みんなこんな感じだったのか。
みんな頭が良くて内容も分かっていて退屈だったから寝ていたのか、謎が解けたぞ。
だからと言って寝るわけにはいかないな、寝たら成績下がるし、入学して早々寝てたらクラスメイトからの印象も下がってしまう。
ここはノートに、バレないように落書きでもして、暇を潰すか。
「ん、リヒト様、何をしているんですか」
「ん、落書き」
「ら、落書き!?」
「ん? リーブさん、どうかしましたか?」
「あ、い、いえ! なんでもないです」
「では話を戻しまして、こちらの魔法の起源は遡ること——」
「リヒト様、落書きなんてしてもいいんですか?」
「まぁ、これ別で買ったノートだし、大丈夫だよ」
「そ、そうなんでしょうか…」
リヒト様、何を書いているんだろう。
これは…なんだ? ドラゴン? スライム?
ふむふむ、どれどれ〜。
落書きで書くことといえばそう! 男子なら誰もが一度は書いたはず!
「よーしできた〜、リーブ見て〜」
「はい」
こ、これは…なに?
「リ、リヒト様、これはなんでしょう?」
「これはね〜、僕が作ったオリジナルのモンスターだよ〜」
「オ、オリジナルのモンスターですか…」
「これは…?」
「バスタイガーだよ」
「これは…?」
「イビルヒドラ」
「これは…スライムですか?」
「そうだね」
ど、どうしてスライムを…。
「そこはメタルスライムだったり、コンスライムとかにしないんですか?」
「あぁ、なんか色合いが普通のスライムの方があってたんだよね」
「なるほど」
リヒト様、こう言うこともする人だったんだ。
僕はこう言うのやってこなかったけど、面白そうだなぁ。
オリジナルのモンスターを作る、でも絵心がないと何を書いてるのかが他の人に伝わらない。
面白そうだけど難しそうだな、僕絵心ないし。
「すごいですね、リヒト様」
「ありがとう〜」
二回目の学園生活はリヒト様と一緒。
さっそく前の学園生活じゃ知ることができなかったことが知れた。
やっぱりリヒト様は、僕の生き方を教えてくれる。
この絵描きも、きっと僕の人生に何か影響を与えてくれるんでしょうね。
「こちらこそ、ありがとうございます、リヒト様」
「あぁ、うん」
な、なんで急にありがとうって言われたんだ、俺何か言いことしたのか?
ただ落書きしてただけだけどな。
* * *
リヒトとリーブがレグラス学園で授業をしている間、魔防軍本部にて作戦を練っていたグラナト、ジャスミン率いる第六部隊にとんでもない情報が飛び込んできた。
「グラナト隊長! 緊急事態ですっ!」
「何かあったのか?」
「そ、それが! 我々が捜索しているあの山が、噴火を起こしました!」
「——なに?」
あの山が…噴火!? インフェルノドラゴンはどうなったんだ?
まさか、インフェルノドラゴンの仕業か…?
いやいや、そんなことよりも。
もしも破片があるのなら、噴火で破片は…破片は…。
「様子を見てくる…」
「き、危険ですよ!」
「遠くで見るだけだ、見てくるぞ」
「ジャスミンが来たら伝えておいてくれ」
「は、はい…分かりました」
さて、この丘を登ったらあの山の様子が見えるな、果たしてどうなっているか。
「うぅ、暑さがここまで来ているのか」
様子は、ひどいな。
マグマが流れて、木々が全部飲まれている。
赤い山がさらに赤くなったな。
「あの洞窟は…見えないな、マグマに飲まれている」
状況が掴めない以上、これ以上ここにいても無駄だな。
帰ろう、暑くて敵わん。
「あ、グラナト隊長が帰って来ました!」
「グラナト隊長、お疲れ様です」
「ジャスミンか、帰っていたのか」
「はい、あの山はどうでしたか?」
「ダメだった、マグマが収まるまで捜索は出来ない、それにマグマが収まっても火山ガスなどに耐性がない人は捜索に行かせないことにする」
なぜいきなり噴火したんだ、噴火の予兆なんて聞いていなかったのに。
グラナト隊長が直接目で見て状況を確認してくれたんだ、おそらくはあの洞窟も、マグマに飲まれているんだろう。
「分かりました、隊員にガス耐性があるか聞いて来ます」
「ありがとう」
どうするか…破片の件が頭によぎってくる。
定期的にあの山の様子を見ることにしよう。




