第八十話 「瘴気の洞窟」
「ジャスミン副隊長、一ついいでしょうか?」
「どうした?」
「私、今回が初の捜索任務なのですが、この山はどうしてこんなにも赤いんでしょうか?」
「草も木も、地面や岩も全てが赤いです、赤い岩や草なら知っていますが、あるもの全てが赤い光景は目にしたことがないです」
「そうか、実は訳は私も知らないんだ」
「活火山だから、地質の関係、昔に何かが起こったなど、いろんな説が出ているがこの山のものが赤い理由は誰も知らないんだ」
「だが、やはりこの世界は何が起こるかわからない、だからこそ私はある一つの説を信じている」
「そ、それは?」
「我々が手に負えないほどの""強力なモンスター""だ」
「環境を変えてしまう力を持つ強力なモンスターは実は結構いる」
「ドラゴン系統の上位種なんかそうだ、奴らの力は言葉で表すなら天変地異だ」
「インフェルノ、アビス、テンペスト、あとはボルト、クリスタル」
「ドラゴンの最上位種は天変地異の言葉通りの荒れ具合だよ」
「魔防軍の隊長でも苦戦するほどの強さなんだ、もしもそんな奴らがこの山にいたら…」
「——まずいことになる…と」
「その通りだ」
ジャスミン率いる捜索隊は、広大な山の中、道なき道を歩き続けること約2時間。
捜索隊は大きな渓谷に当たってしまった。
「渡る手段がなさそうだな」
「はい、橋などもないようですし、飛べるものだけ先に行きますか?」
「そうだな、悪いが飛べる人はどのくらいいるか?」
数人が手を挙げたが、過半数は手を挙げていない。
「過半数は飛べないか…よし、君がそっちの統括を任せるよ」
「私ですか、任せてください」
「よし、では飛べる者はついてこい!」
ジャスミン率いるチームは、魔法で飛んで渓谷を越して先へ行った。
飛べないチームは渓谷を避け、渓谷沿いを進んでいった。
ジャスミンチームは渓谷を飛び越えて近道をし、目的の洞穴へどんどん進んで行った。
「ここら辺は森が深い、はぐれないよう気をつけるんだ」
「「はい!」」
順調に森の中を進んでいき、しばらくすると目的の洞穴が見えてきた。
「あったな」
「中を確認してみます」
さて、これがホンモノならいいが。
「えーと、ここは…この先には…」
「お待たせしました! ジャスミン副隊長、ご報告があります」
「この洞穴はどうだったんだ?」
「この洞穴もハズレでした」
「ハズレか…いつになったらアタリが来るのか」
「ジャスミン副隊長! ご報告がありますっ!」
「この洞穴の付近にホンモノと思われしきものがっ!」
「なにっ!?」
洞穴があったのはハズレだった洞穴の北側にあった。
「これは…」
何かがあるな、アタリかもな。
たしかにこれは…。
「注意しろ」
中も赤いか…そりゃそうか。
それにしてもこれは酷いな…。
瘴気、神経が少し麻痺するほどの…。
「気をつけろ! この洞穴、いやこの洞窟は普通のものとは違うぞ!」
「このガスはまずい、私が奥へ行くから君たちは入り口で待っていろ!」
「で、ですが!」
「このガスに耐えられるのか!」
「——くっ…」
「分かったら入り口へ! 早く!」
「「は、はい!」」
やっぱり…瘴気を吸って思考力と判断力、他にも色々と鈍っているな。
身体能力も低下している、まともに動けるのは私一人だけ。
やはり、やっぱりこの洞窟には…。
「——何かがある…」
奥に行ってみよう。
少し行くと、急に洞窟内が湿ってきた。
ずっと一本道だ、この瘴気はどこから出ている。
この先は少し広くなっているな、どれ——。
「——こ、これは…」
なんだこれは、至るところから吹き出している。
それに色が濃い、あの穴から出ているやつを吸えば、私も危ない気がする。
奥へ行きたいが、穴のそばを通らなければ奥には進めない。
「ぐおっ、くっ…!」
近づいただけで意識が飛びそうにっ…!
くそっ、これは非常にまずい、せっかく見つけたアタリなのに…。
仕方ない、ここは一旦引き帰そう。
戻って隊長に報告をして後日また来よう。
この瘴気に、妙な気配、、一体この奥には何があるんだ。
少しするとジャスミンが洞窟から戻ってきた。
「あ、ジャスミン副隊長が戻ってきたぞ!」
「ジャスミン副隊長! 洞窟の奥はどうでしたか!」
「少し進んだら非常に濃いガスが充満していた、私でも近づくだけで意識を失いかけた」
「な、ジャスミン副隊長でも?」
「あぁ、間違いなくこの洞窟には何かがある、奥に行けばもしかしたら——」
バタッ
「あっ、ジャスミン副隊長? ジャスミン副隊長!」
「ジャスミン副隊長が倒れたぞ! 急いで本部へ戻るぞ!」
「至急別のチームへ連絡しろ! 本部へ戻るぞ!」
「「はいっ!」」
急に意識を失い、地面に倒れたジャスミン。
目覚めたのは3日後だった。
体には僅かにガスが充満していた、ほんの少ししか吸っていなかったのに、副隊長の意識をなくすほどの瘴気。
公に洞窟のことが広まることはなかった、だがジャスミンが寝込んでいたこともあり、捜索は一時中断となってしまった。
「元気か、ジャスミン」
「グラナト隊長、はい、おかげさまで」
「話は聞いたが、本当なのか? 君が意識を失うほどの」
「はい、私も急に意識がなくなったもので、あの時のことがあまり思い出せないのですが…」
「おそらくは、隊長でもあの瘴気を吸えば、無事では済まないかと…」
「なるほど、分かった」
「隊員を洞窟の奥へ一緒に連れて行かなかったのは正解だ、いい判断だ」
「グラナト隊長…」
「明日、我が行こう」
「し、しかし…!」
ジャスミンはかなり体力も、精神力もある。
よほどのことじゃ意識を失わないのに、それだけ強いもの。
「大丈夫だ、いざとなれば」
「——副隊長が、隊長の代わりになるんだ」
「——は、はい…!」
「てことで、早めに回復してくれよ〜」
「分かりました! お気をつけて!」




