第七十八話 「フランの面接」
淡々と面接が進んでいく。
最初に志望動機、その後はメイドになる上で重視していることなど、事細かに聞かされた。
「では最後に、あなたの尊敬する人か、好きな人の思いを聞かせてください」
「尊敬、好きな人…」
「はい、どれだけ好意のある人に対して想いが強いのかを知るための質問です」
「どれだけ思いを連ねても構いません、好きなだけ思いを明かしてもらえると」
「じゃ、じゃあ…」
私の…。
「私は、アークストン家という貴族の末っ子、アークストン・リヒト様のことが好きです」
アークストン家、聞いたことがある…たしか魔防軍の隊長の家…。
でもリヒトっていう人は聞いたことがないな、その家系の偉い人なのか。
「すぅ〜」
「まず、私はアークストン・リヒト様のことを今からリヒト様と短くして言わせていただきます」
「まずリヒト様を語る上で覚えていて欲しいことは、リヒト様は健気ですごいお方だと言うことです」
「リヒト様は朝起きるとまずはじめにベッドから降りてうがい、顔を洗う、シーツを直して洗濯かごに入れるなど、5歳の時点でそれが全部できていたんです! 通常じゃありえないんですが、リヒト様はそれをやっているんです、その時点でリヒト様は他とは違う何か特別な力があります」
「そして、それが終わったら専属メイド、従者を呼びます」
「ですが、毎回呼ばれた後に行くと毎回リヒト様は自分で身支度を済ませているのでメイドの仕事が奪われてしまいます、なのでリヒト様の専属メイドはリヒト様が呼ぶよりも前に部屋の前に着き、部屋の中の音をよく聞いて着替えのタイミングを見極めなくてはいけません」
「そこで私は思ったんです、これってリヒト様がメイドが成長するためにわざとしているんじゃないかと」
「わかっています、そうじゃないと、ですがリヒト様は他とは違う何か特別な力を持っているお方です! 普通じゃ考えもつかないことを考え、やっている可能性もあると!」
「ですがメイドは毎朝リヒト様が今何をしているのかわかっていませんでした」
「それ以外にも、リヒト様は色々なことに興味を持って色々なところに行ってしまうので大変な一面もありました」
「なので元々いた専属メイドはみんなただのメイドに戻るか、別の専属メイドの方に行ってしまいました、ですが一人だけはめげずに、大好きなお方に尽くすために仕事を続けています」
「朝はリヒト様のおはようボイスで起き、起きた瞬間に神様に祈り、身支度をして急いでリヒト様のお部屋の前に行って待機します」
「たまに寝坊したり、夢中になっていたりするとリヒト様の身支度が終わるまでにお部屋の前で待機ができない時もありますが…それでも毎日リヒト様の着替えをお手伝いするため、リヒト様の顔を誰よりも一番に見るために頑張って早起きして身支度しています」
「それで私は、早起き早仕度を身につけました」
「他にもリヒト様にはたくさんの魅力や尊敬する部分があります! 私の大好きな人ですから!」
「リヒト様はすごく努力家なところもあります! 面倒くさがりながらもやることはきちんとやる、ですが本当にやりたく無い時は部屋に篭っちゃったり論理的に話していい負かしたりしていましたね」
「子どもなのにそういうことが出来るの、尊敬できます!」
「そういえばリヒト様のことが大好きな人はたくさんいるんです! 私はその人たちに負けないよう日々鍛錬しているんです」
「リヒト様の日頃の行動パターンを把握して、先読みする」
「そして、1秒でも早くリヒト様の変化に気づけるように、私はリヒト様の姿を毎日起きた時に昨日の夜の時点のリヒト様の姿を写したポスターを見て起きます」
「夜、寝る前は一日あって何かリヒト様の身に何か変わったことがあればノートに記録して、寝る前には一番お気に入りのリヒト様の写真を見て眠ります、こうすることで朝起きても眠くないのです」
「他にはリヒト様のお体の話ですと——」
「も、もういいです! ストップストップ!」
「——え? ストップですか?」
「ちょ、ちょっと待ってください! 情報量が多すぎます」
「あなたの言ったことを整理しつつ、聞きたいことが二つあります」
「まず一つ目ですが、あなた…そのリヒトって人の家系の人ですか? それか元メイドか」
「あ、はい! 元メイドです!」
「やはり、メイドでしたか」
んーでも、メイドだとしてもかなり踏み込んでいるわね…普通のメイドはあそこまで主の事を詳しく離れないはずなのに…。
んーこの子! 性格は一途っぽいし、頭も悪くは無いし、スタイルはすごく良いし、結構いいかもなぁ…。
最近ご主人が少し問題を起こしてしまい、信頼が下がってメイドや従者が次々に辞めていってしまった。
正直人材が足りて無いから欲しい。
でも、ご主人の意見を聞かないと…でもご主人は今出張中…連絡もつかないし。
もーう! どうして今なのー!
あともう少し面接をするのが早ければ! あともう少し面接をするのが遅ければ!
なんか頭抱えてる…もしかしてお、落ちる!?
いやいや、落ちたらまずい! 非常にまずい! なんとか試験官の人の印象をプラスに持っていかないと!
「わ、私! 脱いだらすごいんです!」
「——えぇ?」
「い、今見せても良いですか!?」
「は、はい…どうぞ」
急にどうしたんだろう…。
自信はないけど…リヒト様にたまにスタイルのことで褒められる。
だから私の体には魅力があるということ! つもり!
体で勝つる!
「ほぉ〜、やはりすごくスタイルがいいですね〜」
「ここで働いている人でも、あなたほどスタイルがいい人は少ないですよ」
「あ、ありがとうございます!」
よかった、少し評価が上がったかな?
「ですが、スタイルが評価されるのはご主人が男性の場合がほとんどです、私たちのご主人はスタイルや可愛さなどは特に気になさらない人なのであまり…」
ガーン…。
頑張ったのに、、体も張ったのに…。
「結果は後日、手紙を送りますので、結果を確認してください」
「合格の場合は手紙と一緒にバッジがついていますので、そちらを持ってもう一度屋敷にいらしてください」
「——分かりました」
「では、ご退出を」
面接が終わり、屋敷からでたフラン。
帰るため近場の停留所へ向かう最中、フランの心情は穏やかではなかった。
落ちたらどうしよう…迷惑かけれない…。
受かっててください! どうか〜!




