第七十四話 「二つの分岐」
「さてと、君たちにはとある学園に潜入して調査してもらいたい、場所は後ほど送るから今日はもう休んでくれ」
「仮眠室がこのフロアには数えきれないほどある、好きなのを使ってくれ」
仮眠室に入ってリヒト達は順番に入浴した。
最後に入ったフランが上がったら、リヒト達の手元には一つの書類が手渡されていた。
中身は潜入する学園の名前と場所、その他いろいろな詳細が記されてあった。
「レグラス学園…歴史の古い魔法使い育成学園」
「レグラス学園って、かなり有名ですよ!? 過去には七賢法を出したこともあるという…」
「そ、それはすごい…」
魔法使い育成学園…ワンチャン俺、もっと強くなれるヒントがあるかも?
「よし、準備ができたらさっそく行こう!」
「リヒト様、どうやらここからレグラス学園に行く馬車があるみたいです」
「ちょうどいいね、それを使って行こっか」
すると、フランがリヒトの横に座った。
なにやら言いたげな様子である。
「リヒト様、最初に話を聞いた時から思っていたんですけど、私その学園に入れないですよね」
「「——あ」」
たしかにそうだ、フランって成人してるじゃん…。
「フランは、、待機?」
「えぇ!? そんな…」
「たしかにフランさんは成人しているので年齢的に学園に生徒として入ることはできませんね」
「それに、フランさんなので教員として入ることもできないですし…」
「ん、どういうことかなぁ?」
「事実を言っただけです…怒らないでください…」
フランをどうしようか話しながらも、リヒトは資料を見ていた。
すると、一番下に補足として小さい文字で[もし行けないようでしたら、メイドさんを貴族の方へ向かわせるという手もあります、そちらも検討していただきたいです]と書かれていた。
あの時、後回しと言っていたが、実際はすぐにでも探し出したかったのだろう。
「フラン、フランだけっていうことにはならないかも」
「——それって?」
「——なるほど、つまりは私は誰かしらの協力者と共にそのどっかの貴族の屋敷にメイドとして潜入すると」
「それでリヒト様とリーブさんは学園に行くと」
「正直、フランは適任だと思う、でも行けって言ってるわけじゃないよ! 危険な目には遭わせたくないし…」
あぁ…嬉しっ。
「リヒト様の言うことには従います、、それとは別に、リヒト様の望みは全力で叶えたいと言う気持ちがあります」
「なので、私はやりますっ! 潜入頑張りますっ!」
「決まりですね、では明日報告しましょう、そこからそれぞれ、そこに入るための対策や勉強なんかが始まるでしょうね…」
「勉強…面倒臭いな…」
「——私も勉強の熱は、、メイドになる時に全部燃え尽きたのにぃ…」
「入るためにはどこでも試験が付き物です、勉強しますよ、きっと資料なんかはあの人たちが用意してくれるはずです」
「やるしかないのかぁ…はぁ」
—翌日—
「よくきたね、それじゃあ改めて三人の意見を聞かせてもらっても」
「僕とリーブは学園に、、そしてフランは屋敷に向かいます」
「こちらが望むようになってくれて助かったよ、礼を言おう」
「今目の前にある教材、これを読んで復習、たくさん勉強してくれ」
「そっちは既にメイドだから勉強する必要はない、作法とかを見るだけだな」
ラッキー♪
「特待編入という制度がレグラス学園にはあってな、それを使うと入学時期じゃなくても学園に入学することができる」
「だが、特待編入は優秀じゃなくちゃいけない、特待だからな、ということで勉強、勉強、限りなく勉強をしてもらう」
「私たちが動くのは1ヶ月後だ、それまでに入学できるくらいまでになってもらう」
「育成学校だ、いくら特待といってもルミネスやファボスのほど入学水準は高くない」
「——頑張って欲しい」
「私はグラナト様ととある組織へ視察に行かなくては行けないから、あとは第六部隊の教育係を数人持ってきた」
「それじゃあ、あとはよろしく頼んだ」
「お任せください、ジャスミン副隊長」
三人とも、、いや…違うな。
リヒト、リーブ、フラン、頼んだぞ。
どうしてここまでの案件を一般人に頼んでいるのか、正直わからない、なぜ止めなかったのかわからない。
この案件、成功したら歴史に名を残す偉業になるだろう。
それを私たち魔防軍や研究者、魔王様の直属部隊など、空想を現実にしたい者は多い。
あの三人がもしも断片を2つ、見つけたのなら…。
私は、どんな手を使ってでも全員を英雄と称え、歴史に名を残してやる。
リヒト、リーブは今いる魔防軍本拠地から程遠くないレグラス魔法使い育成学園、通称レグラス学園へ向かう。
目的はそこのどこかにある、隠されているとされている断片を見つけ、回収すること。
フランは、今いる魔防軍本拠地から遠く離れたとある歴史ある名家の屋敷のどこかにあるとされている断片を見つけ、回収すること。
片方は生徒として、もう片方はメイドとして。
それぞれ別のやり方で、離れ離れになってそれぞれの目的を果たすため、覚悟を決めた三人。
次の日から、リヒトとリーブは入学するために猛勉強を、フランはメイドとしての所作を徹底的に見られ、至らない箇所があればその都度指摘され、シゴかれていた。
「——グラナト隊長、ずっと思っていたんですが、なぜ伝説魔法が見つかるかもしれないのに、第六部隊、私だけしか動かないんでしょうか」
「はぁ…それはだな…」
「もうみんな、飽き飽きしているんだ」




