表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/23

第六話 「七賢法、ネフィラ・エリス」


「どうぞ、は、入ってください」

「失礼します、エリス様」

「な、何かご用件ですか?」


 この方があの七賢法が一人、《全知の賢法》[ネフィラ・エリス]様。


 この方の美談は本当によく聞く。

 ほぼ全ての魔法を習得し扱うことができ、魔法の精度や練度も段違いなレベルまで上げているらしく、あの魔王様ですら本気のエリス様と戦えば危ういらしい…。

 

 そんな大層なお方に、家庭教師なんか受けてくれるのだろうか?


「実は、私の子、アークストン・リヒトについてです」

「産まれてから間もないのに、言葉を理解し話せ、神童とも言われている子のこの、ですか」

「その子、リヒトに魔法を教えてもらいたいのです」

「読めました、家庭教師ですか…」

「はい…」

「いいですよ」

「……! 本当ですか?!」

「はい、私もす、すこし、興味を持ちまして」


 よし! これでリヒトはよりすごい子になる!

 エリス様に魔法を教わればゆくゆくは我よりも…。


 リヒトって言う子、かなり特異な子だと言うのが視えた。

 私が魔法を教えれば、きっと人間にとって脅威となる存在になれるはず…。

 頑張れ私…!


 * * *


 結果、エリス様はリヒト様の家庭教師をやることになった。

 きっとリヒト様は自分に魔法を教えている人が、七賢法の一人だとは、思っても見ないでしょう。


「いよーし、そうと決まればさっそく用意だ!」

「父上、いったい何の…」

「決まってるだろう、リヒトの魔法習得祝いだよ!」


 この親バカめ…。





 * * *




「本当に、生成魔法で、あ、いいんですか?」

「はい!」

「もっと他にいい魔法はありますけれど…」

「これがいいんです!」


 この子、自分から好き好んで生成魔法を…。

 何か企んでいるようだけど、特に悪い感情は見受けられないんだよね…。


 私の魔法の一つ、探知魔法を極めて、相手の負の感情や邪な感情を視覚化できるようにした。

 それで今見ているけど、黄色…。


 黄色は圧倒的善の感情、素直な感情…!

 つまりこの子は、素直に生成魔法を習得したいんだ…。


「ど、どうして生成魔法を習得したいか、り、理由を聞いてもいいですか?」

「はい!」

「色々なものを作って、いろんな人の役に立てたり、いざと成った時に自分自身を守れるかもしれないと感じたからです」


 すごい真面目〜。


「で、では生成魔法の習得に向けての授業を、始めます」

「よろしくお願いします!」


 この子、本当に物覚えがいいな…私とは大違い…。


 * * *


 私は物覚えが悪かった。


「この魔法を出すにはこの魔法式が——」


 この魔法って、たしか前に授業で習った…。


「この魔法式とさっき言ったやつを掛け合わせると、この魔法が強化されるんだ、ちゃんとメモを取るように」


 えーと、あの魔法式…あの魔法式…。


「みんなメモをとったかな? では、次の工程に行くためこれは消すよ?」


 よし、じゃ、じゃあ黒板に書いてある魔法式を…。


 ——あ、あれ…?

 ——さっきまであったのに…。



「エリスさん、あなたはどうしてこうも物覚えが悪いのですか?」


「授業は本当に真面目に聞いていて、メモもしっかりととっているのに、他のことを覚えていないせいでそれを探すのに手間をかけてしまう」

「そのせいで今回の内容のメモを取れなかったんですよ?」

「はい……」


 何かを覚えることが昔から苦手だった私は、魔法学校に入って、それが顕著になった。


 魔法式をメモして、覚える。

 でもその工程が他の人はそつなくこなせる。


 けれど、私だけは違った。


 私は昔から、勉強しかとりえがなかった。


 小さい頃から魔法の勉強をしてきて、レベルの高い魔法学校に入ったはいいけど、そこでは私のレベルは低かった。


「この魔法式、実はこの魔法に深く関係しているんだ、だからよ〜く頭を——」


 このままじゃダメなんだ…!

 もう、いじめられたくない……。



「おいエリス、この魔法式の意味を言ってみろよ」

「え、えぇとそれは…」

「ぷっ…こんな式一つすらスラスラと言えないのかよ」

「なんでこいつはこの学校に入れたんだ?」

「ははっ、そうだな!」


 もう、いじめられたくない…。

 物覚えが悪いだけで、ここではいじめの対象なんだ…。


 私は本当に辛かった、あの時の記憶は今でも鮮明に残っている。

 いじり、罵詈雑言、パシリにひどい時は暴行もされた。


 だけど私は防御魔法一つは覚えていたとしても、怯えていて脳が真っ白な状況で二つ三つも魔法は頭に出なかった。


 だから私は必死に勉強した。

 覚えるため、可能な限りの時間を全て勉強に充てた。


 全てはもう二度と、あの苦痛、後悔を繰り返さないため。

 覚えるまで何十回何百回と、全てを頭に入れ込むよう努力をした。


 何をしても無駄だから諦めるんじゃない。

 無駄なことでも、やらなきゃいけない事は必死にやって、もがくことだと…。


 当時の私はそう自分に言い聞かせてきた。

 そして…。



 私は学校を2年飛び級で卒業し、そこからも、さらに勉強して七賢法の座に着くまでとなった。

 魔法を勉強し、七賢法に入ってからは魔法の研究に勤しんだ。

 勉強で培った、努力で成り上がったこの地位と知識。


 * * *


 この子には、私のように放ってほしくはない。

 できる事なら、この子には苦難なくこの地位まで上り詰めて欲しい。


「生成魔法は、作りたいものを、完璧にイメージしなければ生成できません」

「試しに何か、頭の中で想像してみてください」

「は、はい」


 何か、と言われても何を想像しよう…。

 完璧に造形をイメージできなきゃ再生できないらしいし…。

 何か形が簡単なものは…。


 あっ、あれがあった。


「イメージ、で、できましたか?」

「はい」


 どれどれ、この子は最初は何を思い浮かんでいるんだろう…。

 思考を覗いちゃお…!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ