第五十六話 「毒虫の牙と魔法の最高点」
「私はアリル・ユークリッド…!」
「ただのAランクのぼ、冒険者です…!」
「Aランクぅ?」
Aランクのやつが使えるレベルじゃないぞ。
素性を隠してるか、ランクの制度に埋もれた強者か…。
「もう一度聞こう」
「大人しくついてきてくれるといいんだが、、あと、この忠告が最後だ」
「この忠告を聞かないのなら、普通に戦うぞ」
レベルは高い、でも勝てない相手じゃない…!
「私は、戦いますっ!」
「はぁ、、しかたねぇ…」
「〈蠍の毒牙〉解放」
地面からさっきの尾が…!
「これは並大抵の攻撃じゃ壊せないぞ? ん〜そうだな、、巨大都市を壊滅するくらいのものじゃないと、壊せないなっ!」
「いけぇ!」
消えっ…!
地面に潜り、音もなく下から現れ標的を刺す。
そして当たれば致死量の毒が体内に巡る!
「カゴロモ」
ん? なんだ、、周りになにか浮いてる?
キンっ!
なっ、通らねぇ!
なんだあれ、、あんな薄い膜でどうやって!
——なら、、無数の針で逃げられなくしてやる…!
「タイハリ・無!」
無数の針…四方に降り注いだ…。
逃げ場をなくしたつもりなんだ、、私も、手加減はしない…!
〈蠍の毒牙〉の突きが通らないってことは普通の針じゃやっぱり通らないか…。
——ただ、、さっきから一度も攻撃をしてこない、、防戦一方だ。
つまり、あいつは防御魔法が得意な魔法使い、故にあの防御を破れば勝ちは確実…!
だがあの防御魔法は簡単には破壊できなさそうなんだよな…。
いっそのこと高火力の技でゴリ押すか?
いやぁでもなぁ、、徐々に力を出してくスタイルなんだよなぁ俺って…。
仕方ないか…。
「乱杭刺!」
真下から大きいのが…!?
「くっ…!」
私の防御壁が、破壊された?!
下は蠍の尾と無数の針…逃げれない…!
「おしまいだな、このまま針に刺さって毒で終わりだ」
「——てんかい…」
こんなに、死に近い瞬間は、久しぶりですね…。
「術式展開[淀ミナイ世界]」
なんだ、急に周りが変になって…。
何かしたな、だが魔法は俺にはっ!
「タイハリ・乱無!」
数で勝負だ!さぁ防いでみろ!
「毒突!」
毒突は触れただけで毒が即座に体内に巡る!
刺さなくても毒が巡るから突っ立って守ってたら即、毒にやられるぜ!
「壱乃舞、[花園]」
魔法の最高点、、これで倒す…!
「うおっ!?」
なんだ、何の魔法を使った?
今の吹き飛ばし、、魔力が感じれなかった、、。
風関係の魔法じゃないのか?
それに、、いつの間にか足元が一面花畑になってる…。
えぇい、細かいことはいい!
「弍乃舞、[枝垂舞]」
花びらがっ?!
「くそっ! 薙ぎ落とし!」
ダメだ! 数が多すぎる!
それに永久的に花が復活するせいで、永遠に花びらが刃に変わっちまう!
くそっ! しかもこの結界、、強度が凄まじい!
おそらく何倍にも強化した結界…俺の全力でも壊せるか怪しいくらいだ…。
それにこのでたらめな強さの魔法…。
「おい、本当に君、Aランクの冒険者かい?」
「俺は蠍、とある組織のNo.5だ」
「私の名前はアリル・ユークリッド、たしかに実力ならSランクに届いてますね…」
あの佇まい…風貌…そして上から浮遊して見下ろすこの感じ、圧倒的強者の魔法使い特有のシチュじゃねぇか…!
「毒牙!」
一気に距離を詰め、大きな毒の牙で相手を喰らう!
「参乃舞、[紅華衣]」
さっきのような薄い膜か! だがさっきのやつじゃ、これは止まらんねぇ!
ガンッ!
「——はぁっ?!」
嘘だろ、、はぁ?! 硬ぇ…硬いなんてもんじゃない!
刃が通る気がしねぇ…!
「肆乃舞、[桜万開]」
また花びらが増えた…。
どうやら、本当に相手にしちゃいけないやつを相手にしたのか、俺は…。
「伍乃舞、[吹雪乃舞]」
サシガメのやつ、、なんでこんなやつを俺に相手にさせた…。
「最後に何か?」
「フッ、ねぇよ、早くやれ」
暗殺者として、、こんなやばい魔法は最高の終わりだ!!
「末舞、[紅桜爛万]」
結界が壊れた。
最後に立っていたのはアリル・ユークリッド、またの名を、七賢法[ネフィラ・エリス]。
ふぅ、、淀ミナイ世界を使うことになるとは…。
でもこれで、脅威は去ったはず…!
おいおいマジかよ、、蠍がやられた?
あんな化け物がいたとは…。
個人的に気になるなぁ…蠍を無傷でやるとは。
だけどあんな化け物、蠍でも勝てないんじゃ僕は無理無理、諦めよう。
「こちらサシガメ、サソリ、調子はどうだ?」
「——っち、今一番話したくないやつからきやがった…」
「ひどいじゃないか〜」
「そりゃそうだろ、、くっ、、あんな化け物を俺によこすな…」
「おかげで重症だ、、魔法に耐性があって本当よかったよ、耐性がなかったら確実に死んでいたしな」
「あんな化け物、まじでやばいってぇ…!」
「しばらく任務はでれん! 魔力も切れた!」
「あ〜切れた…」
相当怒ってたなぁ。
まぁ、蠍もあんな重症を負ったことなんてないだろうし、しょうがないのかも。
大丈夫、大丈夫、手は打ってあるさ。
さて、俺は次の任務に取り掛かろう。
蠍がいない間、欠けた一人分の任務どうしよう…。
「全部キャンセルでいっか!」
「リヒト様、大丈夫ですか!」
「うぅ……うぅ…」
「ど、どうしたんですかそんな布団にくるまって…?」
「窓から見てたけど、戦闘激しすぎだって、、素直に怖かった…」
見られていたとは…。
戦いを見てて素直に思ったのが、、やっぱりエリスは強い。
あと最後の方、ずっと結界の中で戦ってたから状況が掴めなかったな。
「リヒト様、もう脅威は無くなったので、安心してください…!」
「——うん」
「そういえば、これからどうする?」
「——一度魔界に帰るのも手ですね…」
「え?!」
「色々と情報は手に入りましたし、目的だった勇者パーティーや勇者の情報も少しですが手に入りました」
「一度帰えるのもありです」
というか、もう帰りたい…。
そろそろ私、限界、、人のいない所でゴロゴロしたい…休まらない…。
「そっかぁ、、」
「帰るのは転移魔法で一瞬なのですぐ帰れますよ」
「う〜ん、、」
「いつかまたここへ連れて行ってあげますから…」
「本当?!」
リヒト様、人間界が気に入ってしまった様子ですね…。




