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第四十話 「ライラックの花」


 ヒナ、ヒナ…。


 どうして…どうして…!


 * * *

 

 俺は…ヒナに…会いたい…。

 なぜ、俺はヒナに会えない…。


「ずっと思ってた…」

「死ねばヒナに会えると思ってた…」

「でも、違ったんだ」


「ヒナを失い、堕ちた俺は、必ず地獄ヘ行く」

「だから俺は、どうしたってもうヒナには会えない…」

「会いたくても会えない…ずっと後悔が消えない…」


「ずっと言いたかった…謝りたかった…」

「感謝の言葉…愛の言葉…」


「いつもありがとうって、愛してるよって…」

「毎日、言える機会はあったのに…なんで言わなかったんだ…」



「はぁ、、もういいんだ…俺の人生は終わった…」

「いや、ヒナが死んでから、俺は俺じゃなかった…あの時からもう俺は、死んでいたんだ…」

「潔く地獄へ行くさ、俺の愚痴を聞いてくれて、ありがとな」


「本当にそれでいいのか?」

「あぁ…いいのさ…」

「ならせめて…私は剣士としてできることをしよう」

「あぁ…ありがとうな…《剣賦の賢法》…」


 せめて、せめて私は、二人を弔おう…。


 何もできない、私が唯一できる、二人へのメッセージだ。


「よく眠れ…アルカナ…」


「——あぁ……もう、時間さ……」




 * * *




 ここが、あいつの、そしてヒナちゃんの墓…。

 アイツが好きだった…と言うより、ヒナちゃんが好きだったらしい。


 ライラックの花…。

 その中でも特に桃色が好きだったらしい。


「人は誰しも、知らぬ間に過ちを犯しているものなんだな…アルカナ」


 俺はせいぜい、墓参りに来ることしかできることがない。

 花を置き、静かに立ち去る。


「じゃあな…」


 アルカナ、ヒナちゃんに会えたのだろうか…。




 * * *




「たく、損害がデカすぎるぞ」

「アルカナのやつ…本当派手に暴れたよなぁ」


「本部の建物全壊とは…」

「急遽新しいのを建設中だが、まだかかるぞ」


「うむ、となれば代わりとなるものが必要だが…誰かの屋敷を借りるか」


「私の屋敷でよければ使ってください!」

「《剣賦の剣法》よ、本当か!?」

「はい、お任せください」


「元はと言えば、あんたがやりあったから全壊したんだ、それくらいしろぉい!」

「あ、あはは…」




 * * *




「あいつ、死んだんだってな」

「あぁ、成果はゼロさ」


「——いいや、成果はゼロではないな」

「というと?」


「今の七賢法のNo3、そしてNo.4の実力が知れただけで大した収穫さ」

「No3に至っては奥義というものを見れたからな」


「——たしかにそうだが、、」


「アルカナが死んだのは痛手だが、使える手がなくなったわけじゃない」

「駒を増やそう、計画に支障をきたすわけにはいかない」


「そうだな、だがどうするか」

「簡単さ、これを使う」


「これは…ポスター?!」

「そうさ! これで人員を集める!」


「短期間で他より稼げる! 楽な仕事で高収入! 手当も厚い、アットホームな職場〜」

「これで勝つる!」


 いや、無理だろ…。


「そっちも、一級魔法使いとして何かしら求人活動をして欲しいんだがな」

「無茶言うな、一級魔法使いだぞ? 有名なんだぞ? こんなことをしてるってバレれば終わりだ、命が惜しいなら無茶なことは言うな」


「——それに、もっと簡単に増やせるさ」

「——あいつを使おう、、」


「——あぁ、あいつか」


「駒増やしにはピッタリだ」

「ふふふ、そうだな…たしかにピッタリだ」


「今頃は地下で眠りかけているだろうが、まぁいいさ」




 * * *




「リヒト様〜」

「私、何かしましたか?」

「どうして私は、椅子に縛りつけられてるんでしょう」


「ふーん、本当になーんにも知らないのかな〜?」


「し、シリマセンヨ…」


「今正直に言えば、リーブのおやつを隠れて食べた事については、許してあげてもいいけどなぁ〜?」


「——っ?!」


「わ、私は…!」


「何か言うことが?」


「う、、」

「ワタシガタベマシタ…スミマセン…」


「えぇ、なんて? リーブに聞こえる声で、もう一回!」


「う、うぅ…」

「リーブさん、おやつを食べてしまい、すみませんでしたっ!」


「うぅ…ひどいよぉ…」


 ——なっ…!?


「まだ泣き止まないとは、相当悲しんでるよ」

「リ、リヒト様?」


「これは罰として、フランはリーブに許してもらえるまで、僕とのお話は禁止ね」


 な、なんですって…?!


「あ、あががが……」


 あ、固まった。


「そ、そんな…リヒト様とお話できないなんて、生きてる意味ないじゃないですか…およよ…」


「およよよよよよよ……」


 あーあ、こっちも泣いちゃった。


 こりゃ早々に片付かないな。


「いくよ、リーブ」

「はい、リヒト様…」


「ま、待ってください…! お慈悲を…」

「お慈悲をぉぉお…!!」



「さてリーブ、新しいの買うから、元気だして!」

「うぅ、はい…ありがとうございます…」


 まったく、リーブもまだまだ子どもなんだな。

 ——俺が大人すぎるだけなのか?


 まぁ、中身は41歳のおじさんだしなぁ。


「そういや、リーブのおやつってどこに売ってるの?」

「限定品です…数も少なく希少なんです…」


「げっ、まじかぁ…」

「はい…」


「今行って買えるかなぁ…」




 * * *




 私は、七賢法で序列が2番目という高ポジションにいる。

 名声、実績、実力の全てにおいて、高成績。


 更には頭も良く、知らない人はほとんどいないほど有名な存在にもなった。

 それは全て努力で成り上がった。


 だけど!

 そんな私でも、とっ〜ても悩むことはある!


 それは…。


「はぁ…視察、どうしよう…」


 そう、人間界への視察なのです。

 人間界で魔族は畏怖の対象、見つけたら攻撃して生かすことはしない。


 つまり、バレたら終わりの過酷な任務!


 そんなの…どうしたらいいんですかぁ…!


 それに、人間界じゃ私の功績は全てなくなる。

 ただの魔法に最大特化した一般人に成り果てる…。


 そんなの嫌…!

 私が一般人…? むりむり…!


 人との会話なんて出来っこない私が一般人に紛れてどう情報を聞き出せと…?!


 どうしよう、本当にどうしよう…。


 せめて協力者がいれば…でも私、人脈ないんだよなぁ…。


「——そうだ」


 グラナトさんに、聞いてみようかな…。

 もしかしたら誰かしたら一緒に行ってくれる人がいるかも知れない!


 頼む…! 頼りになるのはアークストン家の人しか…!


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