第三十四話 「三級魔法使い試験」
「あなたのおなまえは?」
「ぼ、僕はリ…」
* * *
「念の為、アークストン家の末っ子であることは伏せてください!」
「グラナトさんからも忠告されてますので…!」
「は、はい」
「それと…」
ん、あれ?!
いつの間に服が…?
「あの格好だとすぐ大貴族だとバレてしまいます」
「ですのでこの、地味っけな服なら! きっと貴族なこともバレません!」
「いいですか? 名前を聞かれても、絶対に本名を名乗らないでくださいね?」
* * *
「ぼ、僕の名前はリト、リトだよ!」
「りと、リトって言うんだ…」
「よろしくね、リト!」
「う、うん、よろしく」
急に馴れ馴れしく…。
さっきまで泣いていたのに。
「どうしてリトはこのしけんをしにきたの?」
「どうして、か」
「とれって言われたから?」
「わ、わたしも!」
「わたしのおやはね、わたしにきたいしてるの」
「だからわたしもがんばんなきゃって…」
こんな小さい、まだこんな子どもなのに…!
「受験番号、0101番の方、お入りください」
「よっしゃぁ俺の番だ!」
「バーンデッド様〜! 頑張ってきてくださ〜い!」
「きっと! バーンデッド様なら合格できます!」
「当たり前だ!」
あれはさっきの…!
「今奥に行った貴族って、さっきサーヤをいじめてた人だよね」
「う、うん…」
「どうしていじめられてたの?」
「じ、実はね…」
* * *
「おいお前!」
「え…?」
「うわこいつ、見るからな弱そうっすね!」
「まぁそういうな」
「お前、これから三級魔法使いの試験を受けに行くつもりだろ」
「え? う、うん…」
「お前みたいな弱そうなやつじゃ受付で門前払いだろう、俺についてけ、ついてったら簡単に試験を受けれるぞ?」
私はその言葉にまんまと釣られて、試験会場まで着いて行った。
本当になんなく通れた…。
何か変なのを受付の人に見せていたけど。
* * *
「そのあと、あの人にこんなことを言われたの」
* * *
「おいお前、魔姫石は持ってるな?」
「え? う、うん」
「そいつを俺によこせ」
「え、だ、だめだよ! これはわたしたちにとって、いのちとおなじくらいだいじなものなんだよ!」
「——っち…」
「おい、いい加減にしろよ!」
「お前俺の手下のくせに生意気な態度とんな!」
「え、えぇでも…」
「でもじゃねぇよ! お前、誰の前にいるかわかってんのか!」
* * *
「なぜかあのひとは、わたしの魔姫石をほしがった」
たしか魔姫石って…。
* * *
「いいですかリヒト様?」
「魔族には、魔力を生み出す核となるものが実はあります」
「それが魔石」
「厳密には、魔石があることによって魔力が1から100に変わるんです」
「魔石は生まれた時には、すでに体の中にあります」
「魔石は、男性と女性で違います」
「男性は魔皇石、女性は魔姫石といいます」
「実は、魔石は他者が自分以外の者の魔石を体内に取り込むことで、その魔石の力を自分のものにできます」
「魔石の量が多くなると、魔力が桁違いに増えます」
「さらには、魔皇石には特殊能力がありまして、女性よりも身体的能力のポテンシャルが上がります」
「逆に言うと、魔姫石は魔法のポテンシャルが男性よりも上がります」
「まぁ、他者の魔石を自分のものにすることは犯罪なので、リヒト様は絶対にしないように!」
「は、はい…」
* * *
まさかあいつ、魔石を自分のものにするためか。
あの貴族、まだ幼い…。
6歳や7歳ぐらいだろうが、その段階で魔石を取り込むと言う発想が出るとは…。
「へっへっへ、さぁ来い!」
「それでは、受験番号0101番の、三級魔法使い試験を始めます」
ん? あいつ、すぐに出てきたな。
「く、くそ…どうして…」
今すぐにでも泣きそうな様子だ。
「おい、全部お前のせいだぞ!」
「えぇ…?」
「お前が魔姫石を渡さなかったから、俺はこの試験に合格できなかったんだ!」
「全部お前のせいだぞ!」
「えぇ、そ、そんな…」
酷い言いがかりだな…。
「おい、そんなこと言うな」
「なんだお前、俺に楯突くんじゃねぇ!」
おっと危ない。
こ、こいつ…!
軽く突き飛ばそうとしたけど、避けられた…。
くそっ!
俺が転びそうだったじゃねぇか!
「く、くそ…覚えてろよ!」
「ふん!」
なんだったんだあいつは…。
横暴だな…。
「それではお次の、受験番号0102番の方、お入りください」
「あ、わたしだ」
「頑張ってねサーヤ」
「うん、がんばるね!」
俺の番号は0110、今が0102だからまだもう少し時間がかかるな。
その間何してようかな…。
魔力の流れとか調整してようかな。
「ふぅ…よし…」
「な、なぁ、あいつ、何者だ?」
「魔力の流れ、魔力の量も尋常じゃないぞ」
なんか周りが騒がしくなっちゃったな…。
「ちょっと君、少しいいかな?」
「え…? 僕ですか?」
「そう、君だ」
え、俺なんかしたか…?
心当たりがないんだが…。
「君、まだ子どもじゃないか、それなのにあそこまでの魔力の量、私には到底理解できない」
「は、はぁ…」
「そこでだ、2級魔法使い試験を受けさせてやる、だから私についてきてくれ」
「は、はぁ…?」
突然でてきて何を言ってんだこの人は。
しかも2級魔法使い試験なんて、そんなことする権限なんて…。
「申し遅れた、私は2級魔法使い、名をレルネンと言う」
「は、はい…」
「私は3級魔法使い試験の試験官として、今日ここに来ている」
「だが少年の様な才能のある者をこのままにしておくことはできない」
「だから誘ったんだ、正直少年にとってこの試験は簡単すぎると思う」
「嫌なら来なくてもいい、だが次の2級魔法使い試験が行われるのは2ヶ月後だ」
「私がいればすぐ試験を行うことができる」
「さぁ、どうする少年?」




