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第三十一話 「三女とリヒト」


「おーいリヒト〜!」

「あ、マヒト兄様、どうかしましたか?」


「ちょっと今日一日だけカエデの面倒を見てくれないか?」

「えぇ?」


「急な用事が入っちゃって、父上も母上も遠征に、クラン兄様もラナカッテ兄様もラムド兄様も出掛けている」

「ルカに至ってはまだ帰ってきてないし…」


「だから今日一日だけ頼むリヒト!」

「僕はもう屋敷を出なきゃいけないんだ、すまないがメイド長さんとカエデのお世話係の人に色々と聞いてくれ」


「え、ちょ、」

「それじゃあ頼んだよー!」


 あ、行ってしまった…。


 何で俺に頼むのか、メイドさん達でお世話はできるんじゃないのか?


 今普段は必ずいるはずのフランとリーブがなんか研修とか言ってどこかに行ってるんだよなぁ…。



 たくもう…。


「あー、うー」


 そういや、カエデの世話、というより赤ちゃんの世話なんか前世でもしたことがないぞ。


 テレビとかで偶〜にやってた内容だと、たしか…。


「いないいない、ばぁ!」

「………」


「あ…あぁ……」

「あー、あー!」


 おぉ、喜んで、いるのか?

 笑ってるっぽいし、きっと喜んでくれてるんだろう!


「リヒト様〜? お元気ですね〜」

「え?」


 なんか、聞き覚えのある声だな。


「その声は…」

「私だよ〜」

「ノ、ノルンさん?!」

「お久しぶりですリヒト様」

「ひ、久しぶり〜」


 振り返ると、そこにいたのはノルンだった。

 本当に久々に会った。

 広い屋敷内で何年も会わずとは。


「しっかし、大きくなりましたねー」

「魔法も、いい調子なんですって?」

「は、はい」

「まぁ七賢法様に教えられればそうなりますよ」


「ところで、リヒト様」

「後ろにいるのは、カエデ様ですか?」


「あ、うん、兄様から頼まれててさ」

「なるほどぉ、なら私も手伝います!」

「え、いいの?」

「もちろん、と言いたいところですが、一つ条件が」


「私がここにいることは秘密にしておいてください」


 またか…。


「代わりにカエデ様のお守りをお手伝いする」

「交換条件といきましょう」

「ん〜」


 そんなに悩むこと…?!


「フッフッフッ、しょうがないですね」


 私には切り札があるんですよリヒト様。


「この写真、何だかわかりますか〜?」


 こ、これは…!

 あ、俺が隠れてメイドさんの下着を物色していた時の…!?


 * * *


 あれは俺が4歳の時…。

 魔法の精度を上げるために魔法を使いまくった。


 その性で魔力が枯渇寸前になり、体に異常が出てきてしまった。


 目眩や体が気だるくなったりと、とにかく最悪だった。


 それで理性がほとんどなくなり、なぜかメイドさん達共同の服の洗い場に行って下着を物色したんだ…。


 * * *


 そ、その時撮っていたというのか?!

 あの時?!


「ふふーん、どうして5歳が女性の下着を物色していたのかは疑問ですが…」


 まずい、中身がおじさんだとバレてしまってはなんか危ない気がする…。


 ここは前世の記憶をフル活用し、何か言い訳を見つけよう…。


 うーーーーーーーーーーん…。

 うーーーーんと…。

 あーーーーー、うーーーーんと…。


 ——よし決めたっ!


「あ、あの時はね」

「ボールで遊んでたんだよ、それでボールが跳ね返ってあのカゴの中に入っちゃったんだよ」

「だから僕はカゴの中の物色してただけで、下着を目当てに物てはわけじゃぁ——」


「ふ〜ん、直前のリヒト様は、特に何も持っていませんでしたよ?」


 な、なぜ直前の写真もあるんだ…?!

 こ、これじゃ今言ったのが完全に嘘だと確定する…!

 く、くそっ、こ、これは…。


 参った…負けだ…。


 俺は社会的に叩きのめされるんだろうか、5歳が、前世の半分の年齢の人に…。


「嘘、ついたんですね」

「ふふーん、また私の手のひらの上に転がされてますね」


「この事は言わないでおきます」


「——え…?」


「私がここにいることを言わなければ、ですが」


「う、うん! 絶対守る、絶対言わない!」

「うんうん! では、カエデ様のお守りをしましょうか」


「あー、あー、」


 ノルンとカエデのお守りをした。

 やはりと言うべきなのか、教育係所属しているノルンは、赤ん坊の扱いは上手だ。


 カエデも泣く事は一回もなかった。

 と、言うか、カエデはあんまり泣かない子だった。


「夕暮れですね」

「そろそろ危ないので私はこれで」

「え?」

「ではまた」


 行ってしまった…。

 危ないから? どう言う事なんだ。


 と、思っていた頃…。


「すみません、ここにノルンはいませんか!」

「め、メイド副長さん?!」

「あ、リヒト様、ここにノルンは来ていませんでしか?」


 ノルンが言っていたのはこの事だったのか…!


 * * *


「交換条件といきましょう」


「ふふーん、どうして5歳が女性の下着を物色していたのかは疑問ですが…」


「この事は言わないでおきます」


「私がここにいることを言わなければ、ですが」


 * * *


「ノ、ノルンさんはここには来てないですよ?」

「そうですか…」

「それでは失礼致します、カエデ様のお守りは3名ほど向かわせますので」


「あ、ありがとう〜」


 よかった、俺の地位は守られた。


 しっかしノルン、何をしたんだ…。



「ふふ〜ん♪ 久々に会えたな〜リヒト様に」


 正直分かってはいたけれど、今回ので大分確証がついたな。

 リヒト様は大人びている、ものすごく。


 何かの本に影響されているに違いない…!


 あ、そうそう。

 またコレクションが増えたんだった。


 これこれ〜!

 リヒト様の負けを認めた顔写真!


 いやぁ、久々にお宝がゲットできて気分最高!


 そろそろ持ち場に戻らないと、今頃副長さんが探してる最中だろうなぁ。


 ふふ、リヒト様…♪

 あなたはずっと、私が見ていますからね♪


 そう、ずっと…。

 いつでもリヒト様の最高のお姿を写真に収めるため、ずっと見ていますからね…。


「ふふふ♪」


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