第三十話 「末っ子のご帰還」
ラナカッテは唇に手を置き、可愛いポーズをとった。
そのあと急に、轟音と共に床下から稲妻がでてきた。
その稲妻に少しかすった男は、一瞬にしてかすった部分が黒焦げになり、更には稲妻が当たったことにより、電気ショックで臓器の機能が停止してしまった。
「な、おい! 起きろよ!」
次々と稲妻をくらい倒れていく。
ものの数秒で4人の兵士は全員心肺が停止し、その場に倒れ込んだ。
「よし、あとは外に出て父上達と合流するだけ」
まぁ、そのうち心臓の動きは復活するけどね。
できることなら本当に停止させてあげたいけど、まぁ、それはダメだしね〜。
「これくらいで勘弁してあげるってことで!」
「うわぁぁあ!?」
「レヴォルテ」
くそ、レベルが段違いすぎる…!
このままだとそのうち俺もあの魔法を喰らって死ぬ…!
に、逃げなければ!
逃げて、伝えなければ!
「は、はぁ、はぁ、、はぁ、、、」
「おーい! リヒト救出できたよー!」
「よ、よし! ならば全員眠らせるか」
「派手にやっちゃってー父上!」
「タイムズ!」
時間の動きを限りなく遅くし、そしてグラナトは。
「——はっ!!」
一人一人丁寧に渾身の一撃を喰らわせていった。
「——解除…」
「「ぐはぁぁあ!!」」
「あ、」
父上、タイムズを使ったな。
一瞬で目の前にいた兵士が倒れていた…。
まったく、本当に父上はチートすぎる魔法を持っているもんだ。
「さて、これで全員か」
「だね〜、まぁ、父上が9割やっちゃったけど」
「リヒトも救出できたし、帰ろうか」
「——って待って、ラムドは?」
「——たしかに、いつのまにかいなくなってたな」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、!」
逃げなきゃ、逃げなければ!
早く、あのお方に報告しなければ!
「はぁ、はぁ、はぁ、、はぁ、、」
フフフ、見〜つけた!
「あがっ!?」
背後から、首を…!
「取り逃してたね〜」
「真っ先に逃げるなんて、気配を消すのも上手いから探すのに少〜しだけ手間取ったよ」
「お、お前は、誰だ…」
「ん? 僕はアークストン家の次男、アークストン・ラムドさ」
「ライムズ」
「うぐっ…?!」
首に電気ショックを一撃、と。
木にでもぶら下げておくか。
「ごめんね兄様達」
「どうしたラムドよ?」
「ちょっと、気になる研究対象があってね」
「ラムドは探究心すごいからな〜」
「——ん、んぅ?」
「お、起きた」
「ごめんリヒト! あの時雷の魔法使ったらリヒトにも少し電気に触れて気絶しちゃってたみたい!」
「ごめんね〜! ちょっと火力ミスっちゃった」
シールド貼ってたのに気絶するほどの威力、だと…?!
「まぁ、何はともあれリヒトが無事で本当に良かった」
「そうだね、お帰り、リヒト!」
「うん! ただいま! 兄様!」
「ずっちぃな、私もただいまされたい〜」
「お、俺も…」
「と、父様も…」
派手に吹き飛んだ森の一角で、笑い合う家族がひとつ。
こうして捕まってしまったリヒトは無事に救出され、姉のラナカッテに担がれながら王国へ帰ったのであった。
「お帰りなさい! リヒト様!」
「お帰りなさいぃ…リヒト様〜!」
「みんな、リヒトの帰りを喜んでいるぞ」
「はい、父上」
「愛されキャラだな、リヒトは」
「ラムド兄様だって、同じくらい」
「いいなぁ、私も、[お帰りなさいませ! ラナカッテー!]、とか言われたいなぁ」
メイドか執事にでも言わせなよ…。
「リヒト様…本当によかった…」
「り、リヒト様…無事だったんですね…」
「うん、この通り元気だよ」
なぜか気絶して起きてからというもの、体の痛みと頭のぼんやりが治ったんだよな。
ラナカッテ姉様、何かした…?
「本当、連れ去られたと聞かされて…気が気じゃなかったんですよ?」
「僕も、本気でリヒト様を探しに、世界中回ろうかなと思ってました!」
想いが強すぎるとこうなるのか…。
想いが強過ぎて反応に困るな…。
「と、とにかく、」
「はい、」
「「帰ってきてくれてよかったですぅぅ!」」
二人とも、俺のために泣いてくれて…。
俺のためにこんなに泣いてくれるなんて…。
思えばいつも、怒られてばっかだったな。
誰かに感謝されたら、泣くほど喜ばれたりなんか、もう覚えてないくらい昔以来なんだな。
「ありがとう、みんな、ありがとう…」
「ど、どうしてリヒト様も泣いてるんですかぁ…」
「あ、あはは、どうしてだろうねぇ…」
今はただ、この自分の気持ちに甘えよう…。
俺のために泣いてくれる、俺のためだけに祝ってくれる。
そんな周りの人に今はただ感謝を…。
第二の人生にただひたすらの感謝を…。
「さぁ、屋敷に戻るぞ!」
「今日はリヒトのためにパーティーをしよう!」
「え、いいんですか?」
「もちろんだ!」
「おっと、その前に…」
「よく聞け、皆の衆!」
「今ここに、アークストン家の四男の末っ子、アークストン・リヒトは、我が国に戻ってきた!」
「安心しろ! そして末っ子のご帰還を喜べ!」
国民一人一人が喜び、感謝し、拍手をする。
国民のほぼ全員がリヒトの帰還を心から喜び、祝福をした。
この祝杯の熱は、2日間、絶えず燃え続けていた。
「リヒト様、お帰りなさい!」
「リヒト様、お帰りなさい…!」
「うん、ただいま! みんな!」
「そして、ありがとう!」




