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第二十九話 「兄弟の怒り」


「これで全員か?」

「た、大変です隊長!」

「どうした、そんな顔を真っ青にして!」

「リ、リヒト様が見つかりません!」


 え、リヒト様が、見つから、ない?


「ん?ん?ん??」


 え、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘…。


「ちゃんと探したのか?!」

「はい!」

「路地裏店の中屋根の上トイレの便座の裏までくまなく探しました!」

「なのになぜいない!」

「わかりません…」


「ま、まさか…」

「ルデアに、連れ去られたんじゃ…」

「ま、まさかそんなことは…」


 まずい、リヒト様が行方不明となれば、確実に私に責任が降りかかる…!

 クビどころの騒ぎじゃ済まないぞ…。

 まずい、やばい、まずい、やばい!


 た、隊長の顔が、青を超えて緑っぽくなってる。


 隊長おもろ〜。


「えぇい、もう一度くまなく探すぞ!」

「今度は隊員全員でだ!」

「「はい!」」




 * * *




 うーん、狭い木箱の中に入れられてから一体どのくらいの時間が経ったんだろうか…。

 山道を通っているからか木箱か弾んで体がものすごく痛い…。

 縛られているからストレッチとかで体を解せないし。


 一体いつになったら俺はこの木箱から出られるんだ?




 * * *




「はぁ…」

「まだ根に持ってるのか?」

「いや、過ぎたことは仕方ない事なんだが、どうも腑に落ちなくてね」

「クラン、過ぎたことは気にしない!」


「おっと、なんだなんだ、急に馬車が止まったぞ?」


「た、大変です!」

「ん、どうしたんだ?」


「リ、リヒト様がルデア兵隊に連れ去られたらしいです!」


「「——っ?!!」」


「なに?! それは本当か!」

「は、はい、今手紙を一瞬で送れる魔法で来た手紙の内容がそれで…」

「リヒトが、ルデアに連れ去られた、だと…?」


 あ、これはまずい…。

 父上が本気で…。

 キレたら…。


「許さんぞルデアよ、我が国だと壊滅してくれようか」


 やばい…オーラが強過ぎて…!

 意識飛ぶ…あ、飛ぶ…。

 やばいよやばいよ、流石にやばいよ!


「魔法で一気に移動するぞ」

「は、はい」

「こうしちゃいられん、皆も気が気じゃないだろう」

「まぁそうだね、うちの可愛いリヒトを連れ去るなんて、本当に許してはおけない」

「下の子を守るのは長男のつとめ、絶対に取り返す…!」


 リヒト、待っててね、絶対にお兄ちゃんが助けるから!


「行くぞ!」

「「はい!」」



 あぁ…。

 私は一体どうすれば…。

 仕方がない、人なしで戻るしかないか…。


 せっかくだしここで馬と休憩でもしようかな。




 * * *




「おらおら、アークストンのガキんちょさんよぉ」

「おい、余計なちょっかいをかけるな」

「はいよ〜隊長さん」


 こいつら、本当に何が目的なんだ。

 やっと木箱から出られたと思ったが…。


 次は頬をつねられたり、罵声を浴びせられたりと、軽い拷問だな。


 正直ツラい。


「なぁ、こいつ何歳なんだ?」

「たしか5歳だぞ」

「5歳かぁ、だがよぉ? 5歳ってつねったら普通血が出るよな?」

「なのにこいつは出ないぞ、余程の耐久性が他のやつよりあるんだな!」

「ハッハッハッハッハ!」


 本当こいつらは何なんだ…。


「あんま傷つけるな、余計な反感を買う」

「今の状態でも相当な規模ですぜ?」

「だが、傷つけたとなると我らの領主様の存続に関わる」

「えぇ…まじっすか…」

「だから無闇に傷つける行為はやめるんだ」

「わかりやした!」


「そろそろ日が落ちる、交代交代で外を見回り、それ以外は寝るように」

「「はい!」」



 ね、寝れなかった…。

 寝ているやつのいびきと、深夜に酒盛りしてる連中の性でまともに寝れなかった…。


 あー眠い、ちょー眠い。


「おう、眠れたかガキんちょ?」

「あー、え?」

「寝れてなさそうだな」


「おいお前ら! 朝の点呼を行う!」

「「はい!」」


 みんな一斉に外へ出ていった…。

 その間に逃げたいものだが…。


「う、あ…」


 ダメだ、体が痛い…。

 昨日の木箱に詰められた性で体がまだバッキバキだ。

 それに寝てない性で頭もろくに働かない…。

 ずっと頭がぼんやりしているような感じがする…!


 こんなんじゃまともに動くことなんて…。


「て、敵襲だ! 敵襲だぁぁ!!」


 なに?! 敵襲?!


「あ、あれは、アークストンの最高戦力達だ!」

「お前ら怯むな! 武器を持て! 魔法特化兵は魔法を放て!」

「「はい!!」」


「あそこの大きな小屋か、リヒトがいるのは」

「はい父上、探知魔法があそこを指しています」

「わかった、派手に暴れるぞ!」

「待って! その前に、リヒトの安全を確認しないと!」

「あ、あぁそうだったな…」

「僕が行くよ」

「私も行く」


「アークストン家の長女と次男が来るぞー!」

「構えろ!」


「ステルス」


「な、消えた、長女が消えたぞ!」


「ランギニル!」


 アークストン家の長女が使ったと思われる魔法…。

 あれはおそらく姿を消す魔法…。

 そして次男が使った魔法は魔力探知と気配を錯乱させる魔法か…。


「お前達! ガキんちょを見とけ!」

「「はい!」」


 な、なんだ? 外で何が起こってる?

 俺は安全なのか?

 く、くそ、昨日魔力を全部魔法で空にされた性で何もできない…。

 魔法がなきゃ俺はただの頭が良くて、言葉も流暢に話せるだけの5歳児なのに…!


「——ト、リヒト!」

「ふえ?」

「リヒト! お姉ちゃんだよ!」


「ラ、ラナカッテ姉様!」

「ふふーん、助けに来たよーん!」

「さ、早く、お姉ちゃんに掴まって!」

「う、うん!」


「おい待て! そのガキんちょを下ろせ!」

「手ぇ上げろ、手をぉ!」


「ふーん、君たち、私をそこらの可愛い女の子と勘違いしてる?」

「「あぁ?」」


「私はね、確かに可愛いけど、か弱い女の子では、ないんだなぁ〜」


 な、なんか姉様の周りに雷のようなものが…。

 バチバチと音も出てるし…なんかやばそう…!


「さぁてと、姉ちゃん暴れますか!」


「後悔しやがれ!」

「それなぁ!」

 

 あ、シールドだ。


「「うぉぉお!!」」


「んふ♪」


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