第二話 「家庭教師」
「え…っと! ノ、ノルンさん…!?」
「こんなとこでコソコソと魔法ですか…」
「は…え…えっとぉ…!」
なんとか言い訳を考えつつも、ノルンさんは頭がいい!
何を言っても無駄なんだろう。
「この事は、黙っててあげてもいいですよ?」
口元が緩み、笑みを見せてきた。
見た目の誠実さと比例して中の心までとは!
低木から身を出してノルンさんは俺の元へ近づき、ニヤリと笑って指先を俺の唇のを当ててきた。
「その代わり、私がここにいることも黙っててくれませんか?」
「んぅ…?」
そう言えば、専属のメイドは屋敷内で仕事をしているはず。
そしてノルンさんともあろうお方が仕事もせずに外で何かをしているとは…。
ノルンさんは指を唇から離して少し離れ、そばにあったガーデンチェアに座って話をしてくれた。
ノルンさんがここへきた目的は、俺と同じく隠し事をしているためだった。
「隠し事の内容は流石にリヒト様でもお教えできませんが、、」
隠し事の内容は教えてはくれなかった。不平等だ、俺はノルンさんにバレたのに俺はノルンさんの隠し事を知る権利はないのか?
そう思った。
「戻りましょうか、そろそろ他のメイドが探しに来てしまいますよ?」
「あの…このことは…」
「わかっていますよ〜」
「二人だけの、秘密にしましょうね♪」
そう耳元で伝えてきた。正直ゾクゾクした。年齢的に女性に発情するような真似はしないが、こんな綺麗な人に耳元で囁かれるとくるものもある。
だがそんな邪な気持ちはグッ!っと堪えて俺はノルンさんの手を握って一緒に屋敷へ戻って行った。
屋敷に戻ってからというもの、まだ半日近く時間があるため、退屈で仕方がなかった。
そのためなんとかして魔法に触れたいため、何かないかと模索中。
何かないのか。
また隠れながらやってもいいが、正直またバレずにあそこまで行けるかどうか…。
うーむ、悩ましい…。
「…失礼します…」
一人のメイドが俺の部屋に入ってきた。
「リヒト様、どこへいっていたのですか」
「あはは、ちょっとお散歩してただけだよ」
中庭に隠れてコソコソと魔法を扱うための練習をしていたなんて口が裂けても言えないからな。
このメイドは俺の専属メイドだ。
兄にも姉にもみんなに専属メイドは一人ついている。
みんな優秀でいい人たちばかりなんだけど…。
「はぁ…困りますよ、、リヒト様の身にもしも何かあれば…」
「あぁ…! 私、どうにかなりそうですぅ…」
膝から崩れ落ちた。
俺の専属メイドは優秀だが性格が他の兄や姉たちのメイドと比べるとかなり愛が重いという。
「リヒト様ぁ〜、次からはお散歩するなら、私、フランも同伴しますからねぇ…!」
泣きながら擦り寄り、俺に訴えてきた。
「わ、わかったよ…」
「絶対ですよ?」
「う、うん」
思わずOKしてしまった…!
こんな可愛くて綺麗なのに、愛が重い故かこの残念美人め!
「さてと、リヒト様」
「は、はい」
「リヒト様の学力の上達は目を見張るものがあります」
「そのため私、ご主人と姫様に頼んで、なんと家庭教師を雇ってもらいましたぁ〜パチパチ」
「え、えぇ?!」
なんと! 知らぬ間にそんなことが取り繕われていたのか!
ふむ家庭教師か、優しく丁寧に教えてくれる人が来るといいけど。
「家庭教師がくる日は2日後です。 先に家庭教師のお名前だけお伝えしておきますね」
「家庭教師のお名前は、[ネフィラ・エリス]というお方です」
ネフィラ・エリス、どんな人なんだろうか、2日後が楽しみだ。
* * *
「…リヒト様、家庭教師がきました…」
「はい、どうぞ」
扉が開き、姿が見えた、と思ったらいない。フランの姿しかいない。
「こちらが家庭教師のネフィラ・エリスさんです」
「う…うぅ…」
いないと思ったらフランの後ろに隠れていたのか。
小さい…背格好に、白色の服に大きな帽子。
本で見た魔導士か?
とりあえずは挨拶だな、最初の挨拶は、その後の印象に大きく左右する。
「初めまして、アークストン家の兄弟が六人目、リヒトと申します。 以後お見知り置きを」
「え、あ……私の名前はネフィラ・エリスと申します…」
「わ、私…人の視線が苦手で、授業に支障がないよう精一杯頑張ります…」
なるほど、そういうことなのか、となればこれ以上はやめだな。
「では挨拶はこれで、フランさん、ネフィラさんの泊まる場所は…」
「あ、あの…」
ネフィラさんが何かいいたげな様子。
「お名前、エリスって呼んで欲しい、です」
こりゃ驚いた。
* * *
「あなた、どうして家庭教師なんか雇ったんですか?」
「こんな部屋も暗くして…目が悪くなってしまいますよ?」
「ふん、心配はいらないさ、これは雰囲気作りだからな」
雰囲気作りとは、この人はいくつになっても変わりませんね。
「それで、リヒトの事ですが、どうして家庭教師を雇うことを許可したんですか?」
「他の兄弟には家庭教師なんて雇うことなんてなかったですよね?」
「それはな、リヒトに才能が他の子以上にあるっていうものあるが、、」
「リヒトはな、それ以上に思いがあるんだ」
「思い、ですか」
まったくこの人は、どんな思いがあるのかわかりませんが、よく思っていることは確かですね。
だって少し、笑っていますから。
それにしても、わざわざ自分や兄弟の人を使って教えずに家庭教師を使うとは…。
本当、よくわからない人ですね。




