第二十六話 「隣国同士の反国協定」
「すっかり大人っぽくなっちゃって〜」
「まだ5歳なのにすごいわね〜」
「は、母上、苦しぃ…」
「あらごめんなさ〜い、お母さんおっぱい大きくて」
「さて、話はほとんど聞いてたわよ」
「ナユタ民族の生き残り、ヒャコヤ民族の保護場所をこの屋敷にしたいと?」
「はい」
「いい案だけど、危険が伴うわね、安全が保障されればその案でいいのだけれど…」
「安全…」
たしかにあのナユタ民族の生き残りだ、きっと血に飢えた人しかいないはず…。
でも、それだったらなぜここへ来る途中抵抗を一切しなかったんだろう?
「その安全が保障されるまでは、一旦広めの牢屋に入れておきましょう」
「牢屋は可哀想じゃないですか?」
「リヒトちゃーん?」
「場所がないのよ、仕方がないことだわ」
ち、近い近い、怖い顔を近づけないでくれぇ!
「さてと、じゃ私は疲れを癒さに温泉にでも入ってくるわ、またねリヒト〜♪」
「ま、まさかいらっしゃっていたとは…」
「わ、私はラナビア様の言った通り安全が保障されるまでの間、広めの牢屋に入れておきます」
「それでは、失礼いたします…」
安全、か。
「リヒト様? せっかく入れたあったかい飲み物が冷めてきていますよ?」
「え? あぁほんとだ…」
あったかいの入れてたの忘れてた〜。
「ふぅ…」
とりあえず、安全の保証はなんとかならないか俺の方でも動いてみるか。
「何とかなるといいけど」
「あ、どこか行くんですか?」
「うん、ちょっとね」
「私も行きます!」
「僕も!」
やれやれ、隠れてコソコソなんかできやしないか。
* * *
「さぁ準備は整った!」
「一夜明け、いざシルビア皇国へ行こう!」
「父上、ずいぶん気合が入ってますね」
「まぁ、何事も元気が一番さ」
「さぁ馬車に乗るぞ、あと1時間ほどで着くはずだ」
そして時間が経ち今はシルビア皇国城門前。
「おぉ、ここがあの…」
シルビア皇国の城門、か…。
「これがシルビア皇国の城門?」
「なんか、城門って感じがしないな、大きな白い門だな」
「でも、これ相当硬い素材が使われてるな」
「まぁ、とりあえず中に入ろう」
「我は隣国、アークストン領主、アークストン・グラナトである!」
「門を開けよ!」
グラナトが大きな声で城門の奥へ言うと、ゆっくりと大きな門が開き始めた。
一行は城門をくぐり、皇国内へと踏み入れる。
そしてグラナト一行は城へ入り、領主いる玉座の間へと向かった。
「フッフッフ、よろしくグラナト殿」
「私はシルビア皇国の領主、シルビア・ブーズだ」
「よろしく、ブーズ殿」
この人が、シルビア皇国の領主、感じはいいが、果たして裏があるかどうか。
横にいるのは側近か…?
青髪、白衣、綺麗な人だが…。
娘か? それか、、まさかな。
「さてと、フッフッフ、お茶を用意している」
「長いテーブルといくつか椅子を用意した、そこで話そうじゃないか」
本当、なんの話をしにここへきたのやら。
王国の最高戦略を集めてここへくると言うことは。
宣戦布告か、占領か、どちらにせよ戦関連の話であろう。
「グラナト殿、こちらの椅子にお座りください」
「あぁ、すまないな」
「いえいえ」
国の戦力はシルビアとアークストンじゃ差が段違いだ。
戦関連の話ならば、こちらに勝ち目はほとんどない。
ならば少しでも友好的関係を築かなければ…!
私の目的のため、少しでも民の犠牲は控えたい…!
「それで、今回ここへいらした件はどのような?」
「あぁ、それなんだが」
グラナトは机を強く叩き、報告書をブーズに向け突きつけた。
「これについて、ブーズ殿、あなたと話し合いたい」
何かの報告書…?
グラナト殿、随分と気が立っているな。
「1ヶ月ほど前、シルビア皇国から黒衣の使者がアークストン領地に城門を破壊し侵入、その後クランを含めた複数人の首を絞め気絶させた」
「ラムド、ラナカッテに至っては重度の傷を負った」
「さぁこの黒衣の使者についての責任を果たしてもらおうか、ブーズ殿」
「フッフッフ」
「何が可笑しい?」
「黒衣の男? なんですかそれは」
「それに、私はアークストンに使者なんて一人も送っていませんよ」
「なんだと?」
何をとぼけている、こっちは証拠がバッチリとあるんだ、言い逃れた許さん!
「疑うなら、側近に使者を取り扱っている書類を持って来させよう」
「そこにはいつ使者をどこへ向かわせたかな記録が記されている」
「それを見れば、疑いは晴れるだろう」
「——わかった、持ってきてくれ」
「承知いたしました」
「お待たせいたしました、こちらが過去一年分の書類です」
3枚だけ?
「そもそも私、シルビア皇国はあまり使者を出さないんだ」
「そしてその書類の中で一番最近に使者を出したのは2ヶ月前、グラナト殿が言っていた1ヶ月前は使者を出していない」
なんだと、ならばあの男が言っていたことは違ったと言うことか?
「クランよ、本当にシルビア皇国からきたと言っていたのか?」
「はい、確かな情報だと聞きましたが」
「隣の国からやってきた、と」
「隣なら、アークストンは我がシルビアとは別にもう一つあるではないですか」
「——ルデア王国か…」
「だがあそこは今鎖国中だ、使者を出すなんて考えられない」
だが、使者を送っていないと言う決定的な証拠がここにある今、ルデアの方を新たに疑うしかなくなってしまった…。
「これで疑いは晴れただろう」
「——不本意だが、認めざるおえないか、偽造は重大な犯罪、それをするのはリスクが高い故しないだろう」
「では、お帰りくださいませ、グラナト殿」
くそっ!
完全に無駄足だった…。
「まさかベガプトがシルビアの使者じゃなかったなんて」
「完全に無駄足だったな」
* * *
「フッフッフッフッフッフ」
いやぁまさかベガプトが、そうかそうか。
あっちも動いてくれていたんだな。
「いやぁ関心関心」
ここ、シルビア皇国と、ルデア王国で秘密裏に行われている協定。
その内容こそ、アークストン領地を崩壊させ地位を向上させるため!




