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第二十三話 「冷気の森で休憩」


「ここで少し休憩しましょう」

「うむ、分かった」


「しっかし、あとどのくらいでシルビア皇国に着くんだ? ラナカッテ」

「あと1日と少しかな、魔法を使えばすぐ行けるのに、何でわざわざ馬車なんか…」

「まぁ、いいだろうさ」


「少し、家族と話す時間が欲しかったんだ」

「父様…」


「なら魔法での移動中でもよかっただろうがい!」

「ま、まぁまぁ…」


 兄さん、少し気が立ってるな…。

 まぁ無理もないか、あれだけコテンパンにやられたら、プライドもズタズタだ。


 兄さんは意外とプライドが高いから、今もずっとあの男のことを考えているんだろうな。


 あの男の強さ、いったい何の魔法を使っていたんだ…?


 * * *


 思えばあの時、今まで出会ったどんな人よりも速かった。

 目で追えないほど、首を掴まれるまで反応ができなかった。


「はい捕まえた、反応できなかったか」


 * * *


 あの一瞬で、私はあの男に負けた…。


 その前に、小声で何かを言っていたような気がするが…。

 少し距離があったから聞こえなかったがね。


 もしかすると、あの時に何か特別な魔法を使っていたかもしれない。


 そして私はあの男の異様な強さ、そしてあの速さに一つの疑問が出てきた。


 もしかすると、天啓ではないのかと。

 天啓は通常の魔法より数段上のレベルのものが扱えるようになる。

 だから身体強化系の魔法が天啓としてあの男が与えられたのだとしたら…。


 あの速さ、納得はいくな…。


「兄さんこれ、温かいスープだよ」

「ありがとうラムド」

「この森は冷え込むね」

「あぁ、この森は標高が高いのと、この森に生えている花は、少し冷気を放出しているらしいから、その性でもあるな」

「へぇ、そんな花がこの森にあるんだ」


「ふぅ…温かい…」


 クラン、だいぶピリついているな。

 ここは父として何かアドバイスを…。

 いや、ここは場を和ませて気を鎮めよう。


「皆、よく見るがいい!」

「ん…?」


「おー! ここから先は、絶対に行かせないぞ!」


 何だ、何をする気なんだ…?


「はい! 父さん絶対通さん!」

「なんちゃって」


「——?!」


 父親の一言で、場は一瞬で凍りつき、今まで暖かかった焚き火の火も、暖かく感じなくなるほど強烈な寒さに見舞われてしまった。

 その性で動けなくなった。


 それがクラン達にとって最悪な状況へと招いてしまった。


「おや? 反応が悪いなぁ、ならもう一発やってあげようじゃないか!」


 なに…?!


「母さん、それやっといて」

「あぁ、我はこの柱を支えておかないといけないからさ」

「大黒柱!」


「——?!」


 さらに場は凍りつき、もう考える余裕なんて無くなってしまうほどだ。


 な、なんて寒いんだ…。

 父様、今は本当にやめて欲しい…!

 父上…一体何をやっているんだか…。


「なんだなんだ、反応が悪いなぁ…」

「——さ」

「寒すぎて…これ以上は、やめ…てください…」

「な、なんだとぉー!?」

「父さんの、スベっていたのか?!」

「——はい…」


 まじかー、まさかのスベったから反応がなかったのか。

 これは最悪だな、場を和ませるどころか、凍り付かせてしまった。

 全くもって思っていたこととは反対の結果になってしまった…。


 これは反省だな。


「すまなかった、少し焚き火の火力をあげよう」




 * * *




「フッフッフッ、例の件は順調か?」

「はいシルビア様、例の件は予想よりも早く事が進んでいます」

「このまま行けば予定よりも早くにあの作戦が実行できますね」

「フッフッフッ、まぁ別に例の件が早めに事がついても、あの作戦の決行日はずらすつもりはないよ」

「わかりました、では失礼致します」

「あぁ、下がっていいぞ」


 予定よりも早く進んでいる…か。

 フッフッフッ、楽しみだ。


「あの憎き国が崩壊していく様を早く見たいものだ」

「あの国が崩壊すれば私の野望も手が届くようになる…」


 絶対に例の件だけは成功させなければ…。

 最悪作戦は失敗してもいい。

 私の野望のために、犠牲になってもらおうか。


 正直、あの国が潰れれば、全てが容易くなる。

 例の件は、あの国を崩壊させるための

通過点でしかない。


 例の件がもしもできなくなれば…。

 まぁ、そんなことはありえないだらうが、もしよそんなことになったとしたら…。


 最終手段を取るしかなくなるな。

 まぁ、何にせよ私の計画は順調そのものだ。

 私の野望が叶うのが待ち遠しいな。


「フッフッフッ、ハッハッハッハッハ!」




 * * *




「そろそろ寝ようか」

「分かりました、では交代交代で夜分の見回りをしようか」

「了解」

「順番はクラン、私、ラムドを2時間ごとにローテーションでいいかな?」

「それで構わない」


「ありがとうな、皆」

「いえいえ、父上は早くお休みになられてください」

「では寝かせてもらうとするよ」


 この森は騎士団も偶にしか来ない森の奥地。

 しかも少し周りが開けているから、余計にモンスターに見つかりやすい。

 どこからでも来い…!



 む、朝か…。


「おはようクラン」

「あ、あぁおはようラナカッテ」

「ぐっすり寝れたかい?」

「まぁな」

「ラムドはどうだ?」

「もう起きてるよ」

「そうか」


 父上は、まだ寝ているのか…。

 そうだ、出発する前に馬の様子を確認しておこう。


 特に異常は…。

 ん、これは…。


「おい、ラナカッテ!」

「ど、どうした?!」


「これ、馬の前足に矢が刺さっている…」

「——っな! しかもこれ、毒の矢だぞ?!」


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