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第二十二話 「シルビア皇国」


「はぁ、、はぁ、、はぁ、、」

「くっ…くそ…」


 片腕がないのは、ダメだな…。

 歩きづらくて仕方がねぇ。


 俺は死ぬわけにはいかねぇ。

 人は守るもんがありゃ、図太く生き残ろうとする。


 俺も同じ、人間さ。

 そう、俺は人間なんだ…。


「しっかし、ずいぶん歩いたがまだ森か…」


 痛みと負傷で楽に動けん状態だ。

 こんなんで強化して移動なんかできやしない。


「やるなぁあの長女」


 次また会う時があれば。


「本気で相手してやるか」

「しっかし痛てぇな…そろそろ休憩するか」


 まだヒコヤ大森林から抜け出せねぇ、まったく広過ぎるぜ。




 * * *




「馬車の中って、やっぱり退屈だよね」

「私は本棚にあった本を読んでるから退屈しないよ〜」

「俺も…」

「いいなぁ、俺も何か本を持ってくるべきだったよ」


「クランよ、ならば我…じゃない、私の話でも聞いてやってはくれないか?」

「え…? はい」

「最近な、妻がやたらと鋭いんだ」

「私が何か隠し事をしようとするとすぐにバレてしまう…」

「——へ?」


「それに先週なんか書かれたお菓子を食べようとした時なんか、完璧に隠し通せたと思ったら…」


 * * *


「あらあなた〜?」

「うわぁあ…?!」

「こ〜んな夜中に、どうして食べ物の入ってる棚に何の用があるのかしら?」

「そ、それはだなぁ〜」

「まぁ、私が寝ている隙を狙って何かよからぬことを考えていたんでしょうけど〜」

「………」


 * * *


「妊娠しているからなのか、感覚がいつもの3割り増しになってて…まともに隠し事なんてできやしないんだ…」


 それ、ただ父上が辞めればいいことなのでは…。


「だがしかーし! 私は諦めない」

「自堕落な生活は私の願いの一つでもある!」

「なぜなら当主は、毎日激務でまともに休みが取れない…」

「だからこそ! 自分だけの時間の時は、自堕落な事をして、身も心も回復させなければいけないんだ!」

「は、はぁ…」


 気持ちはわかるけど、、。


「なぁクラン、クランも一度自堕落なことをしてみるといい!」

「そうだ、そうさ! クランもしてみるといい!」

「自堕落なことをしてみよう…!」


 もしかして父上、共犯者を作ろうとしているのか…?




 * * *




「はぁ、まさか父様とクラン兄様とラナカッテ姉様の三人とも用事で外出してるなんて…」

「特に、クラン兄様には近接戦闘のことについて聞こうと思っていたのに〜、、」


 あらまぉリヒト様ご乱心…!

 こういう時は専属メイドたる私が、リヒト様の気持ちを鎮めてあげないと…!


 えぇと確か、こういう時は、優しく抱きしめて、頭をなでなでするのがいいんでしたよね!

 いよっし!


「リヒト様〜、少しこちらへきてもらえないでしょーか?」

「ん? どうしたのフラ——」


 ホールド成功…。

 あとは頭を撫でるだけ!


「よーしよしよーし、リヒト様は日々頑張っていますよー」


 これできっとリヒト様も!


「………」


 何だ急に…?!

 まずい、こんな可愛い人に急に抱きしめられるなんて…男として開けては行けない扉を開けてしまいそうだ…。


 メイド、抱きしめ、いい匂い、それに何と言っても俺の腕に服越しでも分かる少し大きな二つのマシュマロが…!

 俺の理性を壊そうとしてくる…。

 まずい…! 早くここから脱出しないと…!


「あっ、ちょ、リヒト様…?!」


 どうして暴れて…はっ!

 まさかリヒト様、私のこれでは満足しないと…?!

 でしたらもっと、何か、ないかー、、。


 あっ、これだ!


「ぐ、ぐぅ…」

「——っは…!?」


 ぐわぁぁあ!!

 こ、この顔に伝わる感触はぁあ…!

 マシュマロが俺の顔に服越しで触れている…。

 これはまずい、さっきよりもっとまずい展開になった!


 や、やばい、扉が…開っ——


「ん〜あれ? リヒト様、お顔を赤くして寝てしまいました」


 落ち着いてはくれましたね、よほど安心したんでしょうか。


「よいしょっと」


 ベッドで寝かせてあげましょう。

 そうだ、近接戦闘? ができる人を今のうちに探しておこう!


 リヒト様のお役に立たないと…!



 あ、あぁぁあ…。

 な、なんてはしたないんだあの女は…!

 リ、リヒト様のお顔に、なんな肉の塊を押し付けて…。

 くっ! リヒト様、いますぐフランの贅肉にビンタしてやりたいくらいですが…。

 それはできないので仕方ない。


「ん? おぉリーブさん、ちょうどよかったです!」

「どうかしたんですか?」

「ちょっと、少しの間だけリヒト様を見てて欲しいです」

「じゃ、しょゆことで〜」


 一瞬で部屋から出て行ったな…。

 まぁでも、これでこの部屋には僕とリヒト様の二人しかいない!


 これはチャンスですね、えへ、えへへ…。




 * * *




「こんな険しい山々、どうしてこんなにも道の舗装状態が悪いんだ?」

「ちょっと近年、関係が悪くなっていっててな」

「なぜなのかはわからないが、あちらからの評価が一方的に悪くなっていってるんだ」


 それは不思議だな…。

 シルビア家はこちらに何を思ってそんなことを…。

 ベガプトの件もそうだ。

 一体、何を考えているんだ…。




 * * *




「領主様、もう2日ほどで、アークストン家の人が来るようです」

「そうか」

「迎える準備を今からします、それでは…」


「アークストン・グラナトに長男のアークストン・クラン、そして長女のアークストン・ラナカッテに次男のアークストン•ラムド…」

「フッフッフッ…」


「烏合どもが…何のようでここへ来たのかは知らんが」

「無駄なことをするもんだな、隣の貴族の連中は」


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