第二十一話 「堕ちた者」
「なるほど、そ、それで私に?」
「はい、何か知っていることがあれば、教えてくださると…」
「エリス様…」
魔法のスペシャリスト…ネフィラ・エリス様。
魔法研究の第一人者の実の娘で、魔法界の歴史に刻まれるほどの大物。
「黒衣の男、その人が使っていた魔法のこと、ですか?」
「はい…何か知っていることはありませんでしょうか?」
「——はい、知っています…」
「ですが、今から話すことは、禁句とされています…」
「なので頭の…テレパシーで情報をお伝え、します…」
「わかりました、ご協力ありがとうございます…!」
「で、では…」
ま、まずはその黒衣の男についてお話ししましょう。
エリス様、テレパシーだと軽快に喋りますね。
は、はい。
テレパシーだとまだ緊張せずに喋れるので…。
そ、それで黒衣の男ですが、ラナカッテさんの記憶から情報を得て、私の記憶からも探しました。
その結果、出てきた答えが…。
はい…。
その昔、七賢法のNo3、《天外の賢法》[ルディ・アルカナ]だったんです…。
神から与えられた力、天啓ともう一つ、神から与えられたギフテッドの力の2つの力を持っていました。
一つは、本来の身体強化よりももっと強化ができるもの。
二つは、短命になる代わりに身体能力が高くなること。
後者は、産まれた時からの身体能力が高かった、その上で天啓の魔法で超強化。
そんな感じです。
そしてギフテッドのせいで、まともに天啓以外の魔法が扱えなかったと聞きます。
でも、それでも七賢法まで登り詰めた。
そ、それは凄いな。
ですが、彼は七賢法の座についたその年の間に問題を起こし、七賢法ではなくなりました。
問題…?
はい、問題とは。
七賢法メンバーの殺害です。
なに…!?
彼は七賢法7人のうち3人を殺害し、その後逃走し行方をくらませていました。
3人も…。
No.7、No.5、そしてNo.4の3人です。
その当時私は用事で遠出をしていたため、その現場にはいませんでしたが…。
でも、帰ってきた時は衝撃でした。
見るも無惨な姿でした…。
一人一人、その当時彼とその当人しかいない時に事件が起こったため、最初に発見された時にはもう遅かったらしいです。
なんてやつだ…。
一つ気になったのですが、なぜ彼はそのような事をしたのでしょうか…?
私も正確にはわかりません。
本人に直接聞いたわけではありませんので。
ですが私たちの中で結論づけたのは…。
はい…。
なーんにもわかんないと言うことです…!
ふ、ふふふ…なるほど…。
笑う場面じゃありません…!
本当に結論づけれなかったんです。
彼は魔力を消すのがうまかったので、魔力の残穢がほとんど残されていませんでした。
それに、彼は悪目立ちするようなことはせず、ただ淡々と仕事をこなし、他の七賢法の人との会話も最低限でした。
そんな人でしたので、情報も少なく…。
で、ですが、私の中で一つのある説があります。
それは何なのでしょうか。
私が考える説は、何か彼の大切なものがキッカケなのではないかと。
大切なものですか…。
はい、例えば物、記憶、人などです。
以前の彼は、少し受け身な部分もありました。
心のうちに何か守るべきものがあるかのような…。
その大切な何かが、壊されたり、脅されたり。
そういった事で、彼は変わってしまったと…。
私はそう考えています。
まぁ、それも根拠のないただの持論なんですけれど…。
いいえ、それでも大丈夫です。
どんな事であれ、彼のことが知れたので十分です。
これでシルビア家の人との話方も変わるってもんよ。
シルビアに行くんですか…あそこは少々勇気がいるところですよ。
そ、それはなぜでしょうか?
あそこは人が多すぎます…あと国民のほとんどが明るい人なので困ります…。
な、なるほど…。
「と、とにかく、これで私が話せることは以上です…」
「本当に、ありがとうございました」
「い、いえいえ…」
「それではまた、次会う機会があれば、リヒトのことも聞かせてくれると」
「は、はい…! わかりました…」
シルビア家か…。
あそこは謎が多い国、後でグラナトさんに話を聞こうかな…。
「お、戻ってきたかラナカッテ」
「お待たせしました」
「遅いぞ〜ラナカッテ」
「うるさいクラン」
「それでは、シルビア家の管理するシルビア皇国へいざ行かん!」
「ところで、シルビア皇国ってどのくらい離れるの?」
「知らないのかラナカッテ、こっから馬車で4日かかる」
そ、そんなに?!
「アークストンとシルビアの間には険しい山がいくつもあってな」
たしかに山々はあるが、そんなに時間がかかるとは思ってもいなかったな…。
「ラナカッテはシルビア皇国には行ったことがなかったよな」
「クランはあるのか?」
「あぁ、一度だけな」
でもあそこはもう二度と行きたくはなかったな…。
「あそこは俺の価値観に合わん」
「国には3つの種類があるのは知ってるよな?」
「何いきなり」
「一人の王がいて、民が大勢いるいたって普通の王国」
「一人の王が国のすべての実権を握っている帝国」
「一人の王が崇拝され、ある意味帝国よりもタチの悪いやり方で国を支配している皇国の3種類ある」
知ってるっつーの。
「シルビアは皇国、つまり一番厄介な政治体制をしている」
「皇国は何か一つでも王に対して粗相を犯せば、王が命令せずとも勝手に民が大勢敵になる」
「ミスるなよ?」
「ふっ、あんたこそな」
別に何があろうと構わないさ。
そうだなぁ、私はあっちでも評価されているんだろうか?
評価されてれば少しは動きやすいだろうし。
「その方がいいよね〜」
「あぁ?」
「立ち話はよせ、早く馬車に乗るぞ」
「はい!」




