第十六話 「リーブの過去」
「僕は昔、アークストン領土ではない、別の領土権の山の中の集落に住んでいました…」
* * *
お父さんは、とても気さくで、誰に対しても優しく、そして強かった。
集落の近くにモンスターが出た時も、率先してモンスター退治に出向いてくれていた。
お父さんは行事が大好きで、いつも事あるごとに何かしらの行事の時はクラッカーを持って、お祝いの品を持ってきたりして、僕を喜ばせてくれた。
でも、ある時に、少しお父さんに変化が起きた。
最愛の妻、僕のお母さんが他界した。
お母さんはずっと病気で闘病生活をしていた。
そんなお母さんを、お父さんは仕事に行く前と帰りに必ず病院に寄って、お母さんと会って話をしていた。
でも、そんなお母さんがいなくなってから、お父さんは少し、いや。
誰が見ても分かるくらい、元気がなくなった。
前まではやっていなかったお酒に手を出した。
生活費の5分の1が、お父さんのお酒代に消えていった。
「お父さん、お酒やめなよ〜」
「うるさい、一人にさせてくれ」
毎回何かしらの言い訳を言って、ことを終わらせる。
今回は一人にさせてくれ、か。
僕はそこから学校に入った。
当時の僕は6歳だ。
学校で学びを得て、将来お父さんの役に立てる子になるんだ!
当時はそう意気込んで、真面目に勉強に励んでいた。
でも、僕が学校に入ってから1年、事件は起きた。
兄が死んだ。
理由は事故死。
通学中、僕に向かって突っ込んでいた車から身を挺して僕を守ったからだ。
正直、兄が僕を突き飛ばしていなきゃ、今この世にいるのは僕じゃなく兄だった。
兄が死んだことで、お父さんはさらにおかしくなった。
お父さんは、みるみるやつれていき、僕に暴力を振るってくることがあった。
「なんで、なんでお前なんだ!」
「なんで優秀な兄じゃなく! 出来損ないのお前なんだ!!」
出来損ない…?
まだ勉強し始めだから、3年も歳の離れている兄と比べるのは違う気が…。
「兄はな、お前ぐらいの歳ではお前の何倍も賢かった!」
「なんでお前は! そうじゃないんだ!!」
殴られた。
人生で一番最初に。
そして、今でも記憶に残ってる。
お父さんの頬への殴り。
あの時の記憶が消えるはずはない。
人生で一番ショックだった。
まだスタートラインで、右左がようやくわかってきたくらいだったのに。
これからやっていくこと、学びの道を否定された。
「お前じゃなく、兄が生きていればよかったのに…」
「どうして母さんが死んだんだ…」
「どうして…! お前だけ生き残った…」
生きていてもダメなのか…当時の僕は必死に自問自答した。
もちろん生きていたい。
毎日そう願って生きている。
それに、兄から父さんのことを託されたんだ。
でも、それ願いは、時期に無駄なものへと変わっていった。
学校を卒業した。
当時の僕は9歳だ。
家に帰った時、また事件が起こった。
僕の貯金箱が壊されていた。
急いで僕はお父さんを探した。
でも家にはいなかった。
夜遅くになり、お父さんが帰るのを待っていた。
「ああ〜…疲れた」
「あ、お父さん! おかえりなさい」
帰ってきたお父さんの片手には、酒瓶があった。
「お父さん? そこ瓶、どこで?」
「あぁ、これか? 店で買ってきたんだ」
薄々わかっていた。
最初から。
「父さんの金が尽きたから、お前の金で買ってきた」
「え……」
「返してよ! 僕のお金!」
「ふざけるな!」
突き飛ばされた。
障子を突き破るほど強く投げ飛ばされ、かなり背中ぎ痛かった記憶。
「お前は、生きているだけで学校のお金もかかる…そのくせ金は少ししか稼がず」
「なんで父さんに金を渡さない? 父さんが管理してあげるのに」
「父さんにあげたら、全部お酒に変わるでしょ…」
わかっていたことだ。
「バカだな〜、父さんが使ってあげてるんだよ」
その後、僕は父さんの言ってる意味がわかるまで永遠と額に暴力を払わされ続けた。
泣いても暴れても、家同士の距離が空いていたためご近所に鳴き声は届かなかったし。
暴れても力の強いお父さんには絶対に敵わなかった、詰んでいたのだ。
翌日、僕は吐き気と痛みで数日寝込んだ。
その間も、ストラス発散とか言って、今度は腹を殴ってきた。
思えばこの頃からだったんだろう。
いつから暴力を振るわれてきたのかと思ったけど、ここからだったんだ。
そのあと、ついに僕の貯金も、お父さんの貯金も全てそこを尽きた。
お父さんは仕事を求めて中心部へ行きたかったが、金を借りる機関には全て借りていて、返せるお金もどこにもなかった。
そのためお父さんは、違う領地へ行って新たな生活を始めようと考えた。
その時はまだ情があったのか、僕を置いていこうとはせず一緒に他の領地へ行こうと提案してきた。
僕は誰にもすがれず、ただ従うことしかできなかった。
従わなかったら暴力を振るわれる。
逃げても追いかけられ、捕まったら暴力を振るわれる。
何もしない、お父さんを刺激しない方が身のためだと、自分に言い聞かせてお父さんと接していた。
何日歩いたかはわからないけど、開けた土地についた。
向こうには大きな建物見えた。
大きな建物のところはいくと、そこがアークストン領地の城下町だった。
さっそくお父さんは、金融機関からお金を借りて新生活を始めた。
でも、仕事をいくら探しても誰からも雇ってもらえず、その度に僕に暴力を振るってストレスを発散していた。
僕も仕事を探して、お父さんからの暴力も、日々耐えていた。
でもお父さんを雇ってもらえるところは一向に見つからず、ついには借りたお金も底をついてしまった。
僕たちは、ついにホームレスになってしまったのだ。




