シーン3:葛藤 ― 自由なき選択
リリアは、震える指先をゆっくりと持ち上げた。
目の前に浮かぶ四つの選択肢――それぞれが淡く、しかし致命的な光を放っている。
一歩、踏み出す。
足元の幾何学模様が波紋のように広がり、彼女の存在を“コード”として読み取るように脈打つ。
リリア(独白):「……選ばなきゃ、終わらない。
でも……選んだら、全部壊れる。」
光の粒が舞い上がり、彼女の指先に触れる。
その瞬間、空間全体がわずかに震えた。
そして――
光の中から、“声”が聞こえた。
アレンの声(残響):「信じてくれ。」
ユウの声:「僕は君を守りたい。」
ルカの声:「感情は因果を超えられない。」
レオの声:「どうせ終わるんなら、笑って終わろうぜ。」
どれも懐かしい。
どれも、確かに彼らが言った言葉。
しかし今のそれは、感情を剥ぎ取られた残響に過ぎなかった。
声が重なり、やがてノイズと化していく。
喜びも、悲しみも、愛さえも、データの波として崩れ落ちる。
「信じて……守りたい……因果を……笑って……」
――世界が、軋んだ。
リリアは耳を塞ぐ。
それでも音は止まらない。
頭の中で、記憶と音声がループし、境界が溶けていく。
リリア(震える声):「選べない……。だって、どの“恋”も、誰かを壊す。」
涙が浮かぶ。
しかし、その涙は空中で光の粒となり、
データのノイズへと溶けて消えた。
その瞬間――
選択ウィンドウが赤く点滅した。
《#Warning: Choice_Refusal Detected》
《#System_Integrity: Unstable》
虚空がざわめき、白の世界がわずかに歪む。
まるで、リリアの“拒絶”そのものが、
このシステムの存在理由を揺るがしているかのように。
リリア(小さく):「……自由って、何……?
選べない私に、何を“選べ”っていうの……?」
答えは返らない。
ただ、どこかで微かな心臓の鼓動音だけが響いた。
それは――リリア自身の音。
まだ、完全には“壊れていない”と告げるかのように。




