シーン5:残された真実
研究室の光が、一つ、また一つと消えていった。
ホログラムの残光が壁に流れ、冷えた空気の中で、機械音だけがかすかに鳴っている。
中央の端末だけが、まだ微かに息づいていた。
ルカはその前に立ち、疲弊した指で録音モードを起動する。
――記録開始。
ルカ(録音ログ):「もし、これが真実なら――人は恋をするたび、世界を壊している。」
彼の声は、ノイズ混じりに揺れた。
唇の端で、苦笑のような呼吸が漏れる。
ルカ:「だが、それでも……俺は、君を証明したかった。」
ルカは胸元にあるデータコアを、そっと抱きしめる。
透明な結晶の中に、かすかにリリアの声が残響していた。
「……ルカ……」
幻聴か、データの残滓か。
どちらにせよ、それは彼の罪と願いを同時に刻む音だった。
モニターに、淡く崩れかけた映像が浮かぶ。
ノイズの海に溶けかけた少女の微笑み。
かつて、実験室で彼を励ましたときの――リリアの笑顔。
その下に、冷たいシステムログが淡々と表示される。
《#Experiment_Complete》
《#Subject_Lilia: Data_Integrity=0.03%》
たった0.03%。
それは、もう戻らない命の残響。
ルカは静かにモニターを見上げた。
まぶたの裏に焼きつく光が、やがて黒に溶けていく。
――そして、最後のランプが落ちた。
機械の心臓音が止まり、世界から音が消える。
残ったのは、彼の息遣いと、沈黙だけ。
理論の果てに残されたのは、ただ一つの“恋の証明”。
それは、誰にも理解されない、美しい方程式だった。
BGM提案:「Equation of Heart」
ピアノと電子音による静謐なトラック。
冒頭は冷たい無機質なコード進行。
中盤でリリアの旋律が重なり、ふたりのデータが融合するような和音を描く。
そして終盤――
ピアノの音がノイズに分解され、
最後の一音だけが、真空の中に消える。




