シーン4:停止する少女
――光が、世界を飲み込んだ。
眩い閃光が収束し、音がすべて消えたあと。
そこに残っていたのは、透明なガラスのような結界。
その中心で、リリアは静かに立っていた。
時間の流れが――止まっている。
風も、息も、まばたきすら存在しない。
ただ、彼女の髪だけが、光の粒を閉じ込めたまま揺らめいていた。
「……リリア?」
ルカが一歩近づく。
だが、結界に触れた瞬間、青白い光が弾け、彼の指先を拒絶した。
モニターが冷たく告げる。
《#Emotion_Data_Freeze》
《#Subject: Lilia → Static_Object》
リリアの唇が、わずかに動いた気がした。
彼女の声が、凍った空気の中で響く。
「ルカ……それでも、私を救ってくれるの?」
その声は、時間の欠片のように震えながら届いた。
ルカは静かに目を伏せ、手のひらを握り締める。
科学者の冷徹な理性と、ひとりの人間としての“痛み”が交錯していた。
「君を壊してでも、真実を残す。」
低く、苦しい声だった。
リリアのまつげが――わずかに震えた。
その小さな動きが、彼女の最後の“生命反応”だった。
そして、完全な静止。
彼女の瞳には、ルカの姿が映っていた。
それは、もう動かぬ鏡の反射。
彼女の世界が止まり、彼の心だけが、痛みを続けていた。




