シーン3:恋の方程式
警告音が、静寂を裂いた。
モニターの光が一斉に赤へと変わる。
警告ウィンドウが次々と浮かび上がり、研究室の空気が震えた。
《#Unexpected_Bond_Detected》
《#Shared_Emotion_Protocol_Active》
「……なに?」
ルカの声がわずかに揺れた。
ホログラムの波形が、二つに分かれて――やがて一つに重なっていく。
リリアの感情データが、彼の生体信号と共鳴していた。
「……ルカ、あなたの心が……流れ込んでくる。」
リリアが胸元を押さえた。
体の奥から、知らない“鼓動”が響いてくる。それは彼の心拍と同じリズム。
「馬鹿な、俺が……感情データに侵食されている?」
ルカの手が震える。
いつも冷静なその瞳に、初めて“熱”が宿った。
モニターの桜色のグラフが、彼の脈動と共に跳ね上がる。
リリアが一歩、彼に近づいた。
その距離が、光と影のように溶け合っていく。
「ルカ……」
彼は唇を噛んだ。
科学者の理性が、心のどこかで警鐘を鳴らしている。
だが、その声はもう届かない。
「これが……“恋”の正体か。」
ルカは静かに呟いた。
「感情データ、因果値、そして――魂の数式。」
その瞬間、装置が閃光を放った。
ホログラムの桜が散り、空間そのものが歪む。
光の粒が二人を包み、境界が消えていく。
コードと心、計算と涙。
すべてが一つに溶け合い――ただ、白い世界が広がった。




