シーン4:消滅
教室の中央で、光が渦を巻いていた。
ノイズの風が机や椅子を巻き上げ、現実の粒子を削り取っていく。
空気そのものがデータの流れに変わり、ひとつの“存在”が消去されていくのが見えた。
リリアは手を伸ばした。
しかし、その指先は――掴む前にすり抜けた。
ユウ(残響):「俺の名前が……消えても、君のことは……きっと忘れない。」
その声は風のように薄れていき、やがて残響だけが空に滲む。
光の渦が静まり、教室には無音が訪れる。
リリアは床に膝をつき、
残された机の上に、ふと一冊のノートを見つけた。
ページが風にめくられ、
そこには震えるような筆跡があった。
「リリアへ――」
その先の文字はノイズで覆われ、判読できなかった。
まるで世界が“続きを書く権限”を彼から奪ったかのように。
リリアはノートを抱きしめ、俯く。
肩が震え、声が出ない。
黒板の上に、冷たい赤文字が浮かび上がった。
《#Object: Yu_Deleted》
《#Rollback_Failed》
《#Memory_Fragment: Lost》
世界が淡々と、彼の存在を“処理”していく。
だが――リリアの胸の奥では、確かにまだ彼の声が残っていた。
リリア(心中):「エラーでもいい……あなたの気持ちは、確かに私に届いたの。」
その瞬間、ノートの上に一粒の光が落ちた。
それは涙か、データの残滓か。
どちらにせよ、もう彼のいない世界で――
彼女だけが、記憶を抱えていた。
BGM: 「Static Memory」
壊れたオルゴールの旋律に、時折ノイズが混ざる。
最後の一音が途切れ、無音。




