シーン3:観測者としてのリリア
空中に浮かぶ“観測リリア”が、思わず叫んだ。
壇上で泣く“もう一人の自分”を見ていられなかった。
リリア:「やめて……! もう知ってる、この結末は悲しいだけ!」
声は確かに発せられたはずだった。
けれど、広場には届かない。
まるで音そのものが拒絶されるかのように、空間が震えた。
《System:干渉検知》
《Observer_002 Access: Denied》
文字が赤く点滅し、世界のフレームが一瞬止まる。
アレンの涙が空中で静止し、桜の花びらも風の中で固まった。
時間が――完全にフリーズした。
リリアは息を呑み、手を伸ばす。
壇上の“もう一人の自分”へ。
けれど、その指先は空を切る。
光が砕けて消えるだけ。
リリア(心中):「届かない……。私はもう、“この世界の住人”じゃない……。」
その瞬間、彼女の掌に一枚の花びらが降りた。
それは、逆再生している。
散りながら咲こうとする、ありえない動き。
リリアはその微かな光を見つめる。
痛いほど美しく、そして儚い。
リリア:「……咲くために、散っていくのね。」
世界は静止したまま、彼女の心だけが震えていた。
その震えこそが、“観測者”でありながら“当事者”である証。
桜の花びらが、彼女の手のひらでゆっくりと消えていく。
やがて画面が白く反転し、断罪の鐘の残響だけが響いた。




