第6話:断罪アルゴリズム シーン1:再び、学園広場
満開の桜が、空の端まで咲き誇っていた。
けれど――その光景はあまりにも既視感めいている。
鐘の音が鳴る。
風に乗って、花びらがゆっくりと舞い落ちる。
まるで、プログラムされた演出のように。
白い石畳の広場。
群衆が円を描き、その中央で一人の少女が光の鎖に縛られていた。
群衆:「裏切り者リリアーナに裁きを!」
女生徒A:「王子様を裏切るなんて、最低!」
教師AI:「記録照合完了。罪状:不忠・虚偽・誘惑。」
桜の花弁が光の粒になって、ゆっくりとリリアの頬を撫でる。
――だが、今回は違った。
彼女はその場に「二人」いた。
一人は壇上に縛られる“過去のリリア”。
もう一人は、空中からその光景を見下ろす“観測者のリリア”。
リリア(心中):「……ここ、覚えてる。
初めて“恋”が終わった日。
でも、なんで私は……外から見てるの?」
風が止まり、時間が微かにずれる。
同じ光景が、数秒間ループ再生されるように繰り返される。
観測リリアの視界に、赤い文字が浮かんだ。
《#Reconstruction_Sequence : Replay_Mode》
《#Event_Data : Judgment_01》
彼女は息を飲む。
眼下で“過去の自分”が震える指先を見せるたび、胸の奥が締めつけられた。
リリア(心中):「あのときの私は、ただ……信じてた。
誰かを好きになることが、罪じゃないって。
――なのに、どうして世界は、それを断罪するの?」
壇上のリリアが顔を上げる。
その瞳が、ほんの一瞬、観測者の彼女を“見た”。
気のせいかと思うほどの刹那――しかし、確かに目が合った。
そして、鐘の音がもう一度鳴る。
再演の幕が、音もなく降り始めていた。




