第4話 自由人の舞台 シーン1:登場 ― 舞台の上の自由人
(BGM:軽やかなギター調 → 徐々に風の音)
屋上の扉を押し開けた瞬間、風がリリアの髪をさらった。
放課後の空は、夕焼けと夜の狭間で揺れている。
鉄のフェンスに寄りかかるようにして、一人の少年が座っていた。
黒い燕尾服に白いシャツ。どこか古びた舞台衣装。
西日を背に、彼――レオはまるで舞台のスポットライトを浴びている俳優のようだった。
「観客ゼロの舞台、開演ってわけか。」
風に乗って軽やかな声が響く。
リリアは一瞬、返す言葉を探した。
「……また演劇の練習? この時間に?」
「練習じゃないさ。」
レオは肩をすくめ、空を見上げた。
橙色の光が、瞳の奥の琥珀色を照らす。
「――これは“リハーサルの終わり”。」
そう言って、彼は穏やかに笑った。
だが、その笑顔の奥にあるものは、なぜかとても冷たく見えた。
完璧な笑み。感情を計算で組み立てたような、美しすぎる虚構の表情。
リリアは知らず息を呑む。
ルカが持っていた“理性の冷たさ”とは違う。
この少年の瞳には、“自由”という名の孤独が映っていた。
――演じることに、疲れ果てた人の目。
(この人……何を、見てるの?)
風が吹き抜け、舞台布がふわりと舞う。
夕陽の光がその輪郭を溶かす中、
レオはまるで舞台の幕が上がる瞬間のように、静かに呟いた。
「さあ――次の幕、始めようか。」




