第3話 観測者の疑問 シーン4:拒絶と動揺
リリアは反射的にルカの手を振り払った。
硬質な音が鳴り、机の上の端末が床へと落ちる。
――ガシャァン。
ガラス片が四方に散り、ホログラムの残光が宙に漂う。
まるで壊れた星の欠片のように、薄暗い準備室の空気を照らした。
リリア:「私は……誰も好きにならない。それが、この世界を守る唯一の方法よ!」
声は震えていた。
その震えを、ルカは見逃さない。
破片の光が彼の頬をかすめ、冷たい瞳の奥で微かな感情が揺れる。
ルカ:「……なら、なぜ涙を我慢してる?」
リリアの唇が動く――けれど、言葉は出てこない。
代わりに、静寂が二人の間を支配した。
床に散らばったホログラムの破片が、断片的に光を放ち、
そのひとつがリリアの瞳を映す。
――ズーム。
壊れた端末のカメラが自動的に作動し、
リリアの瞳を捉えたままピントを合わせる。
そこに映っていたのは、確かに“感情”だった。
拒絶の奥にある、説明不能な痛みと戸惑い。
ルカは静かに息を吸い、目を伏せた。
ルカ(心中):「観測不能領域……やはり、君はこの世界の定義外の存在だ。」
リリアはただ、背を向けたまま立ち尽くす。
散った光が彼女の髪に反射し、淡く揺れて消えた。
その瞬間――ホログラムの片隅に、微かなノイズが走る。
《#Emotion_Variable: 曖昧》
《#World_Stability: -12%》
世界が、またひとつ息を乱した。




