2-2-3 記憶のフラッシュバック
――ホワイトアウト。
世界が一瞬で光に包まれ、色も音も消えた。
残ったのは、鼓動のような低音と、逆回転するBGMの断片。
時間が巻き戻るように、声が遠くから重なって聞こえてくる。
幼いユウ:「ずっと隣にいるって、約束したのに……!」
幼いリリアーナ:「でも、私……もう行かなくちゃ。」
その声に、リリアの呼吸が止まった。
――聞き覚えがある。
消えたはずの“記録外の記憶”。
彼女がObserverとしてこの世界に来る前、
まだ「リリアーナ」だった頃の、ひとつの“約束”。
足元の廊下が崩れ、粒子状になって舞い上がる。
空間が砂のように流れ落ち、代わりに金色の草原が広がった。
風が吹く。
その風さえ、懐かしい。
――夕陽の中。
小さな二人が向かい合っている。
少年は泣きそうな顔で拳を握り、少女は微笑みながらその手を取った。
幼いユウ:「離れたくないよ、リリアーナ。」
幼いリリアーナ:「大丈夫。約束しよう。
次の世界でも、あなたの隣に――」
指と指が絡む。
“指切り”のジェスチャーが、金色のコードとして空間に刻まれる。
その輝きがリリアの瞳に反射し、彼女の瞳孔が微かに震えた。
――映像が途切れる。
現実の廊下に戻ったリリアは、壁に手をついて息を荒げていた。
ユウは目を押さえ、混乱したように立ち尽くしている。
「……今の、なんだ……?」
彼の手が震えている。
記憶にないはずの記憶を、確かに感じ取った。
その胸の奥で、何かが目を覚ましたかのように痛む。
リリアは唇を噛む。
システムウィンドウの片隅で、赤い文字が瞬いた。
《Fragment Restored : Memory_Sector_Yu_03》
《因果干渉率:上昇中》
――また、ひとつ世界が歪んだ。




