2-1-4 痛みの正体
イベントが終わる合図のように、
桜の花びらがゆっくりと舞い散り、甘いBGMが静かにフェードアウトしていく。
クラスの窓から漏れる光、沈みかけた夕陽、
全てが“プログラムされた美しさ”のはずだった。
――それなのに。
リリアの胸だけが、強く、痛んでいた。
(……どうして。壊したはずなのに……)
恋愛フラグはキャンセルされた。
好感度も進行率も、完全にゼロ。
彼女はこの世界の“バグ”を修正したはずだった。
それなのに、心臓の奥で、誰かを想う痛みがじわりと広がっていく。
リリア(モノローグ):
「壊したはずなのに……胸が痛い。
これが、“恋の記憶”……? 私の……なの?」
視界の端で、ステータスウィンドウが点滅した。
透過ウィンドウの文字が、自動的に更新されていく。
#Emotion_Variable: Reactivated
#Data_Integrity: -2%
リリア:「……感情変数、再起動? そんな……私の感情は――」
その瞬間、頭の奥で“カチリ”と何かが噛み合った。
世界の映像が一瞬ノイズを走らせ、
鏡の破片のように“断片的な映像”がリリアの意識に流れ込む。
……血のついた手。
……誰かを抱きしめる感触。
……そして、黄金の瞳で微笑む少女――リリアーナ。
リリアは反射的に頭を押さえた。
リリア:「っ……やめて……!」
夕陽が赤く滲み、空気が歪む。
画面の端に、細い赤文字が走った。
《Fragment Detected : AMARIE_CORE_02》
ノイズが消えると、世界は何事もなかったかのように静まり返っていた。
ミナとカイトの笑い声が、遠くから微かに聞こえる。
だが、リリアの胸の奥では、
ずっと忘れていた“何か”が、ゆっくりと鼓動を打ち始めていた。
――それが“恋”という名の、痛みの正体。




