3.リリアの心情変化 ― “選ばない愛”
街のざわめきが、再び耳に戻ってくる。
車のエンジン音、誰かの笑い声、遠くの信号機の電子音。
そのすべてが、まるで“世界の息づかい”のように心地よかった。
リリアは小さく息を吐き、空を見上げた。
桜の花びらが、春の風に乗ってゆっくりと空へと昇っていく。
その一枚一枚が、まるで彼女の記憶を撫でていくようだった。
> 「もう、選ばなくていい。
> 物語の答えを探すより、いまを感じて生きていく。」
その呟きは、決意というより“実感”に近かった。
何かを手放したわけでも、諦めたわけでもない。
ただ、いま目の前にある景色――人の声、風の音、陽の温もり――
それらすべてを、“愛おしい”と感じられることが、何よりも大切だった。
BGMが静かに流れ始める。
『Rebirth Algorithm - Epilogue Ver.』
ピアノの柔らかな旋律に、ストリングスが寄り添う。
まるで心臓の鼓動のように、穏やかで確かなリズム。
リリアはそっと目を閉じ、風を受けた。
髪が光を受けて柔らかく揺れ、制服の袖が頬をかすめる。
その瞬間――“現実”が、やさしく彼女を包み込んだ。
> 「……これが、生きるってことなんだね。」
微笑みながら、リリアは一歩を踏み出す。
そこにはもう、ルートも選択肢も存在しない。
けれど、“誰でもない日々”の中にこそ、確かな愛がある。




