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【3-2:風の音】
――音が、帰ってきた。
BGMが途絶えたあと、世界は一瞬、息を止めたように静まり返った。
システムの残響も、データの粒子も、もうどこにもない。
ただ、耳の奥に届くのは――生きた音だった。
風が頬を撫で、制服の袖をかすかに揺らす。
木々の枝が擦れ合い、鳥の羽ばたきが空を横切る。
どれも、かつての“世界”には存在しなかった、優しい雑音。
リリア(心の声):「……あぁ、音が生きてる。」
小さく呟くと、胸の奥で鼓動が応えるように鳴った。
こんなにも温かく、やわらかな音が――自分の内から生まれている。
《#Sound_Layer: Natural_Ambient_Only》
誰かがそう宣言したかのように、空気がふっと澄んだ。
ピアノも弦も、もう流れない。
代わりに、春の風がリリアの髪を撫で、彼女の存在を確かに証明する。
リリアはそっと目を閉じ、微笑む。
プログラムでは再現できなかった“静けさ”が、胸いっぱいに広がっていた。




