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ハルベルク家の怪談 その3


うーん。

私は伸び悩んでいた…。

まだ赤ちゃんの私が伸び悩むという言葉を使うのも変な感じなんだけどね…。

魔法障壁ハンドが成功してから、あれこれと試していたのだが、どうにも腕以上のものが作れない。

どうしよう…私の異世界での自由な行動に使えると思ったんだけどな…。


ちなみに今は昼間である。今日は皆忙しいのか誰も遊びにこない。

部屋にはお世話係のメイドのみである。


そういえば最近、私の生活環境に少し変化があった。

私が寝返りができるようになってからか、私のベッドはキングベッド程のサイズに柵が付いたものにグレードアップしていた。おばあちゃんやお母さん、他にもメイドさんが置いてくれた様々なおもちゃも散らばっている。

勿論。魔法についての本と魔獣の図鑑も置いてある。皆あれが無くなると私が不機嫌になる事がわかっているので置きっぱなしにしてくれている。


魔法の本は文字がさっぱりとわからないので、読んでもらう時以外は、魔獣の図鑑の絵などを見ている。

どうやらこの世界にはドラゴンもいるらしい…見てみたいような一生出会いたくもないような…。


あれこれ考えながら私は、少し前から試行錯誤している魔力障壁人間で私を抱っこして自由に移動作戦の特訓が暗礁に乗り上げているのを感じていた。

その時、私は自分のベッドの一角に人形が大量にある事を見て思いついた。


ゼロから形を作る事も自分のサイズより大きい形を作り、さらにそれを制御する事も難しい…、でも人形みたいに形が決められていれば、人形の形に合せて魔力を流し込んで制御できないかしら?


私は大体120センチくらいの大きさの熊っぽい人形に目を付けた。

もらった人形の中ではかなり精巧に作られたものだ。かなりお高そう。。

ただ日本で見かけたような可愛さはあまりない…熊の魔獣の子供?かな?ちょっとリアルさを追求した顔をしているのだ。これはおばあちゃんが置いていったものだ。


最近マスターした寝返り移動で私は、熊の人形に近付いた。

足に触れてみる。うーん結構重量感あるね。案外いいかも?

そのまま熊の人形を倒し、抱き着くようにくっついて魔力を送ってみる。


メイドが心配そうに一度、私の様子を見に来たが、私がじゃれているだけだと確認したらまた壁際に戻っていった。

私は目を閉じながら熊の人形に魔力を送る。そして、熊の人形の形を意識しながら熊の全身に魔力を行き渡らせる。

……

形決まっている分やっぱり簡単に魔力を流し込める気がするわ。

ある程度魔力が熊の全身に自分の魔力が感じ取れるようになった。

よし、次の段階だ。

私は熊の人形の腕を魔力で動かすイメージをした。

すると、熊の人形はそれに呼応するかのように腕を上げた。

おおおおっ!

やった。成功だ!

私はこの成功が嬉しかったのでこの熊の人形に名前を付ける事にした。


名前は…そうね…マンジュウにしよう。

私が日本でよく食べた実家で食べた黒ゴマ饅頭に色が似ていたのだ。深い意味はない。

その後もマンジュウの手のひらを開いたり閉じたり、細かい挙動を魔力を流し込みながら検証していた私は気づいたら寝ていた。


翌日以降、私はマンジュウに魔力を行き渡らせ操作する練習を頻繁にしていた。

最初の頃は日中帯にマンジュウの細かい動きをさせるだけで、疲労困憊し寝落ちしてしまう事が多かったが、いつからか夜中まで魔力が保つようになっていた。

夜中で天気も悪く部屋が真っ暗であればこっちのものである。

今日は、台風も来ているようで風の音も煩い。

そういえば、最近気温が高くなってきた気がするし、夏なのかな?

これなら、乳母やメイドの目を盗んで私がマンジュウにおんぶされた状態でベットの中を自由に歩き回らせる事もできる。

これはXデーも近いわね。

私はマンジュウにおんぶされた状態でニヤニヤが止まらなかった。

それにしても、台風が煩い、なんか雨も降ってきたわね…。

そんな事を考えていると。


ッッドッーーーーン。屋敷のどこかに雷が落ちたようだ。

ものすごい雷音と閃光が窓の外からした。


「えっ?」

誰かの声がした。

私は嫌な予感がして声がした方向を見た。

もはや体の一部と言ってもおかしくない程魔力が繋がっているマンジュウも生きているかのように同じ方向を見た。


「きゃぁぁぁぁ」

やっぱりメイドだ!しまった!

私はまた咄嗟にマンジュウの魔力を開放してマンジュウと共に倒れこむように寝た振りをした。

「何っ!?」

乳母もうたた寝していた椅子から飛び起きた。

やばーい。私は寝てまーす。寝てまーす。そんな事をリクは念じていた。

よくよく考えると隠す理由もわからないが、なんとなく後ろめたく私は寝た振りを決め込む事にした。



………

その日、とあるメイドは今日はリク様の夜勤か…頼むから何事もなく終わって…。そう思っていた。

前回リクがベッドを壊した時、宙に浮いていた時と同じメイドである。


最近のリク様は、恐らくフィアベアであろう子供の剥製に夢中だ。

フィアベアの剥製を乳児のおもちゃとして与えるマリー様のセンスは理解できないが、ここは王国一、大陸一の武力と言われるハルベルク家である。

魔獣の剝製などを幼児から見せて魔獣に慣れさせているのかもしれない。


フィアベアはその特徴として腕が以上に長い、二足歩行で腕を引きずるように歩き足は遅いが、咆哮(ボア)と呼ばれる技を使ってくる。フィアベアの咆哮(ボア)に耐えられない獲物は硬直状態となり、その隙に巨大な爪で首を掻っ切るというBランクの恐ろしい魔獣である。

戦う術を持たない者にとってはフィアベアはあまりにも危険な魔獣である為、フィアベアが出没する可能性がある地域には人は住んでいない。ましてやその魔獣の子供など相当レアである。

その危険さ故に旅をする者は即撤退を選ぶべき魔獣として有名であった為、メイドも知識として知っていた。


一体いくらするのだろうか?考えるだけで恐ろしい品だが、今はただのおもちゃである。


リク様は赤子だからだろうか、フィアベアの剥製である事など全く気にされる事などなくあの剥製にご執心だ。何が楽しいのかしょっちゅうフィアベアの剝製に圧し掛かり、気づいたら寝ている。


そして今日もフィアベアの剝製にご執心だった。フィアベアの剥製を抱くように寝ている。

それにしても今日は嵐が来ていて煩いわね…。

そんな事を考えながらウトウトとしそうになっていた時に急激に雨音が強くなった音で目が醒めた。


…なんだか嫌な予感ね…。

メイドはデジャヴを感じていた。

部屋の中に閃光が一瞬差し込む、屋敷の敷地内で雷が落ちたようだ…。

ただしそんな事より目を疑う光景が一瞬視界に写った。

「えっ?」


なんだがフィアベアの剝製が立ち上がってリク様がおんぶされていたように見えた…。

嵐の雷が再度、部屋の中を一瞬照らす。

その時に見た光景はフィアベアがはっきりとメイドを見ていた。

「きゃぁぁぁぁ」

一瞬でパニックに陥ったメイドは叫ぶとそのまま気を失ってしまったのだった。


幸いにもメイドは後日、執事長にお叱りを受けたが疲労が溜まっていると判断され少しの間夜勤から解放された。今後リクのお世話が増える彼女にとっては束の間の休息となった。






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