予感
「…誰?」
茉莉菜が男の問いかけに返した第一声がこれだ。
「何言ってるの?ぼ、僕だよ。僕ら付き合ってるんだよ?ね?」
「…知らない」
「う、嘘をつくな!そいつ誰だよ!なんで僕以外の男と!」
男は半狂乱になりながらすごい剣幕で怒鳴り散らした。
「アンタ、誰かと勘違いしてんじゃないの?」
さっきから黙ってみていたが、男の様子が尋常ではなくなったので、俺も口を挟みはじめることにした。
こういう場合、凶器を隠してる場合があったりするから一応アレの準備もしておく。
「う、うるさい!お前なんなんだよ!僕の茉莉菜に触るな!」
「いい加減にして!私はあなたみたいな人知らないし、付き合ってもない!私の彼氏はこの琥珀だけなんだから!」
少し顔を赤らめながら、茉莉菜は男へと怒鳴りつけた。
「ふ、ふざけるなぁー!」
男はついに茉莉菜へと殴りかかってきた。
が、男の拳は茉莉菜に当たる前に止まってしまった。
「はい、そこまで。それ以上やるなら…ただじゃ済まないよ」
俺は男の腕を握ったまま全力で力をこめた。
「いいいい痛い痛い痛い!」
男が悲鳴をあげ、目に涙をにじませたところで俺は男の腕を離した。
「ゆ、許さない!お前も茉莉菜も…絶対に!」
そんな捨て台詞を吐きながら男はどこかへ走り去っていた。
「なんだったんだ今の?」
「さぁ?」
「ホントに知らない人?」
「うん」
「ホントに?」
「だから知らないっていってんじゃん!なんなの!さっきも変な質問してくるし」
「悪い。なんかさ変な噂聞いてさ…お前が俺以外の男と付き合ってるかもしれないって」
「はぁ?なにそれ?琥珀そんな噂信じてたの?」
「そんなことは―」
「じゃあ、なんでさっきあんな質問したの!」
「それは…確かめたかったから…」
「やっぱり…信用してくれてなかったんじゃん…」
「…」
「否定くらいしてよ…」
「ごめん…」
「・・・!琥珀なんて大嫌い!」
「茉莉菜!」
俺は走り去っていく茉莉菜の背中をただ見ていることしかできなかった。
追いかける資格も勇気も、今の俺は持ち合わせてなんかいなかった。
結局そのまま俺は帰ることにした。
どうせ家は隣だし、あいつのことだから家に帰ってるだろ。後でゆっくり謝ろう。そうだ、帰りにお詫びの品でも買っていこう。あいつのことだしすぐに機嫌も直るだろ。
そんなことを考えながら俺は家へと歩き出していた。
さっきまで快晴だった空は、いつの間にか鉛色に変わっていた。
「あーぁ、傘忘れた」
雨が降り始めるのにそんなに時間は要さなかった。
家につくころにはあたりが薄暗くなっていた。
茉莉菜になんて謝ろうか考えていると、俺の予想していなかった光景が目に入った。
茉莉菜の部屋の電気がついていなかった。
嫌な予感がした。
鼓動が早くなる。汗がでる。息が荒くなる。
俺は軽く震えた手でインターホンを押すと、出てきた茉莉菜の母に聞いた。
「おばさん!茉莉菜は?」
「それがまだなのよ…琥珀くん一緒じゃなかったの?」
鼓動がさらに早くなる。
嫌な感覚が全身を走る。
「わかった。ありがと」
おばさんに軽く礼を済ませて俺は走り出した。
思いつく場所なんてなかった。もしかしたら友達と遊んでるのかもしれない。
それでも、俺は足を止めずにいた。
「無事でいてくれ」
どうしてだかはわからないが、不意にそんな言葉を発していた。
こんばんは
皆さんお元気ですか?
実は私、先日風邪を引いて寝込んでしまいました。
皆さんも体には気をつけてくださいね。
それでは、また次回 ノシ




