都
楓架が助けてくれたお礼にと信宙に案内してくれることになった
信宙に向かっている途中、泰矢と楓架は話をしていた。
「そういえば泰矢さんはどうして信宙に向かってるんですか?」
「観光かな」
泰矢はさりげなく嘘を吐いた。楓架は急に足を止め、泰矢の顔を見た。
「え、観光なんですか」
「あ、あー観光だよ」
「そ、そうですか」
泰矢は目的に気づかれたのかと焦り、楓架はつい反応してしまったことに後悔して、しばらく沈黙が続いた。先に口を開いたのは楓架だった。
「信宙といえばやっぱりうなぎとか食べに行くんですか?」
「うなぎ、そうだな。うなぎを食べに行くのもいいな」
「えぇ、あそこのうなぎは美味しいんですよ」
楓架はうっとりした。その後は信宙について話し合っていた。それから何事もなく数日が過ぎて、日もとっくに落ちた午後7時ごろようやく信宙についた。そこは洋風と中華を織り交ぜたような幻想的な建物などが明かりで照らされていた。泰矢は目を奪われていた。楓架は泰矢の手を引っ張り歩き出した。
「泰矢さん、見惚れるのはわかりますけど早く宿を探さなきゃ私たち野宿になっちゃいますよ」
「ん?あ、あぁ、すまんすまん。そうだったな」
その後しばらく宿を探していたがどこの宿も満室で野宿するしかないのかと思っていた頃にようやく空きがある宿を見つけることができた。泰矢は受付に聞く。
「すいません。空いている部屋ってありますか?」
「はい、ありますよ。何名様でしょうか?」
泰矢と楓架はそれを聞き顔から抜け出ていた生気が少しずつ戻っていくかのように笑顔を浮かべ、ハイタッチをした。
「「よ、良かったー」」
「あの、それで何名様でしょうか?」
「あ、すいません。えっと、二人です。」
「二名様ですね。部屋は別々にするおつもりですか?」
「はい、その予定です」
少しの間がが生まれ、受付が言った。
「大変申し訳ございません」
「え、もしかして」
「はい、部屋が一部屋しか空いていなくて」
泰矢は呆然とした。楓架が店員に聞く。
「あのその部屋ってベット二個ありますか?」
「はい、二個ありますけどベットではなく布団なんですよ」
「布団が二個ですか」
楓架はしばらく考え込んでから言った。
「それでお願いします」
「かしこまりました。213号室です。」
受付から楓架は鍵をもらい、泰矢を引っ張って部屋に向かった。
「それじゃあ行きますよ、泰矢さん」
「え、あぁ、別の宿探すのか」
「いえ、ここの宿で泊まります」
「え」
部屋に着くと、食事や風呂などを済まして、布団の中に入り寝たが泰矢は眠れなかった。
(気ッマズッ!何話せばいいんだよ!てか寝るから、話すとかないけどね!やべー、なんか落ち着かねぇー!)
「泰矢さん、まだ起きてますか?」
そんなことを考えていると背後から楓架が話しかけてきた。泰矢は驚きつつも冷静に答えた。
「起きてるぞ」
「それなら聞いてもいいですか?」
「いいぞ」
「ありがとうございます。あなたはここにどのくらい滞在するおつもりですか?」
「そんなことか。あー、そうだな」
泰矢は少しの間黙り込み考えた。
「早くても、明後日にはここを発つ予定かな」
「そうなんですね。ならそれに私も着いて行っていいですか?」
泰矢は体を起こして楓架を見て言った。楓架はそれに立ち上がって言う。
「何でそうなる!?」
「え、だって私一文無しで行くあてもないんですよ。それに道案内を任されたわけですから」
「確かにそうかもしれないがここで契約は終了のはずだろ」
「いえ、どこまで案内して欲しいとかは決めてませんよ」
「た、確かにそうだが、俺の目的は旅なんかじゃない!この地を治めている異能者の暗殺だぞ!それを聴いてもなおついてくる気になるのか」
楓架は胸を叩き、自慢げに言う。
「えぇ!大丈夫です!正直あなたと着いて行くのとあなたとこの地で別れることになっても私は危ない橋を渡るので、生存率が高い方にかけるのが得策だと思いますから」
「確かにそうかもしれないが…」
泰矢は楓架の目を見るが透き通っていて迷いのない目をしていた。
「やっぱ、頭おかしいだろ」
「な、おかしくないですよ」
楓架はムスッとした。泰矢は笑いながら考えた。
(使えるコマを増やしとかないとあいつらに届くかもわからねぇしな。それにこいつは命令されたことをしているだけのような気がするし、そう滅多なことをしないだろ)
泰矢の口が笑う。
「いいぜ。着いてきても」
「え、本当ですか!?」
「あぁ、本当だ」
「ありがとうございます!」
楓架はさっきの怒りはどこにいったのか嬉しそうな子犬のように元気よく言った。
そしてその晩、また新しい契約が結びなおした二人は久しぶりの布団と悩みが少し晴れたこともありぐっすり眠ることができた。




