旅立つ
泰矢と佐烈の戦いが終わってから二日後がたち、早朝に泰矢は目を覚ました。
「ここは、どこだ」
泰矢は体を起こし、あたりの様子を確認した。隣に机に突っ伏して寝ている楓架が目につき、近くにあった毛布をかけてあげた。そして泰矢は怪我が痛むため、またベッドに横になり戦いのことを思い出していた。
「あれが最初の異能者か、強過ぎだろ」
泰矢は安堵すると共に絶望した。そんな時、楓架が起きた。楓架は目を擦りながら泰矢を見た。
「おはようございます、泰矢さん」
「あぁ、おはよう。ここはどこなんだ?」
「ここはホテルです」
「そうか、迷惑かけたな」
「迷惑だなんて、そういえばいつ頃起き…」
楓架はしばらく固まり状況を整理した後、泰矢に涙を流しながら抱きついてきた。
「泰矢さん生きてるー、起きてるよー!」
「楓架、痛い、痛いから、離れて!」
泰矢の体はボキボキとなり苦しむ声は楓架には聞こえず、しばらくカオスな状態が続いた。
落ち着いた楓架は謝り、朝食を泰矢に用意した。そして二日間眠っていたこと、お金は佐烈の宝物庫にあったものを使っていることを楓架は泰矢に話した。
(裏でそんなことしてたのか。ありがたいけど複雑だな)
泰矢は反応に困り、話を変えた。
「楓架、俺をどうやってここまで運んでくれたんだ?」
「あ、それはですね…」
楓架が話してくれたことをまとめると、泰矢が壁を破ったことで城全体が地響き、崩れるかもと思った楓架は城を出ようと走るが、泰矢のことが心配になり引き返した。そこで血の池に倒れている泰矢は見つけて、引きずりながらも病院まで行こうとしていたが、途中でオールバックの店主と会い、ホテルに寝かせるまで手伝ってくれた。ただ店主と会うまで周りの人に変な目で見られたらしい。泰矢は自分がどのような状態で街中を引きずられたのかを想像しとてつもない羞恥と罪悪感に襲われ、頭の中で悶えた。ただ表向きは平静を装って言った。
「色々とほんとにごめんな」
「いえいえ、大丈夫ですって。あ、けど店長がお元気になったら顔を見せに来てくださいって言ってましたよ」
「なら今日の昼に行くか」
「泰矢さん。だめですよ!」
「え、なんで?」
「なんでって、骨にひびが入ってるかもしれないんですよ!最低でも一週間は安静にしてください!」
「は、はい…」
楓架の圧に泰矢はおじけついてしまった。
(たしかにこのままで行ったらやばいか)
そう思いながら泰矢は全身包帯巻きの体を見た。そして、泰矢はこの一週間、基本部屋で寝ていた。しかし、世界は動いていた。ある者は歓喜し、ある者は苦悩し、信宙の王が敗れたのではないかという噂は瞬く間に世界中に知れ渡った。一方、多分怪我の治った泰矢は楓架と定食屋のオールバックにきていた。
「あの時はお世話になりました。」
「泰矢さんですね。お元気そうでなによりです。席はご自由にどうぞ」
「商売上手ですね」
店長は笑顔で軽く会釈した。泰矢と楓架は前回と同じ席に腰を下ろした。そして、前回と同じように楓架が注文した。その待ち時間中、泰矢は何かを思い出し楓架に聞いた。
「そうだ、楓架。異能惧ってなんだ」
「あ、そういえば話してませんでしたね。えっと、結論からいうと異能惧についてはほぼ知識がありません。ただ、知っているのは異能惧は人を選び、選ばれた人はその異能を扱えるということです」
「つまりは俺の謎も解けないということか」
「そうなりますね。あと、異能惧は慣れないと体への負担が自分が有している異能よりも尋常じゃないので、そこは慣れといてくださいね」
「あぁ、努力しよう」
そして、しばらくして料理が運ばれてきた。二人は食べるが、楓架が先に食べ終わり席を立った。そして店長に話しかけた。
「色々とありがとうございます。苑平さん」
楓架はそう言いながら、お金を出した。店長、いや苑平はお金を受け取り、楓架に白い箱を渡した。
「次はどこに向かうおつもりで」
「そうですねー、できるなら東周に向かいたいですが、泰矢さんが決めるのでまだわかりませんね」
「なるほど、ではここで決めていってください。ご報告しないといけませんので。ただ客ゼロで内容が筒抜けなので教えに来なくとも大丈夫ですよ」
「了解です」
楓架はそう言い、席に戻って行った。席についた楓架は真剣な眼差しで食べている泰矢を見ていた。泰矢はそれに気づき、前の既視感から箸を置いた後、縮こまった声で言う。
「あの、楓架さん、何か用ですか」
「泰矢さん。次の目的地はどこにするんですか」
「え、目的地?」
「はい、ここを離れて次はどこに向かうかまだ決めていなかったので」
「そういえばそうだな。約束もあるし、楓架どこ行きたい」
「うーん、東周ですかね」
「東周かー」
東周、そこは世界への扉と言ってもいいほどの国交が盛んな国だ。そして首都の東周はこことは人口が比べられないほど多い、そうなると警備の数も自然と多くなる。
(泉琥から色々聞いているとはいえ、実際に見てからでも遅くはないか)
と、泰矢は眉をひそめながらも決心した。
「楓架、東周行くか」
「はい!」
楓架は嬉しかったのか満面の笑みで答えた。
そして泰矢と楓架の二人は会計を済ませ、信宙で事務処理などを済まし、東周に向かい歩き出した。
ちなみに国と首都の名前が同じなのは、国の名所が異能者がいる首都しかないため、人々が国よりも首都をさして言い始めたためである。
ちなみに泰矢を引っ張ってできた血のあとは雨でだいぶ流れたけど、まだ残ってるよ




