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赤の出城

 天道は相も変わらず地図を眺めていた。たまに部屋の中をうろうろしていたが基本的外に出ずに引きこもっていた。すると、外が騒がしいことに気づき、様子を見るため廊下に出た。通りかかった一人に声をかけると


「ミッドの街がゼノ軍に包囲されました!」


 それを聞いた天道は自然と戦闘態勢に入った。邸内で一番騒がしい場所を探してそこに入室した。そこでは作戦会議のようなものが開かれており、いかにも将軍と呼ばれていそうな初老の男性が複数とバトラーのような服装をした男が一人、ライサとエルナがいた。


「誰だね、その男は」


 初老の男性の一人が怪訝そうな顔で発した。文字通り部外者が空気を読まず入ってきたので無理はないと天道は思ったが、わざわざ顔に出さなくてもとも思った。


「この人は縁があって屋敷に住まわせている旅の人です。昨日のゼノ軍の先兵掃討の貢献者です。天道さん、どうしました?」


 恐らくここでの最高責任者のエルナが簡単に紹介してくれたので天道の手間が省けた。天道は遠慮なく完全に部屋に入った。


「戦と聞いて、居ても立っても居られなかなったので、お役に立とうかと」


 先程の初老の男性、ダブク将軍が鼻で笑った。


「こんなどこの馬の骨とも知らない若造がしゃしゃり出るな。昨日のことは例を言うがここは引っ込んでもらおうか?」


 ダブクから見たら天道のイメージは上記の通りだった。まさしく手柄をあげたがる戦場を知らない若造。叩き上げで将軍になった自分とは雲泥の差というよく言えばプライドがあった。


 エルナは続けて何かを言おうとした、ダブク将軍を制止した。


「何か策があるというなら申してみてください」


「では、遠慮なく」


 一 敵の配置


 天道はミッド周辺の敵の配置図を見た。真っ先に目に入ったのは南の壁一帯に敵の戦力が集中していた。


「ここだけ敵の数が多いな」


 敵の戦力は一万といったところ。その内南の壁一帯に配置されていたのは約七千だった。


「そこはミッドにおいて弱点とも言うべき場所です。敵が多いのはそのためでしょう」


「こちらの戦力は?」


「五千五百です」


 今天道にはいくつか必要なものがあった。時間と人員だ。十分かと言われたらそうではないが、それでも出来る限りのことをしなければと考えた。


「エルナ。ここの防御だが、俺に任せてもらえないだろうか?」


「わかりました。お願いします」


 エルナが二つ返事で了承したので室内はライサも含めて困惑が走った。


 二 飛び道具


「壁上の大砲を合わせると、十門。魔法使い、魔術師が三個大隊。以上になります」


 なお、これらは天道が見聞きしている異世界の言語を本人且つ彼の世界で最も馴染みのあるものに変換したものである。天道は大砲があることに驚いたが、何より飛び道具が不足していることに頭を悩ませた。それらを埋め合わせるものがだった。


「天道さん、どうですか?」


 エルナの言葉に天道は不謹慎であるが心の内では燃えていた。一万対五千五百。劣勢だ。しかし、天道という男は逆境にこそ燃える体質だった。ちなみにこれは彼女の育ての親の理子も似た体質であり彼女は難しい仕事ほど燃える体質である。


「よし、やろう。すまんがエルナ、ライサを少し借りたい。最終的に部隊には合流させるから」


 翌日 ミッド南壁周辺


 ゼノ軍は驚愕した。陣を敷いたのが夕方からであり、その晩は戦勝の前祝いをしたのだが、朝目覚めてみると南壁に見たことない横二百メートルはある広大な建物が出現していたのだ。その手前には堀が掘られており行手を塞いでいた。


「タイチョウ、ドウスル?」


 ゴブリン軍の隊長は暗黒騎士のクス。種族は人間だが悪魔崇拝のカルト教の出身であり、ゼノ軍に多額の援助をしていた。そして戦闘力のある者はゼノ軍で名をあげていた。クスもその一人である。


 歴戦の戦士であるクスだったが、目の前にある光景は初めて見た。すると


 ーーこれは……何の匂いだ?


 どこからか何かの匂いが流れてきた。風と共にやってきたそれの正体はその後すぐに判明した。


 ゴブリン達がたちまち興奮しはじめて南壁の方に突撃して行ったのだ。


「まさか……血の匂いか!?」


 ゴブリンの習性である。野生の獣同様血の匂いに誘われて集まる習性があった。それは普通のゴブリンからホブに至るまで考えうる全種のゴブリンが該当した。それにクスが気づいた時瞬時に悟った。


「罠だ!」


 しかしゴブリンの突撃は止まらない。まっすぐ、蟻のように突撃して行った。


 ゴブリンが血の匂いに誘われて南壁にやってきて最初に立ち塞がったのは堀。しかし、本能のままに誘われたゴブリンはこの先待っている獲物の血に抗えずただただ堀に降り、登りはじめた。中には普通のゴブリンを押し除けて我先に上がるホブゴブリンもいた。


「天道さん、まだですか!?」


 アリスがすぐそこまで来ている女の敵を前に天道を見ながら焦りを感じる。この作戦が失敗すれば最後を想像するのは容易い。


「構え」


 天道がたった一言そう言うと、何もなかった壁が開いた。するとその暗闇の奥が僅かに白く輝きはじめた。


「撃て」


 そしてまたもう一言天道が命じると暗闇からゴブリン達目掛けて白い光線が放たれた。普通のゴブリンには致命傷は免れない穴が空き、ホブゴブリンにも腕や肩が抉れるといった被害が出た。


「止めるな。絶えず撃ち続けろ。魔力が切れた者は第二陣と交代しろ」


 太陽城。そう名付けられたこの城は天道がたった一晩で完成させた一夜城だった。城とは言ったが天守閣や石垣が見受けられないその姿は出城と言った方が適切である。天道は日本の歴史においてこの様式で戦い、多大な戦果をあげた戦を思い出し、実行したところ見事に成功した。


 出城の壁の裏には魔法使い、魔術師が待機しており、等間隔で魔法陣一個分の穴がある。そこからゴブリンに最も効果的な貫通魔法を絶えず放つ。


「隊長!敵が下からも来ます!」


 兵士の一人が部隊長である天道に向けて叫んだ。思ったより進行が速かったがそれでも天道は持ち前の泰然自若とした態度で対処した。


「第二戦術、放て」


 貫通魔法が放たれているエリアに加え両サイドには二人の兵士が見張りをしていた。魔術師、魔法使いの間と見張りの床にすかさず人が入ると床が開いた。その手には紐のついた石が握られており、その紐の先から火花がジリジリとついていた。それが紐の最後の部分に到達する前に床の下にいたゴブリンに投げつけた。すると次の瞬間、大きな爆発が太陽城の下から発生した。


 天道は大砲があると聞いて有頂天になった。大砲があるということは弾を撃ち出す火薬があるということだ。火薬があるなら銃弾や銃を作ることだって出来なくはない。ただ、それを思いついてもあまりにも時間が足りないのと、この世界の文明のレベルから見て天道のよく知る銃を作らせるのは難しく良くて火縄銃が関の山だろうと考えた。


 しかし天道が見たところこの世界はネジの一本も作られていないようだった。シャンデリアを吊るしていたのはなんと魔法で見せているものだったし。なので、飛び道具の確保は断念せざるを得なかったが、火薬を最大限に活かしたいと考えた天道は火薬がたっぷり詰まった簡易型の手榴弾を作らせた。外側は石で覆って中に火薬と金属片をたっぷり詰められたそれは爆発と同時に石と金属片が飛び散り、爆発だけでなく諸々のダメージも負わせられる代物だった。


 ゴブリン軍は血の匂いから火薬の匂いを嗅ぐことになった時にはすでに遅く、七千いた兵士はすでに三千弱まで減っていた。


 クスが撤退を指示する前にゴブリンは恐怖で脱兎の如く戻ってくるのが見えた。すると、堀から少し離れた地面が開くと、中から一騎の馬とそれに跨っていた赤い外套を纏った男が現れた。鎧も何も着ていない、ただ手には刃が反っているように見える変わった形の剣を持っていた。


 天道は刀を持ち、馬に跨り戦場に現れた。馬でゴブリンを轢いたりしながら、事前にわかっていた敵陣にまっすぐ突撃して行った。それに続いて赤い鎧を身につけた兵士が次々と現れた。その兵士は天道とは違い鎧を着ていたが、全員赤色に染められていた。


 クスは突撃してくる赤い外套の兵士を見て思い出した。


 ーーあいつが報告にあった。赤鬼!


 ミッドを襲撃したゴブリンの先兵を監視していた兵士の報告では返り討ちにしたのは変わった剣を持った赤い鬼のような男。クスの兵士として直感が目の前にやってくる男がそうだと告げた。


 天道の国では昔、赤い鎧を纏った精鋭部隊がいた。常に敵目掛けて突撃していき、勝利と武功をほしいままにした。天道はそれにあやかり、普段は黒である服装をこの時ばかりは赤色の外套を着た。そして、持っている刀はゴブリン襲撃時に借り受けたのと同じものだった。


 昨晩


 天道の計画した太陽城の工作は魔法を使った建築により、彼の予想を遥かに超える速さで完成した。その後は作戦までの動きを兵士に徹底的に叩き込ませるための訓練を行っていた。そんな中である。


「隊長、隊長にお会いしたいという方がいます」


 エルナの関係者や兵士は簡単に通ることができるが、逆に一般人や戦闘に関わりのない者は会えないことになっている。天道に会いたいという人物は一般人であるということは本人も一瞬で察したが、まだミッドに来て日が浅い自分に会いたい一般の人間とは誰なのかと疑問だった。


 やってきたのは確かに彼と関わりのある人物だった。


「やあにいちゃん。久しぶりだな」


「あんたは確か……鍛冶屋の」


 ゴブリン襲撃時、天道に刀を渡した鍛冶屋だった。その手にはあの時の刀が握られていた。


「実はこれを君に渡そうと思ってね」


「良いのか?あんたの家の家宝なんだろ?」


 天道は前世ではその人徳によって近所から全国まで色々なものをもらっていたが、さすがに家宝をいただいたことはなかったので戸惑った。


「ゴブリンと戦っている姿を見た時、家の奥で毎年研がれる剣より、人を守るために使われた方が剣にも存在価値が生まれる。あの時の君にそれを見出したから、君に託す」


 鍛冶屋の意思が本物だと天道は察して、それを受け止める思いで刀を受け取った。


「もちろん、入念に研いであるからいつでも万全の状態で使えるぞ」


 天道は鞘から一瞬だけ刀身を出して見た。自身の顔が反射して映るほど輝いていた。まさに新品同然の状態だった。その時鍛冶屋は付け加える形で言った。


「それともう一つ。あの時は見ることが叶わなかったが、その剣には特殊な力があるみたいなんだ」


 現在


 天道が敵陣の目の前までやってきた時、大将を守るための兵士が次々と前に出てきた。天道はそれに脇目もふらずただただ突撃して、軍団の中で異なる装備の兵士を見つけると馬から真上に飛び上がり、慣性の法則を利用して敵将に蹴りを入れて落馬させた。


 鎧を着ているにも関わらず、紙が風に飛ばされるように吹き飛ばされたクスは当然怯んだ。体制を立て直すために起きあがろうとするともうそこには単騎で突っ込んできた敵がすでに剣を構えていた。


「な、なんだ……」


 天道は敵が何かを発する前に敵の首目掛けて横一文字に刀を振るった。切れ味があまりにも研ぎ澄まされていたおかげであっさり首が斬れた。無論、刀の良し悪しもあるが、天道の技量も大いに関わっている。


 天道の周りは騒然としていた。敵陣に突撃してほんの一時間ほどで撤退。そしてその数分後には司令塔が討ち取られた。逃げるものもいたが少なからず、天道を討ち取ろうと向かってくるゴブリンもいた。


 その中の一人が棍棒振り下ろそうとした。しかし、天道は微動だにしなかった。何故なら棍棒が天道の頭に当たる直前十センチくらいのところで防がれた。ゴブリンから見ればまるで壁のようなものに当てた感覚だった。


 天道が手にした刀の能力。それは自他を自動で守るバリアを与えること。いわゆるオートガードである。


 バリアが作動し、敵に隙が生まれたところを天道は見逃さなかった。すかさず、ゴブリンの胴を斬り上げ、次から次へと向かってくるゴブリンを撫で斬りにした。あとは逃げるゴブリンだけだったので天道は無闇に追わなかった。


 エルナは太陽城とは反対の北壁で魔王軍の対処をしていた。ライサの部隊が激突したところで自分が挟撃する手筈だ。しかし、しばらくして魔王軍は撤退を始めたのだった。すると、そこにとある知らせが入った。


 南壁の魔王軍壊滅。敵将クスが死亡。


 翌日 鍛冶屋 サーロ


 天道は昨晩の戦場パーティーに小一時間顔を出した後アリスに魔法でではあるがあるものを鍛冶屋に持って行った。


「ごめんください」


「お、にいちゃん!聞いたぜ。昨日は大活躍だったらしいな」


 鍛冶屋の主人から受け取った刀のおかげで天道はかつて夢にまで見たような戦い方が出来たのだった。


「その節はどうも。今日は折り入って作っていただきたいものが」


 そう言って天道は小さな金属を出した。


「なんだこりゃ」


「これはネジというものなんだがね」


 エルゼル邸 天道の部屋


 街から戻り、部屋に入ると奇妙な光景が広がっていた。持ち込んだ覚えのない本の山が出来上がっていた。本の大きさは大小様々であり、小さいものは日記やノートほどだったが、大きいものだと百科事典ほどまであった。


「なんだこりゃ」


 あまりにも物が散乱としていた光景に天道は逆に冷静になった。そしてその本の山をかき分けるように這い出てくる者がいた。


「すみません……手を貸していただけますか……?」


 這い出てきたのはアリスだった。なんとも女神とは思えない情け無い、目を覆いたくなるような光景であった。そのため天道は思いがけずため息を吐いた。その後にアリスは救出された。


「何やってんだ?仮にも俺の部屋で」


 当然の質問をアリスに問いかけた。アリスは服の汚れを風の魔法で払いながら答えた。


「天道さんがおかえりになるまで魔法や魔術の勉強をと思いまして。時短のためここから本を転送させているうちに気づいたらこの量に……」


 それを聞いた途端天道の奥から不思議と笑いが込み上げて、たまらずそれを抑えることなく解放した。当然目の前でゲラゲラと笑う天道を前にアリスは困惑した。


「わ、笑わないでください!」


 天道はデジャヴを感じていた。仕事はできるが私生活やその周りがダメなのはかつて彼と親しかった理子や小神子がそれだったからだ。


 笑って満足した後天道は片付けを手伝うことにした。片付けながら本の表紙を見ていた。


「見たところ一冊につき一つの呪文が載ってるみたいだが、一個の呪文を覚えるのにこんなにページがいるのか?」


「呪文には二つの唱え方があります。口で唱える口頭呪文と口ではなく手で唱える無口頭呪文があります。前者は口上を言うだけで済みますので習得は簡単ですが、後者は口で唱えない分手の動きで唱えますので習得が難しいのです。ページが多くあるのはその手の動きから他の呪文との応用、派生、上位呪文があるからですね。あとは……」


 いつのまにか天道は目を輝かせながら聞いていたのでアリスは驚いた。彼女にとっては魔法、魔術は珍しくもなんともないが、科学が発達した次元の地球で生まれた天道にとっては未知の世界かつファンタジーの中だけにしかなかったものだからだ。


「その……天道さん……そう、マジマジと見られると……恥ずかしいのですが……」


 アリスはジッと見られることに慣れていなかったのか、顔を赤くしながら天道に恥ずかしそうに言った。つい天道も話に夢中だったことに気づいて我に帰った。


「あぁすまん。それにしても魔術か……俺にも使えるかな」


「それですが……天道さんは魔法も魔術も使えません……」


 この時ショックのあまり天道の思考が三秒間停止した。アリスもそのショックに気づいた。そして天道は思わず情け無い声を出した。


「ええ……マジで……?俺もフレアとかパワーをメテオにいいですとも!守護霊の呪文とか撃ちたかったのに……」


 動機としては完全に不純であったが、それらを無視してアリスは答えた。


「えっとその……天道さんは元々科学が発達した地球出身ですので、唱えるのに必要な魔力炉を身体に備えていないので」


 これがさらに天道にショックを与えた。アリスはいつもの癖で質問に答えたつもりだったがそれが裏目に出たと知ると急いでフォローをした。


「で、ですが、私や魔法、魔術を使える人からバフとかはもらえますので!」


「逆に言うとデバフも貰うんだろ……?はあ……せっかく異世界に来たのに現世と変わらずタイマンで勝負しなきゃいけないのか……せいぜいこの刀がオートガードの役割をしてくれるだけマシか……」


 魔法、魔術が使えないと知っただけで天道はかつてないくらいの精神ダメージを受けた。それほどまでに未知のものへの憧れを持っていたと知ったアリサは何か元気にさせる方法を模索した。


 残念ながらたった一つ思いついただけであとは何も出てこなかった。それに思いついたと言うよりは思い出したと言う方が適切だ。はるか昔同僚から教わった男を喜ばせる方法というものだ。


「げ、元気出してください!そ、そうだ!わ、私のむ、胸触りますか……?」


「遠慮する。全宇宙広しとはいえ瀬奈のおっぱいが一番いい」


 アリスは自身の渾身の作戦をあっさりと無に帰された。あまりにも触る間もなく即答した天道であったが、ここで彼はあることを思い出した。


「そういえばお前、俺の帰りを待ってたらしいな。何のようだったんだ……?」


 アリスは天道の今のテンションのまま伝えるのは億劫だったが元々どんな形であれ伝えるつもりだったので想定外だったが口を開いた。


「以前、これからやりたいことで天道さんのおっしゃっていたことを考えていたのです。確かに、あなたの言っていた通り魔王討伐には私のエゴが少なからず絡んでいます。正直言うと、他人のためというのはただの建前でした。ですが、本心は他人のためだと願っているんです!だから、天道さんの旅をしたいという願いを否定する権利は私にはありません。あの時はごめんなさい。お別れをする前にそれだけお伝えしたかったのです」


 アリスの言葉を聞いて天道は俯いていた。三秒ほどして頭を上げてアリスの顔を見た。


「実は俺も言いたいことがあったんだ。アリス、悪いが俺の旅をしたいという目的は変わらない。だが、旅の途中に魔王を倒すという目的があっても悪くない」


 一瞬表情が曇ったアリスも最後の言葉を聞いてハッとなった。


「地図を見ていたのってもしかして……」


 天道は先日地図を見ていたことはアリスも知っている。その時はどの街を訪れようかと見ていたのだとアリスは考えていたが、実際のところ違っていた。


「さあ、なんだろうな」


 天道ははぐらかした。


「さて、そうとなれば準備しなければな」


「はい!」


 エルゼル邸 エルナの部屋


「あの……言うのが遅れて申し訳ないのですが、今すぐに旅はできません」


 エルナにこれからどうするかの報告をするため部屋を訪れた二人だったが、エルナの言葉を聞いて二人の頭にはクエスチョンマークが浮かんでいた。


「街と街を行き来するにはギルドの会員である証明が必要になりますので。お二人にはギルドに所属してもらわなければならないのです」


 二人はまだミッドを出れない。

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