表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインらしきものは去ったけどもうちょっとだけ続きます!  作者: 馬面
第3ゲーム:ブレイク

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/45

第39話 新たな疑惑

「今日は本当にありがとう。話して貰った内容は“責任”を持って記事に反映させて貰うよ」


 最後にインタビュアーを務めた新聞部部長が一礼してこの場はお開きとなった。


 でもまだ終わっていない。大事な話が残っている。


「あの……」


「勿論わかってるよ。来会君のことは向こうで話そう」


 部長も忘れてはいなかったらしく、俺と姫廻に目配せして応接室の方へと誘導してくる。他の人たちに聞かれないようにとの配慮だろう。


 月坂先輩とはここで一旦お別れだ。


 さっきの俺の言葉を先輩がどう感じたのかは、外側からではわからない。少なくとも表情に変化はなかった。


 後でLINEします、返事はその時に聞かせて下さい――――と口に出して言えればいいんだろうけど、まだ先輩の本心を測りかねてるところあるから中々勇気が出ない。


 ま、とりあえずストーカー疑惑を持たれている訳じゃなさそうで、そこは一安心だ。そんな疑いをかけてる奴を庇ったりはしないだろうし、嫌われてもいない……と思う。多分。


 でも、だったらなんでコンビの解消を提案されたんだ? ストーカーが俺を彼氏だと勘違いして発狂するかもしれないって危機感を抱いたとか?


 うん、ないね。それはない。流石に自惚れ過ぎだ。


 それに、つきまとい行為をしている奴が全員漏れなく攻撃的とは限らない。逆に彼氏のような存在がいることで幻滅したり諦めたりする奴だっているだろう。寧ろそっちの方が多そうだ。


 ……待てよ。


 だったら、まさか来――――


「何ボーッとしてんの篠原。早く行こ」


「あ、ああ」


 いつの間にか月坂先輩は視界から消えて、姫廻の顔がドアップで映っていた。一瞬ドキッとした自分が情けない。


 ま、いいか。


 先輩には後でLINEすればいいし、ここは一旦切り替えて来会の話に集中しよう。





「……ん?」


 応接室に入ると以前の記憶が蘇ってイラっとしそうになったけど、それも一瞬で吹き飛んだ。


「インタビューお疲れ」


「あ……来会?」


 まさかの本人登場!


 まあ神出鬼没はいつものことだからな。驚くほどのことじゃないか。


「ふぇ? なんで? え? 待って。ちょっと待って。わかんない意味わかんない」


 ……免疫がない姫廻はえらく狼狽してるな。にしたって意味はわかるだろ。こいつこの件の当事者だぞ?

 

 姫廻、来会のことになるといつも平常心を失うんだよな。恋愛感情じゃないみたいだけど、なんか推しとか言ってたしアイドルを見るような感覚っぽい。俺が月坂先輩に抱いている感覚と近いのかも。


「僕が一方的に調査結果を話すだけじゃ、実りある話になりそうになくてね。来会君には先だってインタビューしていたから、その時に同席をお願いしたんだ」 


「陰で自分のこと色々話されるの、あんまり好きじゃないから」


 確かに来会はそういう性格だ。マイペースなようで割と普通の感覚の持ち主。陰口なんて気にしない、ってタイプじゃない


「そういう訳で、君たちが彼女について調べてようとしていたことは全て打ち明けてある。勝手なことをして申し訳ないが、黙っていてバレてしまうよりは良いだろう?」


「俺は別に問題ないですけど」


「……」


 姫廻は脂汗ダラダラで視線を泳がせている。自分が言った『エア彼氏』って言葉が推しの来会にどう思われているか心配で仕方ないんだろう。


「話は部長さんから聞いたよ。私が嘘ついてるって思われてるって」


「ま、唐突だったからな。相手の文芸部部長と会ったこともないし」


 言い出したのは姫廻だけど、それをここで正直に話す必要はない。最終的に新聞部に依頼したのは俺だしな。


「では各人、着席願おう。新聞部として依頼されたことに対する“最終報告”を行いたい」


 なんかさっきのインタビュー以上に格式張ってるな。こんなの『全部誤解でした。来会の彼氏はちゃんと実在しました』で終わりだろ?


 そりゃ一般論で言えば恋人ができた直後なんて常にベタベタしたいだろうし、近くにいないならLINEなんかで繋がっていたいって思うのが普通なんだろうよ。でもそれは全員に当てはまることじゃない。中にはイチャイチャしたい時と一人でいたい時をしっかり分けたい奴もいるだろ。


 来会がどっちのタイプかは知らない。でも分けるタイプだとしても全然不思議じゃないとまでは言える。だから、姫廻の疑念は暴走による妄想としか思えない。


 あらたまって聞くほどの話じゃ――――


「結論から言えば、来会君の彼氏は“実在”している」


 だろうな。そりゃそうだ。姫廻はなんか隣で口あんぐり開けてるけどおかしいのはお前だよ。


「お相手は彼女の所属している文芸部の部長とのことだ。この件は篠原君にも既に話しているそうだし、僕も直接聞いたら答えてくれたから隠す意図はないと判断し、今ここで明示させて貰った」


「渋々ですけど」


 不本意だった、という来会の意思表示に姫廻がビクっと身体を震わせた。


 あいつ、もしかして姫廻の反応見て楽しんでるんじゃないか……?


「その返答を受け、我々はお相手の文芸部部長に取材を試みた。ただし、ここでは彼の“名前”及び“容姿等の個人情報”は伏せさせて貰う」


 文芸部部長って判明してる時点で隠す意味ないような。まあいいけどさ。


「彼は『来会君の彼氏で間違いないかな?』という僕の質問に対し、ハッキリと肯定の意を示した。けれども……」 


 なんだ? 妙に歯切れが悪いな。


 まさか……上手くいってないのか?


 それどころか破局寸前とか?


 しまった! その可能性を全く考慮してなかった!


 だって付き合ってるって聞いてまだ二週間やそこらだぞ? 別れ話が出るには早過ぎるだろ? まだお互いのことなんて大してわかってないだろ?


 けど……あくまでこれは俺の勝手なイメージだけど、二週間で別れるカップルは普通に存在するし人間性に関係なく全然あり得る。相性ってあるしな。お試し感覚で付き合ったけどピンとこなくて友達に戻るパターンも考えられる。


 明莉の性格上、お試しで彼氏……なんてちょっと考えられないけど、思春期関連の話なんてほとんどしたことない明莉のその辺の事情は俺も知り得ない訳で。好みの顔とかも全然知らんし。


 もしケンカでもして破局しかけてるとしたら、部室に椅子が一個しかなかったのも『おめーの席ここにはねーから』っていう明莉の無言のメッセージという解釈もできる。そして明莉はそういうことをやりかねない。


「……」


 どうやら姫廻もその可能性に気付いたらしく『どうしよう。地雷踏んじゃった』ってツラで今にも逃げ出しそうにしている。実際、もしそうなら地獄みたいな空気になりかねない。


 果たして真相は――――


「どうも要領を得ないというか、納得がいかなくてね。彼は余りにも来会君のことを知らな過ぎる」


 ……ん?


 なんか思ってたのとは少し違うな。そりゃ付き合って二週間程度なんだから、大した知識がなくったって別に……


「何しろ来会君の“誕生日”も答えられなかったくらいでね」


 ……それは流石に変だ。あり得ない。


 恋人いたことないから実感のこもったことは言えないけど、誕生日なんて付き合ってすぐに把握しようとするもんだろ? 好きな相手に喜んで貰える絶好のチャンスなんだし。何より恋人の祝い事に自分も参加したいって思うだろ普通。


「だが彼は頑なに来会君の恋人だと主張していたよ。だから“真相”を来会君本人に聞きたくて今日ここに招いた次第さ」 


 俺を含む全員の視線が明莉に向く。


 自分の誕生日を報せていないこと自体は、明莉ならあり得る。だから単に文芸部部長が奥ゆかし過ぎる性格で誕生日すら聞けていないって可能性もゼロじゃない。


「文芸部部長は君の恋人で間違いないのかな? それとも……」


 けど、新聞部部長は俺のそんな想像とは全然違うことを思い描いていた。 


「何か“理由”があって、恋人ということにしているのかな?」


「……」



 ドロンとした目を虚空に向けたまま、明莉は――――







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ