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ヒロインらしきものは去ったけどもうちょっとだけ続きます!  作者: 馬面
第3ゲーム:ブレイク

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第32話 不承不承

 あのフザけたドッキリが、俺を月坂先輩のファンの脅威から守る為のものって説明は姫廻から受けている。『彼は月坂結衣菜のプライバシーを侵害するような人間じゃない』と証明する為だとか何とか。


 けど、こっちとしては気分は良くない。当然新聞部の心象も最悪のままだ。


「当然だが、来会君を尾行するような汚い真似はしない。実は君や月坂君に近しい人にインタビューをする企画があってね。その取材がてら、探りを入れてみよう」


 俺ら本人だけじゃなく関係者にまでインタビューするのかよ。どんだけ月坂先輩を取り上げたいんだ。


 まあでも実際、例の記事は校内でかなりバズってたらしいしな……新聞部にとっては格好のネタなんだろな。


「関係者インタビューの内容は君にも開示する。それを踏まえた上で、先のゴシップ記事について否定してくれて構わない。その構成の方が説得力も出るだろう?」


「それは……そうですね」


 俺と月坂先輩が否定するだけの訂正記事よりは、姫廻や理久リオあたりが『全然そんな関係じゃない』と証言してくれた上で否定した方が信憑性は高まる。今後のことを考えても、騒音はできるだけ小さい方が良い。練習に集中できる環境を作る為にも。


 この際、俺の気持ちは一先ず置いておこう。大事なのは月坂先輩にとってプラスになるってことだ。


「わかりました。お願いします」


「君の表情に“決意”を感じる。混合ダブルス、楽しみだ」


 いちいち特定の言葉にアクセントを付ける新聞部部長とガッチリと握手を交わし、取引は成立した。





 なんてことがありつつ、放課後突入。


 ――――と同時にスマホを取り出し、LINEで先輩に連絡を入れようとしたけど指が動かない。


 勿論理由はわかってる。先日のアレだ。文言を思い出すだけで具合悪くなる。


 ……もしあれが原因でキモがられてたらLINEの返事も多分タイムラグがあると思うんだよな。流石にブロックはされてないと思うけど、ちょっと距離感考えないとくらいは思われてそうだし。


 けど、このままスマホと睨めっこしていても何も変わらない。ってか文章はもう書いた。後は送るだけだ。


『お疲れ様です 新聞部が例の件の訂正記事を書くから取材させてと言ってます どうしましょう?』


 あとはこれを送るだけ……送るだけ……送る……いや、やっぱりもう少し心の準備――――


 あ、押しちゃった。


 指が震えてた所為で予想外のタイミングで押しちゃったよ。


 ……まあいい。なんとなく深層心理が働いた気もするし。早く結果を見たい気持ちというか。キモがられてないって答えを欲しがっているのは誤魔化せない。


 頼む。マジで頼む。これでもし先輩に嫌われてたら目も当てられない。なにせ午後の授業中はずーっとこのLINEの文章のことばっかり考えて授業何にも聞いてないからな。この範囲をテストで出されたらちょっとマズイかもしれない。


 蒼月高校の中間考査は五月の中旬から下旬。もう三週間後だ。


 幾ら部活があるからといっても勉強は疎かにできない。特に入学して最初のテストでコケるのは避けたい。混合ダブルスのことで頭が一杯なんて訳にはおおおおお返事来た! メッチャ早いじゃん!


 毛嫌いされてなかった。それがわかっただけでも泣きそうなくらい嬉しい。



『篠原君も同席するんだよね?』



 この確認も素直に嬉しい。俺がいる方が心強いってこと……だよな。曲解しなきゃそうなるよな。



『もちろんです』



『わかった いつ?』



 どうやら取材OKらしい。日時は新聞部が指定してくると思います……と。



『了解』

『今日の練習は彩彩だよね?』


『はい 今日は乱打だけ男子に混ぜてもらってそれから彩彩に行く予定です』

『直で行くのより二〇分くらい遅れると思います』


『うん わかった』



 ……やり取り終わり。


 先輩、普通だったな。


 それが少し物足りない、本当はちょっと気にして欲しかった、意識して欲しかった――――なんてそんな贅沢なことは全然思わない。とにかく無事に乗り切ったことへの安堵がデカ過ぎる。教室じゃなく自分の部屋だったらガッツポーズして叫び倒してたところだ。


 どうやら先輩はスタンプは使わない模様。スタンプ使う人は了解する時大体スタンプだもんな。


 スタンプは親しい相手ほど使うのか、それとも逆に親しくない相手ほど使うのか、LINE弱者の俺には正直よくわからない。親しみを込めてっていうよりは定型文に近いニュアンスだから後者の気もするけど。


 ま、いいや。時間もないしとっととテニスコートへ向かおう。


 男子と打ち合うのは久々だ。腕が鈍ってないといいけど――――





「……試合日? 今日が?」


 そんな軽い気持ちで向かった先で、衝撃の事実を聞かされた。いや衝撃ってほどのことでもないけど俺にとっては十分衝撃だ。


「マジ悪い! 連絡すんの忘れてた!」


 そう言って手を合わせ謝罪の意を示しているのは同じ一年で後衛の石上。サーブもストロークもガンガン強打を打ってくるパワータイプだ。


 でもその分精度は低い。つーかプレースタイルがそのまま性格を反映している。とにかく大雑把な奴だ。


「そっか……混合ダブルスの選手になったから蚊帳の外なんだな俺……大会で一日中応援したのにな……」


「悪かったって! ついうっかりだから許せよ! な?」


 勿論、別に怒ってはいない。実際もう俺は男子ソフトテニス部の一員と言うには微妙な立場だし。 

 

 試合日は基本、試合しかしない。平日に他校との練習試合はやらないから、部内で試合だけをする日ってことになる。


 この日は基礎練もしないから乱打もなし。つまり俺がここにいる意味はない。


 先輩にLINEで連絡……いや、二〇分くらいなら別にその必要もないか。早めに行って待っとこう。


「おう篠原。いたのか」


 この声は……中垣内先生か。心なしか機嫌良さげな顔に見える。先日の大会で女子の成績がまあまあ良かったからだろう。


「ちょうどいい。お前も試合に出ろ」


「……え? 俺ですか?」


 ってかなんで男子の試合日を中垣内先生が仕切ってるんだ? 貴方は女子の顧問ですよね?


「なんだ、聞いてないのか? 今日は男子と女子で練習試合するんだよ」


 はあ!?


 いや確かに中学の頃は男女混合で練習やってる所もあったし、試合もするって聞いたことはあるよ?


 でもそれは男女の差が余りない中学の話で、高校生だと試合にならないんじゃ……


「県大会出場のペアにできるだけスピードのある試合を経験させておきたいんだよ。地区大会とはレベルが違うからな。平日じゃ他の強豪校と……って訳にゃいかないだろ? だから力を貸してくれ」


 如何にも熱血教師らしい物言いだけど、要は『お前らなんて全員地区大会レベルだから女子の県大会出場ペアの練習相手にはちょうどいい』って言ってるようなものだ。


 俺は先日の大会には出場してないから、侮辱の対象には入らないのかもしれない。それでも……なんかムカつくな。


 けど、女子の方が遥かに実績上なのは紛れもない事実。流石にサーブやショットの威力、それに脚力も断然男子が上だけど、細かい技術は女子の方が上かもしれない。


 実際に試合をしたら、組み合わせ次第では負けることもあり得る……のか? それは結構辛いな。


 ま、ウチの部員は基本エンジョイ勢だし、女子に負けるのを恥って思うほどのプライドも特にないか。寧ろ女子とお近づきになれるチャンスとか思って……


「おいわかってんだろうな! 女子に負けたらいよいよ俺たちに存在価値ないからな!? 気合い入れてくぞ!」


「うおおーーーーっ!!」


 ……意外とそうでもなかった。






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